英語で話をする時の方法 | 異文化交差点

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「学校で英作文を書く際に習う、「I think〜.There are X reasons.. First .. Second..」という定型文がありますが、ダサく感じます。海外では主流なのですか?」

 

私に前記の質問がQuora上で寄せられましたので、以下回答しました。

 

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米国企業に雇われて、Regional Sales Managerになるため販売管理研修を受けました。その時の研修講師は言いました。

Don't think but say what's in mind.

 

これを聞いた時、その意味が良く分からず、私はぽかんとしていました。他の米国人も同様です。いつも良く質問する米国人同僚が講師に聞きました。I don't understand what you really want to say. 彼の率直な質問のお陰で、他の全員も助かっていました。この講師は、参加者からの質問を期待して重要な点を付加説明なしで、いきなり言う癖がありました。

 

講師はその質問にニヤリとして続けました。

If you say, I think our product is wonderful, then it sounds like your product is not wonderful. (もし君達が、私達の製品は素晴らしいと思う、と言うなら、君の製品は素晴らしくないように聞こえる)

 

You should say, "Our product is wonderful WITHOUT I THINK."(君達は、私達の製品は素晴らしい、と「私は思う」なしで言うべきだ)

Don't say, I think our prices are competitive, but say, our prices are completive. Did I make myself understood, you guys?(私達の値段は競争力があると思う、とは言うな。私達の価格は競争力があります、と言え。君達分かったかな)

 

私も他の参加者そして質問者が、首を縦に振っていました。その時、米国流assertive communicationの神髄を見た思いがしました。この研修で私はたくさん米国流販売管理方法を学ぶことができました。参加者18人中、17名が米国人で、私1人のみが日本人でした。

 

講師は、米国で通用する販売管理方法を私にこれでもかこれでもかと教えてくれました。(この続きの話しは長くなりますので、これで止めます)。

 

というように、I think ~という表現は、その後に続く表現の意味を弱くする働きがあります。自信なさそうに思えるのです。講師は、I believe ~も駄目だと言いました。とにかく言い切りなさいと力説しました。

 

この質問の中のI think ~だけが余計で、後のThere are X reasons.は通常米国人が好む表現でなんら問題ありません。

 

Steve JobsがStanford Universityの卒業式に呼ばれて講演したことがあります。以下をご覧になってみてください。Steveの話は7:40から始まります。

 

 

 

Steveは冒頭に以下を言いました。

 

I am honored to be with you today at your commencement from one of the finest universities in the world. I never graduated from college. Truth be told, this is the closest I’ve ever gotten to a college graduation. Today I want to tell you three stories from my life. That’s it. No big deal. Just three stories.

 

話し始めてから約30秒後に太字にした部分を彼は言いました。私の訳は次の通りです。

 

「今日、私は私の人生から3つのお話をしたい。それだけです。たいしたことではありません。3つだけです。」

 

Steveの講演は、全体で約15分あります。これを長いあるいは短いと感じるかは、個々人の性格に因るでしょう。しかし、冒頭に3つのお話をします、と言うと、聴衆は、「あ~、3つだけか。良し聞こう」という意識が生まれます。そして15分聞いても大した長さには感じません。そういった効果をこの冒頭の言葉は聴衆の心にもたらします。

 

これは2005年の出来事です。

 

私はこのことを知っていて、2007年にワシントン州シアトルに呼ばれ、日本の会社と取引をしている米国会社の幹部社員ら約50人を前にして、約8時間の研修を提供したことがあります。

 

その時、冒頭に今日皆さんにお伝えしたいのは、と言って、最初のスライドを銀幕に投影し、そこに書いている項目を10秒ほどで説明しました。全部で20項目あり、一つずつ項目を読むと参加者が疲れますので、「全部で20項目あります。8時間の長丁場になりますが、途中で、グループワークなども入れますので、楽しめますよ」。ただそれだけです。参加者は頷きます。

 

こういうように最初に今日は何をするか、それについて簡単に説明することにより、参加者には研修から期待することについてあれこれ思い描く事が出来ます。質問もたくさん用意して来ているだろうから、私はこう言います。

 

I know you have questions. Please don't hesitate to ask them, all right? (あなた達に質問があるのは知っています。質問するのを決して躊躇しないでくださいね)。すると参加者の顔がほころびます。

 

そして、突然、参加者の一人が手を挙げて質問しました。Shintaro, your English is excellent. How did you learn it?(シンタロウ、あなたの英語は素晴らしい。どうやって勉強したんだ?)と聞かれ、実を言えば、私はこの手の質問には既に慣れていたので、こう答えました。I used to work for the US Navy base when I was a college student. That's where I picked up beautiful English, oops Navy slang. (私は、大学生の時米海軍基地で働いたことがありました。そこで私は美しい英語、もとい、海軍俗語を学びました)。

 

彼らはNavy slangがどういったものか良く知っていますので、質問者ばかりか他の全員も大笑いしていました。

 

実に調子よく研修の口火が切られました。この笑いは、私が説明を始めてから2分以内に起き、米国では、通常こういった研修は開始してから2分以内に参加者から笑いを取ると後は上手く行くと言われています。私は、この笑いによって救われました。

 

それで、参加者は楽しんで研修に参加する意識が生まれます。その瞬間から私はTrainerではなくEntertainerとなります。

 

脱線して申し訳ありません。