KNIFE工房やすながさんにお邪魔してきました ② | 北欧ナイフでお気軽アウトドア

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少し間が空いてしまいましたが、KNIFE工房やすながさんのところにお邪魔した時の記録の2回目です。

 

 

工房の隅っこに無造作に置かれていたナタ……。

見せて頂くと、それは今はもう手に入らない三代目西根正剛氏のナガサとフクロナガサだったのです……。

 

 

というのが前回までのお話し。

いや、本当にびっくりしましたよ……。「ナガサ」に関しては以前から興味関心があり、かなりの研究(?)を進めてきたつもりなんですが、三代目……つまり西根稔氏のナガサの実物はまだ見たことも触ったこともありません。

 

 

ストック&リム―バルタイプのナイフとナガサ・フクロナガサに関連がないわけでもない、のは興味関心があるかたならご存知の通りです。

元々、ナガサ・フクロナガサには7寸、8寸のサイズしかなかったのです。

それが、カスタムナイフメーカー相田義人氏との接触により、4.5寸が出来、6寸が出来……という来歴を辿り、現行のラインナップがほぼ完成したというわけ。

 

 

西根稔親方と相田義人氏の交流は、たとえば『ナイフ HAND BOOK①』なんて本にも載っています。

 

 

ナイフHANDBOOK (双葉社ムック 173)

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相当昔の本ですが、ナイフメイキングの方法も写真入りのページで解説がしてあり、今読んでも面白い一冊となっています。

ここに、西根さんと相田さんが一緒にフィールドに出て釣りをしたり、鍋を作ったり、それぞれのナイフや刃物を使いながら楽しんでいる様子が特集されています。

そうした交流があったからこそ、成増のマトリックス・アイダさんにも、ナガサの取り扱いがあるんです。

 

 

閑話休題。

ともあれ、三代目西根正剛氏のナガサを初めてみました。

今までの研究(?)で明らかになっているのは、三代目のナガサは、少しづつ改良が加えられたため、作る時期によって微妙に細部が異なったりする、ということ。

 

 

今回見せてもらったナガサは、こんな感じでした。

 

 

 

 

ブレードに「叉鬼山刀」の文字が入っていないタイプの木の柄ナガサ。

後ろも、鍵カッコみたいなヤツに、〇に市の字。

これ、割と古いやつじゃないかな……。

 

 

あと、お気づきになられた方はいらっしゃいますでしょうか?

ブレードの身幅が現行のそれより、かなり細目で、スッキリとシャープなシェイプとなっています。

 

 

え? 分からないって?

じゃあ、鞘ごと見てみたらどうでしょう?

 

 

細身であることが分かるかと思います。

参考までに現行のナガサのリンクを貼ってみましょうか。

 

 

西根打刃物製作所 叉鬼山刀(マタギナガサ) フクロナガサ (7寸)

 

西根打刃物製作所 叉鬼山刀(マタギナガサ) 木の柄ナガサ (7寸)

 

 

もちろん、写真として載せたものは「いうほど研ぎ減りはしていない」です。

鞘の形状をみれば、元々が細身だった、というのもお分かりいただけるのではないかと。

 

 

では、フクロナガサのほうも。

 

 

こちらは「叉鬼山刀」の刻印が入っているタイプです。

 

 

少しハードに使用された形跡がブレードから見てとれますね……。

 

 

裏はこんな感じ。

問題は「ベタ研ぎOK」な作りになっている、ということ……。裏のエッジに角度が付いておらず、ベタで研ぐことを前提に作られているんです……。これは木の柄ナガサのほうも同様でした……。

 

 

ブレードの根元がキュッとしまった袋状になっています。

これも現行のスタイルとは違いますよね。以前、本で読んだ、五城目鍛冶のナガサも同様のスタイルだったことが思い出されます。

ただ、ここをあまりキュッと細身にしてしまうと、叩いて使う時にちょっと強度的に問題が出そうな気もしますが……。

 

 

こちらが鞘に納めた状態。

これは現行のスタイルとはあまり変わらないように思えますが、ブレードだけを見ると(研ぎ減りを勘案しなくても)やはり細身な気がします。

 

 

安永さんによれば、「20~30年くらい前のかなぁ?」とのことですが、

その10年の振れ幅は大きすぎる……!

 

 

ま、年代はともあれ、三代目の少なくともある時期までは、「ナガサは裏はベタで研げるようになっていた」ということは、ひとまず言えそうです。また、その時期は刀身が細身で、フクロナガサに関しては刀身の付け根がキュッと締ったタイプだったという。

 

 

問題の刀身なんですが、なんか……すごく強靭な気がする……。

感覚的な物言いになってしまって、大変申し訳ないのですが、鋼を爪で叩いた時の音や手ごたえも、私の持っているそれとは明らかに違うような……。

 

 

仕上げに関してもだいぶ違いがあります。

三代目のナガサは、木の柄・フクロナガサとおに、「仕上げは粗い」。

 

 

ツールマークは平気で残っていますし、峰部分を綺麗に平らに仕上げるということもしていない。

とても「素朴な刃物」という印象。

 

 

現行のそれは、その辺はすごくキッチリしていて、仕上げがとても綺麗。

素朴さは薄まり、カッコよさや洗練された雰囲気すらあります。

 

 

現実問題として、今は現行のそれしか入手する方法がないんですが(オークションとか、譲ってもらったりとかすれば話は別)、是非、三代目の作ったナガサも触ってみて欲しいです。

そして、気づいた点などがあれば、是非フィードバックをください。

 

 

何にせよ、長年の夢だった三代目のナガサに触れることが出来、とても幸せでした。

最後に、快く工房に迎え入れてくれ、長い間、色々なお話しをしてくださった安永さんに再度感謝を。

 

 

お住まいの近くに、こうしたナイフ工房やあるいは鍛冶屋さんがあるなら、是非行ってみてください。

きっと面白いお話しが聞けたり、思わぬものに出会ったりということがあるはずですよ。