ナイフ本のオイシイところ! | 北欧ナイフでお気軽アウトドア

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さて、今日は「ナイフ本」の話題。

いつもの「お役立ち書籍紹介」ともちょっとかぶるかな……。

 

 

先日、ついに織本篤資氏の『ナイフの愉しみ』を購入しました。

 

 

ナイフの愉しみ
ナイフの愉しみ
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織本 篤資
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今までにも、何度もナイフの本をご紹介してきましたが、私はこの織本氏の本が大好きなのです。

 

 

「ナイフの使い手としての著者」が見える文章ですし、文学的な香りもあって、ナイフというのを抜きにしても、いつまでも読んでいたくなるような、そんな今となってはかなり稀有なライターである、といえましょう。

 

 

近年、こういうナイフ本を書く人、書ける人が本当にいなくなったなぁ、と。

たとえば、前回書いたような「ファイティングナイフ」に関しては、その実用性を疑問視しつつも(というか、実用性は皆無、と言い切っているような箇所多し)、コレクション用としては認めてもいます。

 

 

そして、ここが織本氏ならではの視点なんですが、「ナイフを握ることで、男の夢想の酵母となる」みたいな、「ロマンとしてのナイフ」について触れているんですよね。

 

 

ありますよね。

フクロナガサを夜、鞘から払ってにやにや眺めていると、瞼の裏には「雪山」があって、免許も持ってないのに鉄砲を担いだ自分がいる。そして腰には当然、フクロナガサが鎮座していて、今まさに熊と対峙している……みたいな、ちょっと言葉にするのも恥ずかしい空想、妄想、夢想の類です。

 

 

先日は意図せず「ファイティングナイフ」と「タクティカルナイフ」を分けていたのですが、タクティカルナイフの魅力の一つは、ナイフそのものというより、ナイフに付随する能書きの類によって、所有者に夢を抱かせる機能にもあるような……。

 

 

そういえば、モース・コハンスキーの勧めるブレードの長さ(手のひらの横幅と同じくらいのサイズ)は、織本氏も同様のことを書いていまう。

ただし、織本氏は「咫」(あた)、という単位からそれを導き出しています。

 

 

咫という単位は、親指をグッと離して手を広げた時の「親指~中指」までの長さで、たとえば日本サッカーのマーク「ヤタガラス」(八咫烏)にも、その名前が使われています。(yaata ⇒ yataと、aaのダブりをa一音で解消したものと推測されます)

 

 

お気づきの通り、「咫」という単位は、個人個人によって違うんです!

手が大きく、指の長い人の「1咫」と、子供の「1咫」では、全く寸法が違います。

 

 

けど、そうした「個人単位」を用いることによって見えてくるものってあります。

たとえば、「3インチセミスキナーが最高なんだ!」という、ナイフ本の主張はここでは無意味なものになってしまいます。

 

 

つまり、大きな「咫」を持つ人や、小さな「咫」を持つ人にとって、「〇インチのナイフがいいんだ!」というのは、あまりに物事を平均化しすぎです。しかもそういう本の、その数ページ前とかに「ナイフは手にしっかりとフィットするものがよい」なんて書いてあるわけで、そこには微妙な矛盾が存在しています。

 

 

ここで、カスタムナイフなるものが浮上する契機があるわけですよね。

自分の手に合わせて、まさに「カスタムメイド」してもらえばいいわけで、「定番モデルのものを買う」というよりも、もっと本質的な「カスタムナイフ」の姿が見えてきます。

 

 

閑話休題。

ともあれ、今回の『ナイフの愉しみ』は、本当に織本節全開という感じで、かなり読んでいて面白い一冊となっています。「ジミー・ライル」が「ジミー・ライフ」となっている誤植(?)なんかはあることはあるんですが……。

 

 

大抵のナイフの本って、なにかしら誤植や、「明らかな誤り」なんかがあります。

最近出た、某本では「この著者、このナイフ持ったことないだろ!?」と、思わず疑問を呈してしまうような説明もありました。

 

 

カタログ系の本(ムック)にも、不自然な記述が散見されます。

近年見たなかで、一番ひどかったのは「ブレード厚:0.3mm」というやつ。いくらなんでも、それは薄すぎでしょー! と。

定規を持っている方は、ぜひ「1mm」がどれくらいのものなのか、そして、そのおよそ1/3に当たる0.3mmを確かめてみてください。

 

 

これは、たぶん……「0.3cm」って書きたかったんだと思います。

そのカタログが、ナイフの寸法に対してある時はセンチを基準に、またある時はミリを基準に記述しているが故のミスなのでしょう。

 

 

最近、あまりナイフ本が刊行されなかったり(ナイフマガジンも年刊になっちゃいました。そういえば織本氏は大抵、ナイフマガジンの一番最後のページに近い辺りのモノクロの和式ナイフの通販のあおり文を書いていたものです(超長い説明だけど、分かる人には強烈に分かると思う)。なので、私の織本氏の第一印象は「ナイフマガジンの後ろのおじさん」なのです)、「個性のある、味のある文章(場合によっては臭みもある)、あるいは明快な論理と分かりやすい説明でナイフを文字通り切って落とすような文章」を書ける人が、本当にとんといなくなりました。

 

 

色んなナイフ本が、過去から現代にわたって書かれていますが、ぜひ、昔に発売された本を読んだことがなければ、読んでみてください。

昨今のそれとは雲泥の「ナイフの芳醇な世界」が味わえること請け合いですし、そこにこそ、ナイフ本の「オイシイところ」が詰まってます!

 

 

そういう古いナイフ本と現代のそれの読み比べっていうのも、かなり楽しいものなんですよ。

 

 

読み比べてみると、相矛盾している場所があったりますが、それは「記述内容を実践してみること」で、どっちが正しいか分かります。

(ま、ここだけの話、「大げさなほど大きなナイフは必要ない」とかなんとか書いてある本のほうが正しいことが多いです……)

 

 

あるいは、言及されている「現物のナイフ」を手に取ってみるというのも、怪しげな記述を見破る一つの方策です(その意味で、私は昨年、ラブレスのナイフを握れてよかった!!!)。

 

 

そういえば、個人的に一つ疑問があって。

というのは、アメリカの某ナイフ本(邦訳が出てます)を読んでいた時のことなんですが、「ハンドル」を指して「ヒルト」と呼んでいるんですよね、その本は。

 

 

これってその人のクセなのか、誤認なのか……。

あるいは英語では一定以上支持されている「パーツ名」なのか……。ちょっとそこが分からなかったです。

 

 

というわけで、今日もまとまりがありませんが、こんなところで!