映画「ツィゴイネルワイゼン」 | ほくとの気ままなブログ

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明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

 

元旦の能登地震、実家に帰省中でそこでは震度4でしたが、能登では震度7の大地震。被災地の方々、被害にあわれた方々お見舞い申し上げます。また亡くなられた方に謹んで哀悼の意を表します。

安否確認でき避難生活されているブロ友の方を含め、被災地の方々はまだまだ不安な辛い日々を過ごされているとか思いますが、とにかく一日も早く日常に戻れることをお祈りするばかりです。

 

そして日航機と海保機の衝突事故、海保機の乗組員の方は残念なことになってしまいました。ただ救いはあの炎に包まれた機体から全員脱出できた日航機の乗客乗務員、本当に奇跡だったのではないでしょうか。ニュースを見ていて全員脱出のテロップが出た時には、安堵の胸をなでおろしました。

このような事故が起きないことを願うばかりです。

 

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大変な幕開けの年になりましたが、明日から仕事始めになります。

さて今年の一発目のブログは、この個性あふれる映画作品の紹介で始めましょう。

 

鈴木清順生誕100周年記念上映特集作品 

映画「ツィゴイネルワイゼン」

 

 

1980年 145分 シネマプラセット

 

<原案>

内田百閒:サラサーテの盤

<監督>

鈴木清順

(弟さんは元NHKアナウンサーだった鈴木健二さん、面白ゼミナールなどでご存知の方もいるかと、ご存命のようですよ)

 

<キャスト>

中砂糺原田芳雄

中砂園小稲、大谷直子(二役)、

靑地周子大楠道代

靑地豊二郎藤田敏八

真喜志きさ子、

麿 赤兒、

樹木希林

 

ツィゴイネルワイゼン【SEIJUN RETURNS in 4K】 : Kariya ...

 

<内容>

鈴木清順監督が内田百閒の「サラサーテの盤」などいくつかの短編小説をもとに、夢と幻が交錯するなかで狂気にとりつかれた男女の愛を描いた幻想譚。

 

大学教授の青地(藤田敏八)と友人の中砂(原田芳雄)は、旅先の宿で小稲(大谷直子)という芸者と出会う。

1年後、中砂から結婚の知らせをうけた青地は中砂家を訪れるが、新妻の園(大谷直子)は小稲に瓜二つだった・・・・・・・。

いつしか青地は現実と幻想の中で惑わされていく。

そして自分の妻が中砂に誘惑され、惹かれあっているという疑念に取りつかれる。

 

 

主演の4人の誰もが個性的な魅力を見せ、

原田芳雄の狂気、

大谷直子の陰影、

幽艶な大楠道代、

そしてその間で戸惑いためらう藤田敏八

と絶妙な対照を成している。

 

なかでも強烈なのが、だんだんと死の世界に取り憑かれていく大楠道代で“腐りかけがおいしいの”と熟し過ぎた水蜜桃を舌でチロチロと舐めるシーンと、それに呼応するように原田芳雄の目の中に入ったゴミを舐め取るシーンには色気というよりは殺気をはらんだ妖気がある。

この妖気が全編を覆い、2時間を超す長尺を感じさせない緊張した作品となっている。

 

(映画.COM&映画ナタリー、一部修正追記)

 

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観るものを異世界へ誘う、

鈴木清順の美学溢れる幽玄の世界炸裂。

 

この作品はホラー作品といっていいものなのでしょうか?

それとも・・・・?

何が本当なのか?

何を伝えたいのか?

観るものを困惑の世界に誘う作品。

 

正直この作品のあらすじ内容をわかりやすく上手くお伝えすることができません。この世界観を感じていただくためには観ていただくしかないような作品。ですから、これまた感じたままを書き記したいと思います。

 

 

昨年11月25日ジャック&ベティ にて鑑賞。

鈴木清順生誕100周年記念、上映作品の一つになります。

ちなみに他の2作品は「陽炎座」「夢二」浪漫三部作と言われている作品。

 

鈴木清順は本当に癖のある監督ですから、好き好きは分かれると思います。

そして今作の原案が、内田百閒の短編というのですから、内容が難解なのはさもあらん。

 

 

冒頭から何とも言えない不思議な感覚になるはず。

サラサーテのレコードから流れる曲、ツゴイネルワイゼンその曲の間に何やら人の声が・・・。

「なんといっているのだろうか?」

「いや、よくわからない・・・」

というような会話で始まります。

 

話の中心人物になるのは、

語り手の「私」である靑地豊二郎(藤田敏八)、

その親友である中砂糺(原田芳雄)、

靑地の妻(大楠道代)、

中砂の妻(大谷直子)、

その妻と瓜二つの芸者小稲(大谷直子の二役)

の五人の登場人物。

その5人を軸に色々と絡み合いながら展開していく物語です。

 

ただし途中から現実と幻、生(性)と死、自分と親友、真実と嘘、誰が生きているのか死んでいるのか、色々な事象が入り組んでねじれて交錯しているような物語の展開になっていきます。

そこへ音楽や耳に残る音に、鈴木清順特有の映像美が重なり、スクリーンに映し出されるので戸惑う人もいるはずでしょう。

 

 

印象の残るシーンやセリフ 

 

 

時空が歪んでいるような、何かの境界を示唆するように必ず現れるトンネル。このトンネルの、あちらとこちらでは何かが異なっているのです。三途の川らしきシーンや六文銭と思われるような画も出てくるので、あの世と現実の世界が交錯しているのか?摩訶不思議。

 

 

原田芳雄が砂漠のような場所で裸で亀甲縛りされた状況で踊っている。

「もうやめないか」、

「まだやってんのか」

と神の声のようなものが降ってくる。

*この声はどうも鈴木清順監督のようです。

そのシーンはあのホドロフスキーの「エルトポ」を想像してしまいました。何だったのだろう?

 

原田芳雄演じる中砂が、

「骨は肉の極みですよ」

と靑地に吐露し、

「僕が死んだら骨を君にあげるよ。その代わり君が先に死んだらその骨は僕がもらう」

などと究極の愛の告白のような言葉を口にする。

何なんだ~!

 

 

 

盲目の旅芸人も興味深い。

年の離れた夫婦に弟子のような若い男性、この3人の立ち位置が女性を軸に変わってくのです。

 

流石というか、清順の独特の映像美に表現方法、これを理解し受け入れる人はけっこう少ないのかもしれないと思いながら鑑賞。

一つ一つの映像の違和感に、それを回収するようなものが全くなく展開しますが、それが不快にはならないところもこれまた不思議な作品。

ふと思ったのが、やはり独特の映像美そして眠気を及ぼす作品として右に出る物はいないと思われる、タルコフスキー監督作品、また「ザクロの色」の監督セルゲイ・パラジャーノフや前述したホドロフスキー監督とどこか共通点があるような感じを受けましたがどうでしょうかね?

 

舞台劇を思わせるようなシーン展開、また個性あふれる俳優陣の演技に圧倒される。

 

 

 

 

大谷直子さんは、子どもの頃にTVだったか映画だったか忘れてしまいましたが奇麗な方だという印象があった女優。

今作品では二役を演じますが、美しさの中に何か怖さも感じる演技を披露していました。

靑地と中砂の食事の為に鍋をつくるのですが、その材料の一つであるこんにゃくを、永遠とちぎるシーンは印象的でした。

 

 

 

そして清順監督作品には常連の、大楠道代さんの演技。内容のところにも書きましたし、観た方は判ると思いますが、

「腐りかけがおいしいの」

熟し過ぎた水蜜桃を舌でチロチロと舐めるシーンと、あの原田芳雄の眼球をなめるシーンは、エロを突き抜けていましたね。

 

 

鳥肌が立つくらいの何とも言えぬゾクゾクするような演技は夢にも出てきそうです。

 

ちょっと脱線しますが、私は大楠道代さんの作品で初めてみた作品が、映画「セックスチェック・第二の性」という作品。半陰陽と診断された実業団女子短距離選手とコーチとの、師弟を超えた愛憎を描いた作品が、そのころから独特の雰囲気ですごく印象に残っておりました。

 

全貌が見えたようなラストシーンネタばれ注意

 

ネタバレになってしまいますが、最後がこれまた良かったですね。

原田芳雄も大楠道代もいなくなり数年が過ぎた時。

小稲(大谷直子)は幼児に成長した豊子を連れて靑地家をたびたび訪れ、中砂(原田芳雄)が靑地(藤田敏八)に貸したままの蔵書を返すよう求めます。

ついには「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを求められるのですが見つかりません。

実はそのレコードは周子(大楠道代)が隠して持っていたことが分かるのですが、周子は中砂との関係は否定します。

靑地はレコードを持ち中砂家を訪ねる。小稲は生前の中砂の不実に悩んでいたことを語り、彼の残したものを全て手元に置きたいという。

 

そして彼の血を引く豊子を心からかわいがっているといい、今まで取り戻した蔵書は中砂の霊が娘と会話して靑地の元にあると語ったのだというが、豊子の姿が見えないことに気付き取り乱す。

 

 

靑地は中砂家を出てゆくが、帰り道で豊子に会う。

 

豊子は靑地に中砂が生前約束していたように骨をくれといい、

生きている者は本当は死んでいて、死んでいる者が生きているのだという。

 

 

靑地は逃げるが、その先の海辺では豊子が白菊を飾った小舟とともに待っている。

「おじさんいらっしゃい、生きている人間は本当は死んでいて、死んでいる人が生きているのよ。おとうさんが待ってるわ、早く、早く……」

と青地を迎える。

なんとも言えないラストシーンでした。

 

 

 

今作品は好みがはっきりわかれるような作品かとは思いますが、鈴木清順監督の映像美や、音楽を含めた音などの表現方法がとてつもなく印象に残る作品ではないかと思った次第。

 

4人の個性的な俳優陣なくしてはできない作品。

このような作品は二度と作られないのではないかな?

なぜか昔、見逃してしまっていた作品。

こんなすごい作品だったとは、もっと早くに鑑賞していればと後悔してしまったのです。

映画館で鑑賞できたことに感謝。

 

この映画を観た後、大学時代は文学部で内田百閒をこよなく愛している姪っ子に、

「サラサーテの盤をモチーフにした映画あるの知っている?」

と尋ねると

「ツゴイネルワイゼンでしょ」

との返事。

学生時代に教授に勧められて鑑賞していたようです。

流石内田百閒フリークと発した私でしたw

 

今回帰省した際に、妹がサラサーテの盤が収録された内田百閒の本を持っていたので借りて読みましたが、う~んという感じでよくわからない。姪っ子も帰省していたので解説してと話したところ、書いたある通りだよと・・・・笑

 

鈴木清順監督作品 シネマ・プラセット 1980 - vol.1 ツィゴイ ...

 

再度申し上げましょう。

観る人を選ぶ作品かとは思いますが、とにかく印象に残る作品であることは間違いありません。

 

5点満点中4.2