映画「マンディンゴ」アメリカ映画史から抹殺された問題作 | ほくとの気ままなブログ

ほくとの気ままなブログ

ブログの説明を入力します。

アメリカ映画史から抹殺された問題作

 

映画「マンディンゴ」

 

1975年 アメリカ 127分

 

<監督>

リチャード・フライシャー(海底二万哩、ミクロの決死など)

 

<音楽>

モーリス・ジャール

 

<キャスト>

ジェイムズ・メイソン、

スーザン・ジョージ、

ケン・ノートン

 

<内容>

ファルコンハースト農園は、ルイジアナ有数の大農園である。

綿花や農作物の収穫はもとよりだが、農園事業の中心は、血統のよい奴隷を買い集め飼育し、売買するという計画的な“奴隷牧場”にあった。

老当主のマクスウェル(ジェームズ・メイスン)はひとり息子のハモンド(ペリー・キング)に任せていたが唯一の気がかりは、一日も早く白人娘を妻にとらせ、眼の黒いうちに跡とりの顔を見ておくことだった。おりしも、没落しかかってはいるが、遠縁に当たる大地主のウッドフォード少佐から5千ドルの借金の申入れがあった。年頃の娘を持つ少佐は、娘をハモンドの妻にしてマクスウェルにうまくとりいろうという魂胆だった。ハモンドは父の言葉に従って、少佐の娘ブランチ(スーザン・ジョージ)と見合いすることになった。ハモンドにとってブランチの美しさは感動的ともいっていいものだった。

しかし、その感動も旅の途中で見た黒人娘エレン(ブレンダ・サイクス)の美しさの前ではかすんでしまった。憂いをふくんだエレンのまなざしがハモンドの心をとらえた。

ハネムーンに出発したハモンドは、ニューオリンズの奴隷市場で偶然にも、黒人のサラブレッドともいうべき貴重なマンディンゴをせり落とした。名をミード(ケン・ノートン)といい、たくましい肉体は種つけ用としても、闘技用としても最高だった。

ブランチとの初夜はハモンドの心をひきさいた。彼女は処女ではなかったのである。結婚をのろいながら、ハモンドは帰途、あの忘れもしないエレンを引き取ると、ブランチともども農園に戻っていった。

 

ミードを見たマクスウェルは狂喜した。一方、ハモンドはブランチに対する怒りを従順なミードをきたえ、エレンを夜ごと激しく抱くことで発散させる。

そしてブランチは、ハモンドの子を宿したエレンに向かって嫉妬に狂ったムチを浴びせていた。さらに、夫の留守中にミードを部屋に引き込み、誘惑した。夫からは味わうことのできない、強烈な快楽に溺れ、いくたびとなくくり返した。月が満ち、ブランチは赤ん坊を生み落とした。

(MovieWalkerより抜粋)

 

このあととんでもない結末に向かって話は進みます。

本当にとんでもないのです・・・そこは観てのお楽しみです!!

 

 

***********************

 

 

南北戦争前のアメリカ南部を舞台に、奴隷牧場を営む父子の栄光と没落を描いた歴史大作。

そしてそれはアメリカ南部史の暗黒をあぶりだした問題作でもありました。

 

 

そうさ俺たちは自由な人間さ、奴隷じゃない!!

 

マンディンゴとは、優良種の黒人。

西アフリカにおいてサハラ交易を支配していたマリ帝国の子孫のことのよう。

 

黙殺されてしまった「黒歴史の名作」

 

 

原作はベストセラーになった、カイル・オンストットの同名小説。

製作は「道」「キングコング」などで知られている大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティス。

監督は「ミクロの決死圏」「海底二万哩」「ドリトル先生不思議な旅」の鬼才リチャード・フィッシャー、

音楽は「アラビアのロレンス」などのモーリスジャール

 

という豪華で盤石な布陣で映画化されました。

 

公開されるや世界中で大ヒットし震撼させましたが、全米の批評家からは人種差別的な設定、偏見を助長する屈辱的な内容、吐き気を催すほどのおぞましい描写などとマスコミに黙殺され映画史からは消えていきました。

ただその後、タランティーノ監督などからは「これはすごい映画」だと、じわじわ再評価されてきたのです。

そして長らくアメリカ映画史からほぼ抹殺された形になったこの呪われた作品が1975年の初公開以来46年ぶりに日本で公開されることになりました。

 

というような問題作が上映されるということで楽しみにしていました。6月12日ジャック&ベティにて初鑑賞、当日は上映初日であったためか、予想外のほぼ満席状態でビックリでした。

やっぱりこの手の映画好き?また興味ある方多いのだと納得でした。

 

 

 

さてこの映画のポスターどこかで見覚えありませんかね。

そうです、あの映画「風と共に去りぬ」のポスターに似ていますよね。

どうもパロディ的に作られたみたいです。

 

 

というのはどちらも奴隷制度が根底に流れているはずなのですが、「風と共に去りぬ」はそのダークな部分は隠し捨てているのです。

 

だから今作品は南部の歴史を美しく描いた「風と共に去りぬ」への強烈なアンチテーゼともいわれています。

 

余談ですが、このような物語がとくに南部の人たちは知っていた内容。しかしそんなことが映像として知られてしまうことに焦りと共に汚点を隠したい気持ちにもなったでしょう。またキリスト教の教えを守っている人々が、なんで反人道的なことを黒人の人たちへ行えるのか、それは黒人を人と見ない、家畜そして商品とみなしているからこの内容にみられるような行動をすることができたのです。自分たちの行いを正当化することに思考を修正したのでしょうね。それがわかるシーンとしては、黒人の女性が出産するときに医者を呼ぶのですが、それは獣医なのです。何をかいわんやです。

 

 

さて冒頭からマディ・ウォーターズが歌うブルーズが流れます。

「俺はここで生まれた、何処へ行くこともできない・・・」

その歌詞の内容に、何やら何かが起こりそうな予感をまたこの作品の本質を感じさせてくれます。

 

この映画の内容はもちろんフィクションですが、描かれている奴隷制度、人種差別そして女性差別はたぶん実際にあったこと、だから余計にその暗黒時代の出来事に怒りを覚えます。

人間の持っている征服欲、性欲、金欲ありとあらゆる煩悩が、支配者という立場からあふれでてしまう、そしてその欲を抑えていたと見られる人物も、最後は理性を失いはやり征服者の立場から行動してしまう人間の持っている浅はかな面を垣間見ることができます。

 

そうそう余談ですが、作品を観ていて途中ファルコンハースト農園で働く恰幅の良い黒人女性がでてくるのですが、映画「風と共に去りぬ」のマミー役で出演していたハーティ・マクダニエルさんかと一瞬思ってしまいましたが、どうも違っていましたね。製作された年代がまったく違いますから・・・。w。

 

さてもう少し内容を書きますと、

ルイジアナ州で奴隷牧場を経営するファルコンハースト農園の牧場主ウォーレン(ジェームズ・メイソン)と息子ハモンドは黒人との間にできた自分の子供も平気で売買するような計画的な奴隷牧場主。

奴隷貿易の禁止に伴いアフリカ大陸から奴隷の輸入ができない。

では黒人達に子供を産ませてその子たちを売るようなことになっていくのです。

子供は黒人同士はもちろんですが、奴隷主の白人と黒人奴隷の子供などもそうです。

有名なところでは、元オバマ大統領夫人のミッシェル・オバマさんも、家系をたどった結果、白人と黒人奴隷の間に生まれた子供の子孫ということがわかっています。

奴隷は高値で売れる貴重品なので、きちんとした帳簿のような物が作られていたので家系図的なことがわかるようなのです。

 

 

牧場主ウォーレンは「リュウマチの毒を黒人の子供に吸わせれば治る」「14歳以上の黒人の処女はいない」と豪語するほど。

息子のハモンドは「初めての相手を務めるのは(奴隷牧場の)主人の役目」という慣習に従い、黒人娘ビッグ・パールを抱いたりもします。

 

 

ウォーレンは黒人サラブレッド同士のビッグ・パールとミードの子を期待するが、純血の証明書から実は兄妹と分かり、ハモンドに反対されます。

ただ彼は、奴隷同士ならどうつながっても変わりはしないという始末。もう人間として彼れら彼女らを扱っていないのはいうまでもありません。

 

息子のハモンドは、父親のやっていることに疑問を覚え、黒人の人々に理解をしめします。

しかし最後は、ミードが言い放ちます。

「貴方は他の白人と違うと思っていた。しかしやっぱり同じだっ

た・・・」と。

 

 

凄まじいほどのアメリカの闇の部分をおしげもなく、変化球なしの160キロ超の剛速球で観客に向けボールを投げてくるような作品です。

その直球を毛嫌いまた受けきれない方もいるでしょうが、観るべき点ある作品だったと思います。

 

 

処女でなかった新妻ブランチの最初の相手は?

その彼女が出産した子供の肌の色は?

 

驚愕の結末

 

そしてラストは怒り狂ったハモンド、その妻ブランチ、農場主ウォーレン、またマンディンゴのミードも想像もできないほどの壮絶な結末がまっています。

ほんとうに凄まじいのです・・・。

 

すべての物語が終わった後に、スクリーンには冒頭で歌われたいた、マディ・ウォーターズのブルーズが流れます。

その歌詞が作品を観た後では、最初と違った感じで心に重く突き刺ささりました。

 

 

「俺はここで生まれた、何処へ行くこともできない・・・」

 

黒歴史の名作、怒りのなかにヒューマニズムも感じられる作品でした。

好みはあると思いますし、不快な鑑賞体験になってしまうかたもいるかもしれませんが、観ておくべき作品かもしれません。

人間の愚かさを、嫌というほど突きつけられるでしょう。

 

5点満点中4.0