映画「 奇跡のチェックメイト クイーン・オブ・カトウェ」
2016年 南アフリカ・アメリカ 124分
日本劇場未公開
<監督>
ミーラー・ナーイル
<キャスト>
マディナ・ナルワンガ、
ルピタ・ニョンゴ、
デヴィッド・オイェロウォ
<内容>
ウガンダ共和国の小さな町カトウェのスラム街に住む少女フィオナは、夫を亡くした厳しい母と兄弟の4人でトウモロコシを売りながら生活していた。
ある日弟のブライアンがチェスクラブに通っていることを知り、自身も参加する。周りにからかわれながらも、持ち前の強気で立ち向かい、チェスの魅力にとり憑かれた彼女はめきめきと実力を上げていく。やがてスラムの一角から開花した才能は学生大会、国際大会へとステップアップしていく。
一方で男に言い寄られ家を出てしまった姉や、弟の事故など、貧困と家庭環境は一向によくならず、世界大会での敗北を機に彼女は大きな挫折を経験する。それでも彼女は諦めず、再びチェス盤へと向き合うのであった。
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14歳でチェスのウガンダ共和国代表に選ばれたスラム街出身の、少女の実話を元に作られた感動のドラマ。
この映画は昨年秋に、ラジオの番組の中でテリー伊藤さんが紹介した、この秋お薦めの映画で紹介された3本のひとつです。
紹介されたなかの2作品は昨年記事にしております。
「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」、
「スターリンの葬送狂騒曲」、
いずれも面白かったですね。
そして今作品も当たりでした。
3本とも外れなしでテリー伊藤さんに感謝でしょうか。
しかしこの作品は日本未公開なのです。
とっても良い作品ですがどうして公開されなかったのかが不思議です?
ウガンダの、排泄物の溜まり場に近いような状態の、スラム街に住む少女フィオナが主人公。
彼女がスラム街の中にあるチェス教室に初めて足を踏み入れた際、「臭い、臭い」と周りの子供にいじめられほど、彼女は劣悪な環境で生きていました。
そのあと彼女は石鹸で体や髪を洗い、また教室を訪れます。
やはり女の子ですね!
そのような劣悪な条件の中でチェスを通して、文字も読めなかった少女が、ウガンダの代表にもなって世界大会に出場するまでになります。
途中色々なことがありながらも、自分の人生を切り開いていくサクセスストーリー。
この類の作品は私は大好物ですw
日本で同じような内容を作品にしたら、画面もストーリー展開もけっこう暗く陰湿に描かれるのでしょうけれど、そこはアフリカの原色(暖色)に近いような明るい衣装やら、アフリカ特有ののノリノリの音楽!
嬉しいことがあるとあの独特のアフリカンダンスの効果でしょうか、まったく陰湿な暗さを感じさせませんでした。
大きな大会にメンバーそろって出場する。その大会では会食もある。今までに食べたことの内容な食事。
中でも笑ってしまったのは、「ケチャップ」を初めて食べたのでしょう。
ポテトだったかな?ケチャップにつけて食べる。
あまりのおいしさに「ケチャップの海で泳ぎたい!」なんて言ったり。
微笑ましかったですね。
またこの物語チェスを知らなくても、問題なく楽しめます。
チェスにおいてクィーンは最強のコマになります。
歩兵である最弱の駒ポーンが、将棋と同じように相手方の陣地へはいると昇格します。
そのことを踏まえて、スラム出身の彼女とその駒が昇格してクィーンになるダブルネーミングだとすると、「クイーン・オブ・カトウェ」だけで「奇跡のチェックメイト」の邦題が必要なかったのかも?
しかしこの実話は数年前の出来事だということがビックリです。
世の中には貧しさと戦いながら、そして学校へ通いたくても通えないだから文字も読めない子どもたちが、数多くいるのだということを痛感します。
主人公本人の才能と努力もあってのことなのですが、指導するコーチの存在が大きかったです。
自分の生活もままならぬ、奥さんが働いていての共働き。
条件の良い職場から声もかかるのですが、そちらに就職すると、パイオニアと呼んでいたフィオナを含む生徒たちの世話をする時間も無くなってしまうので断ります。
そして、フィオナや彼女の弟も学校へ行かせたり、チェスをすることを反対していた親を説得する、学校や大会運営者を動かすなど、このコーチがいなかったら彼女の成功はなかったっでしょう。
そしてコーチの奥さんも、偉かった!!
コーチが、好条件の仕事先を断ったことを妻に報告し謝ります。
その時妻の言った一言に感激!
「正しいことをしたのに、謝る必要はないですよ」と、
こりゃ素晴らしい奥さんだ事!!
そのような指導者のご夫婦があって彼女彼らは、才能を発揮することができたのでしょう。
頭が下がりますね。
「スターウォーズ」や「それでも夜は明ける」などに出演していたルピタ・ニョンゴは、芯のあるプライドを持った母親役なかなかよかったです。どこの家庭でもありがちな母親の苦労は子供にわかってもらえない、それでも懸命に子供たちのために働き、必死に生きていきます。
映画の中でフィオナが夜中にチェスの本を読んで勉強しているのですが、灯油がもったいないからあまり勉強ができない。
それを不憫に思った母親は、自分の親の形見の衣装を売りに行きます。
そこでは店主に誘惑され危なかったのですが、すんでのところで身を売らずにすみ、衣装を売って灯油代を捻出します。
しかしそのような母の行動はフィオナは気が付きません(気が付くような描写がないので気が付いていないはずw)。
ましては、大きな大会に参加することで外の世界をみてしまう、知ってしまうとそちらが魅力的な世界であればあるほど、元の世界には戻りたくない。
そのような状況で大会で負けた後は家にいたくないといって、コーチの家でしばらくはやっかいになる。まだまだ子供で親の苦労はわからない。
ただラスト近くでは、彼女の快進撃が伝記本になって、母親に家をプレゼントします。
良い下りでしたね。
このように見ていくと単にチェスの才能があった少女のサクセス物語というだけではなく、コーチ夫妻や母親それぞれの愛情の物語ともいえるかもしれません。
また彼女を通して関わる人間たちの成長の物語でもあると思います。
最後に、劇中演じた俳優と演じられた本人が並んで登場します。
感動的でした。
その中には、その後ジュニアチャンピオンになったりと、成長していたパイオニアの子供たちそして主人公フィオナは、大学を目指しているとのことでした。
ディズニー映画なのでハッピーエンドですし、残酷なシーンもなく家族そろって安心してみることができますよ。
エンドロールでは、ポリウッド映画のようにみんなでインドダンスならぬ、アフリカンダンス!
音楽も良かったです!!
なかなかのお勧め作品でした。
5点満点中3.8