レベル指示値の調整とは、一般に騒音計の取扱説明書において校正と記載されている行為である。平成27 年4 月1 日の改正以前の検則においては、騒音計から分離できる校正装置には合番号を付すこととしており、音響校正器を用いて校正する場合は騒音計1 台に対して1 台の音響校正器を特定する必要があった。このため、この問題を回避するために騒音計内部の(電気校正用)信号発生器を校正装置と見なすことが認められており、型式承認を受けている騒音計のほとんどはこの内部信号発生器を校正装置としていた。平成27 年4 月1 日の検則改正により、校正は音響校正器を用いた音響校正のみが認められることとなり、合番号を付すことの代わりに騒音計の取扱説明書に当該騒音計に使用可能な音響校正器の型式を記載することが義務付けられた。したがって、平成27年10 月31 日以前に型式承認を受けた騒音計では電気信号に基づく内部校正により、平成27 年11 月1 日以降に型式承認を受けた騒音計では取扱説明書に記載されている音響校正器に基づく音響校正により、レベル指示値を調整し、騒音計が正確な値を示していることを点検及び維持する必要がある。これら点検及び維持の作業は、測定の実施に先がけて、手元や環境が安定した場所において、取扱説明書に従って適切に実施されるべきである。
以上のことから平成27 年11 月1 日以降に型式承認を受けた騒音計については、計量法上は測定現場において音響校正器を用いてレベル指示値の調整を行うことも認められることとなるが、本マニュアルでは、手元が不安定な測定現場において音響校正器を用いて正確な調整を行うことが容易ではないこと、騒音計の型式承認時期により取扱いが異なると混乱が生じる懸念があることなどを考慮して、原則として測定現場においては、レベル指示値の調整を行わないこと。
普通騒音計及び精密騒音計を規定していたJIS C 1502 及びJIS C 1505 は2005年に廃止されたが、普通騒音計はJIS C 1509-1 のクラス2 の騒音計に、精密騒音計はクラス1 の騒音計に対応している。
平成27 年4 月1 日の検則改正により、検定合格の条件がJIS C 1509-1 に概ね整合したJIS C 1516 により定められるようになった。しかし、JIS C 1516 にはJIS C 1509-1 に規定されるEMC(電磁両立性)に関する仕様・試験方法等が一部規定されないことから、引続きJIS C 1509-1 に適合する騒音計を使用することとした。
JIS C 1509-1 にはEMC に関する性能が規定されており、これに適合する騒音計は、電磁波などによる影響が規格の許容限度値以内である。一方、これに適合していない騒音計は、強力な電磁波による影響を受けていたとしても、それを確認する手段がなく、またその際には騒音計の性能は保証されない。
音響校正器
マイクロホンも含めて騒音計が正常に動作することを音響的に確認するために、騒音計の取扱説明書(それに類する文書を含む。以下同じ)に記載された型式の音響校正器であり、JIS C l515のクラス1に適合するものを使用する。
使用時の留意点は「3.4測定機器」を参照すること。
注記1 音響校正器は定期的に校正されているものを使用する。
注記2 JIS C 1502又はJIS C 1505に適合する騒音計で添付文書に音響校正器の型式が記載されていない場合、JIS C 1515のクラス1に適合する音響校正器を使用する。
なお、音響校正器の校正については、下記に留意するものとする。
音響校正器は、測定現場における騒音計の動作確認に使用するとともに、平成27年11月1日以降に型式承認を受けた騒音計に対しては、レベル指示値の調整の基準となる。
これらを正しく行うためには、使用する音響校正器が正しい精度を確保していることが前提となる。
ISO 1996-2:2007 においては、一年に一度、音響校正器を校正することが推奨されている。日本においては、校正実施時の器差の実績より3年以内であれば大きな器差が生じていない。以上を踏まえ、3年を超えない周期で音響校正器の校正を行うべきである。
音響校正器の校正は、通常、製造業者等で行うものであり、使用者が独自に行うことはできない。また、校正に使用するマイクロホンの標準器は、国家計量標準にトレーサビリティが確保できる計量器であるべきであり、国家計量標準にトレーサビリティが確保できる標準器による校正は、以下の二つの場合が考えられる。
サウンドレベルメータ(騒音計)について
測定機器については、サウンドレベルメータ(騒音計)を基本としつつ、同等以上の性能をもつ装置でも良いとした。これは、音響設備の音響調整や測定で用いられている種々の装置類に配慮したものである。
従来あった精密騒音計と普通騒音計の JISが無くなり、 JIS C 1509-1 :2005サウンドレベルメータ(騒音計)では測定精度の違いによるクラス1とクラス2という分類に変更された。クラス1が精密騒音計に相当し、クラス2が普通騒音計に相当する。クラス1の方が高精度で、周波数範囲はクラス1が16Hz~16kHz、クラス2が20Hz~8kHzである。そのため伝送周波数特性の測定にはクラス1のサウンドレベルメータ(騒音計)が必要であることが分かる。
なお、計量法では精密騒音計、普通騒音計が継続して使用されている。計量法では精密騒音計の周波数範囲が20Hz~12.5kHzと規定されているためJISのクラス1の周波数範囲と差が生じている。