映画「拝啓天皇陛下様」
1963年 松竹 99分
<監督>
野村芳太郎
<原作>
棟田博
<キャスト>
渥美清、
長門裕之、
左幸子、
桂小金治、
加藤嘉、
西村晃、
藤山寛美、
多々良純
小田切みき、
穂積隆信、
清川虹子、
中村メイコ、
山下清、
浜口庫之助
<内容>
山田正助(ヤマショウ:渥美清)はもの心もつかぬうち親に死別し世の冷たい風に晒されてきたから、三度三度のオマンマにありつける上、何がしかの俸給までもらえる軍隊は、全く天国に思えた。
意地悪な二年兵が、彼が図体がでかく鈍重だからというだけで他の連中よりもビンタの数を多くしようと大したことではなかった。ただ人の好意と情にはからきし弱かった。
入営した日に最初に口をきいてくれたからというだけで棟本(ムネサン:長門裕之)に甘えきったり、意地悪二年兵に仇討してやれと皆にケツを叩かれても、いざ優しい言葉をかけられるとフニャフニャになってしまう始末だった。だが、中隊長(加藤嘉)の寄せる好意には山正も少々閉口した。営倉に入れられれば一緒につきあうし、出て来れば柿内二等兵(藤山寛美)を先生にして強引に読み書きを習わせる。
昭和七年大演習の折、山正は天皇の“実物”を見た。期待は全く裏切られたが、この日から山正は天皇が大好きになった。
戦争が終るという噂が巷に流れ出すと、山正は天国から送り出されまいとあわてて「拝啓天皇陛下様」と、たどたどしい手紙をかこうとした。
が、それは丁度通り合わせた棟本に発見され、危く不敬罪を免れた。まもなく戦況は激化、満州事変から太平洋戦争へと戦線は拡がり、山正はその度に応召し、勇躍して戦地にむかった。
そして終戦、山正にはただ住みにくい娑婆が待っているだけだった。懐しい棟本を訪れ、ヤミ屋をしたり開拓団に入ったりの生活をしていたが、同じ家に住む未亡人に失恋した日から山正は姿を消した。そして再び姿を見せた時、山正は女房になってくれるという女性を連れて来て棟本を喜ばせた。雪の降る朝・・・・・・(このあとは映画をぜひごご覧ください)(MovieWalkerより抜粋)
***************************
野村芳太郎監督は社会派の監督だと思っていましたが、このような喜劇作品もけっこう撮っていますね。
この映画の題名は知っていましたが、鑑賞したことはありませんでした。
題名からどんな映画なんだろう?そして喜劇映画とのことで、どんな笑いがあるのかと思っていました。
実際観ていると行進訓練のシーン、そしてラストあれデジャブ?観たことあるような・・・。
う~ん不思議^^;
たぶんないはずなのですがw
ブラックユーモアも盛り込みつつ、戦中から戦後後を生き抜いてきた庶民の生活を描き出す、喜怒哀楽にとんだ人情味あふれる作品だと思います。
それも渥美清という俳優合ってでしょうか。
「男はつらいよ」は、この映画の6年後になりますが、フーテンの寅さんとはまた違った自由奔放な純朴な人物を演じています。
渥美清の演技が秀逸というか、彼なしでは語れない映画でしょうね。
主人公が過酷な軍隊生活を楽しんでいるのです。
死ぬときは天皇陛下万歳と叫んで死ぬのが絶対だといいはるヤマショウ。
しかし他の軍人はそんな事いうやつは絶対いないと反論するが、ヤマショウは絶対的に天皇崇拝している。
ヤマショウは読み書きもろくにできない前科者、そんな自分が飯が食べれて風呂にも入れるそんな軍隊は天国だと思っているのです。
劇中、あの伝説の画家、山下清画伯がリアルで登場!
もちろんセリフありです。
必見!!
加藤嘉さんは、どうしても砂の器のイメージが私の中では強いのですが、今作品では、おせっかい役の上官で登場します。
このキャラがまた面白い。
また読み書きができないヤマショウに、藤山寛美が先生役になり教えるのですが、日本を代表する東西の喜劇役者の掛け合いもなかなかのもの、ホッコリするシーンもあります。
でも、もうちょっと藤山寛美の個性をいかしても良かったのではと思いましたが・・。
この作品は喜劇映画ということですが、陸軍の内部のある一面やヤマショウのように軍隊に生きるため依存軍隊生活を切望していた人間もいたという、新たな一面も観られた作品でもあると思います。
ユーモアと悲哀に満ち溢れた作品。
軍隊を肯定する人物を前面にだしつつ、ソフトな感じで戦争批判もしているのではないかと感じられました。
なかなかどうして、面白い作品でした。
しかし、よくもまぁこのような題名つけて問題にならなかったですよね!?
嫁さんになってくれる女性が見つかったヤマショウですが・・・ラストはとんでもないことに!!
衝撃的なラストです。
結末は本編をぜひご覧ください。
5点満点中3.8