国連英検の知名度が低すぎる:日本国際連合協会の不作為か | 異文化交差点

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私は1987年に国連英検特A級に合格しています。

 

英会話学校あるいは進学塾における関係者の幾人かと話しをしたことがあります。彼らのほとんどの方達が、この資格について熟知していないせいか、英検やTOEICの資格がないと、英語力がないと勘違いする人が多いのには閉口します。

 

網際(あみさい:internet)検索してみると、国連英検特A級が英検1級よりも難しい試験であることはすぐに分かりますが、彼らはなぜその検索をしないのでしょうか。不思議でなりません。

 

英検は文科省、TOEICは経産省、国連英検は外務省がそれぞれ支援しています。

 

英検を入学試験と連動させる大学は多く、それは学校が文科省の管理下にあるので、当然と言えば当然です。そのために国連英検は最初から除外されていて、外務省の支援下にある日本国際連合協会は、その網場(website)上で、国連英検について説明はしていますが、どうもおざなりで、これをもっと周知させる気がないのが解せません。

 

特にTOEICと比較する語学教育関係者には驚きを隠せません。今流行っているTOEICは、英語の読解力と聞取力の2技能を試験し、その点数が900点を超えると英語の一流の使い手だと思い込んでいるようで、英作文力と英会話力の2技能の試験を受けない状況で、なぜ英語力が高いと判断するのか、はなはだ理解困難な状況でもあります。

 

もちろんTOEICは、英語の4技能試験もありますが、これを受ける人は極少数で、それよりも、英検、国連英検、TOEFL、IELTSなどが最初から英語の4技能を試験するので、その方が英語力を測る信頼度は高くなります。

 

つらつら考えるに、英語力の高い日本人が非常に少ないことの裏返し的現象なのかもしれません。

 

私自身の能力に基づき、国連英検特A級に合格するための実力を簡単に書いてみますと、約300頁もある英文を一晩で読み、その中から重要な情報を入手する速い読解力、そしてA4版約10頁の英文を約3時間程度で書く英作文力、早口で話す英語人(英語を母語とする)の話しを聞き、それにすぐ対応する会話力が求められるし、複数の人間が参加する動画会議で、自分が作成した文書ファイルを他の参加者と共有し、自分の意見を述べ、参加者から意見を聞き、それをまとめる司会者的役割も果たす、などがあります。

 

こういった能力はTOEIC上級者にはありません。読解力と聞取力の二技能しか試験しませんから。英検1級に合格したとしても、英語を仕事に使った経験に乏しいと、前記したような英語力はありません。

 

国連英検特A級は、実務英語力を問います。しかも時事英語(政治、経済、軍事、文化、科学技術など)の深い知識を英語と日本語の両方で持っている必要があります。

 

私は、AFN(米軍放送)、Voice of America、Fox、Financial Timesなどの英文記事を網際(あみさい:internet)上で素早く閲覧し、重要情報を得ます。知らない単語があり過ぎると素早い情報入手は困難です。そのためにactive vocaburary(能動語彙:使える語彙)は約2万語あります。それが国連英検特A級の実力です。

 

英検1級の能動語彙は約8,000語です。知っている語彙(passive vocabulary)は12,000語は必要です。英検1級の語彙試験問題は25問あります。この語彙試験は、あまり使わないこんな単語をなぜ出すの、と思うほど難しい問題があります。国連英検特A級は、時事英語に特有な、例えば、ad hoc, vis-à-vis, tete-a-tete, persona non grata, in vitro, in-vivo, ex-vivo, variant, de facto, ...などが出題されますが、これは時事英語にとって常識的に押さえる必要のある重要語ですから、難しいとは言ってられません。

 

国際政治の外交交渉では、こういった単語が外国人の口からほとばしり出ますので、知らなかったではすまされないのです。以前、日米外交交渉で、米国人政治家から日本の防衛が軟弱だ、と言われ、それを日本人政治家が日本はハリネズミのように専守防衛を主眼としている、と答えたのを、そこにいた通訳官が、ハリネズミを賢いネズミと訳しために、米国人政治家は、日本人はネズミのようにこそこそと動き回るのか、と憤ったそうです。この時適切な用語であるa hedgehog(ハリネズミ)と言えば良かったものを。

 

このhedgehogは旺文社が発行する「でる順パス単」の英検準1級・1級にも掲載されていません。ひょっとしたら2級の「でる順パス単」にあるかと思って調べましたが、ありませんでした。

 

別の言い方をすると国連英検特A級の実力は、外交交渉において同時通訳ができると言って過言ではありません。

 

それなのに、多くの英語教育関係者が国連英検について良く知りません。英語を使った仕事をしていない英語使いが多いのもその原因でしょうが、何よりも外務省に支援されている日本国際連合協会の不作為が根本原因であるろうか、と思っています。