『隗』 (07/11/22) | OHANAのホロホロブログ

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平日は仕事に追われながらも楽しい毎日☆

週末は大好きな海にいったり仲間と遊んだり・・・。つれづれ日記です!

私の所属する部署があるフロアの向かいは、いつも臨時のプロジェクトルームになっている。

つい最近までは、会社の人事評価制度システムの見直しPJを走らせるために使用されていた。

そこに、今週の月曜日から新PJのメンバーが入ってきた。

今度のPJの内容は、「営業力強化を図る」


うちの会社は知らない間にどんどん大きくなっていて、中途社員の数も、ものすごく多い。


一昔前までは、先輩の背中を見て大きくなる。

みたいな感じで、だいたいの価値観も共有できるような近しい関係で、組織が構成され、営業力も育っていった。

「うちの会社らしい」もなんとなく共有できていたんだと思う。


だけど、今はそうはいかない。

多くの人間が集まるということは、いろんな価値観が寄り集まる。

大きな数字目標を達成するために、マネージャーはプレーヤーと化し、末端まで目をかけていられない。

しかも、昔ながらの「うちらしい」が通じると過信していて、自然に個人の判断に基づく行動ができると思っている。

そうなると、新入社員や中途社員は、潜在能力は高かろうが、能力を発揮するチャンスを失いがちになる。

ひいては、組織として営業力が落ちる・コンプラリスクが高まる・会社に対する満足度の低下・・・などなど不の連鎖が始まる。


いろんな部署がそれぞれの角度で動いているけど、今回のPJは営業発というところが注目すべき点。

管理部門に押し付けられる現場置いてきぼりの施策ではなく、

現場の問題意識をもったメンバーがPJを進行する。

どんなアウトプットになるのか期待していよう。


前段が長くなったけど、そのPJルームの扉に掲げられた1つの文字。

『隗』

オニ?タマシイ??

いやいや、「カイ」です。


その漢字を掲げた背景が興味深いと思ったので、書いてみようと思う。

『隗より始めよ』という言葉を知っているでしょうか。

故事成語だけど、その由来話が面白い。


戦国策(せんごくさく)という書物に書かれている話なのだけど、

紀元前4世紀の末頃(戦国時代)、

燕(えん)の国は隣の斉(せい)の国に国土の大半を占領され、国王までもが殺されてしまいました。

そこで、次に即位した昭王(しょうおう)は、何とか国の力を回復させるために優秀な人材を集めようと思い、

宰相(さいしょう-王様を助け、政治を行う人)の郭隗(かくかい)という人に相談しました。

すると、郭隗はこう言いました。

「昭王、こんな話があります。


昔、ある君主が千金を出して1日に千里を走る名馬、

いわゆる千里の馬を買おうと思いましたが、

3年たっても見つける事ができません。

すると、宮中にいたある男が進み出て、買ってきましょうと申し出たので、

その男に千金を渡して買いに行かせました。

その男は、3ヶ月後に千里の馬を見つける事ができましたが、

惜しくもその馬は一足違いで死んでしまっていました。

すると、何を思ったかその男は、死んだ馬の骨を五百金で買って戻ってきました。

君主は、死んだ馬を五百金も出して買ってきたことをカンカンに怒りました。

しかし、その男は言いました。

『少々お待ち下さい。死んだ馬ですら五百金で買い取ったのです。

生きた馬なら、一体いくらで買うのだろうと思って、続々と千里の馬は集まるでしょう。』

と、果たして1年も経たないうちに千里の馬をたずさえた者が3人もいたそうです。


今、昭王が賢者を集めたいとお思いならば、まずこの隗(かい)よりお始めください。

(「先ず隗より始めよ。」)

私を重く用いる事で、あの隗でさえあんなにも厚遇(こうぐう)されているのならばと、

私よりも優れた人物が集まる事でしょう。」

昭王はその話を聞き、隗のために立派な宮殿を建て、礼遇しました。

すると、その噂は各国に伝わり、

趙(ちょう)国の名将である楽毅(がくき)や

政治家の劇辛(げきしん)、

陰陽学者(いんようがくしゃ)の鄒衍(すうえん)などの優れた人物が集まりました。

そして国政に努めること28年、ついに昭王は斉の国を破る事がでたのです。


この故事の意味は、「手近なものから始めなさい」という事です。

そこから転じて現在では、「言い出した人から始めなさい」という意味で広く使われています。


なかなか面白い話です。

うちの部署で、この故事のことが話題になり、

「え?じゃあ、あそこのPJは、俺たちはたいしたことのない人間だけど、礼遇してくれって言ってるの?」

とか、わざとひねくれて解釈したりして笑ったのだけど、

営業発で手を挙げて、営業の自分たちから改革を始める。

そんな意図が感じられて、私は関心していた。


それが今朝になったら、そのPJルームの人がその『隗』の紙の上に、

違う言葉の紙を貼り付けている。

『Realize your full potencial』

なんともありがちな標語になっちゃったなぁ。。


『隗』の方が、このPJの心意気を感じて、

個人的には好きだったんだけど。

まあ、意味を知らない人が、

『隗』という漢字一文字を見て受ける印象は、

きっとなんともおどろおどろしい感じなんだろうと想像するけど。。

それこそ、このPJルームにはオニがいるくらいに思っちゃうかも知れないからいいか(笑)


と今朝の光景を見ながら一人考えてましたべーっだ!