民間史学の大展開③ー民間史学の到達点・南船北馬説 | 南船北馬のブログー日本古代史のはてな?

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日本古代史は東アジア民族移動史の一齣で、その基本矛盾は、長江文明を背景とする南船系倭王権と黄河文明を踏まえた北馬系倭王権の興亡である。天皇制は、その南船系王権の征服後、その栄光を簒奪し、大和にそそり立ったもので、君が代、日の丸はその簒奪品のひとつである。



 

民間史学の大展開③       室伏 志畔


 

民間史学の到達点・南船北馬説


 この「磐井の乱とは何か」の九州シンポジウムを契機に飯岡由起雄が、福永晋三と私を誘い、「古代史最前線」を発刊し、私も年刊誌「越境としての古代」の編集が始まった。それは「大和から疑う」史論が、大和を九州の倭ヤマトに奪回した以上、可能となったことを意味する。このシンポジウムから数カ月して古田が「磐井の乱はなかった」と発言し、さらに退行して行くのを我々は見た。

 これらと前後して私は、九州王朝説をベースに、その限界を「古田枠」を越え展開した三人の先達、平野雅曠・兼川晋・大芝英雄の論の総合化に乗りだし、「季報唯物論研究」に「南船北馬の向こう側」の連載に入り、列島古代史の新たな定義に乗り出した。

  結論から言うなら、列島古代史は東アジア民族移動史の一繭で、列島社会は長江下流の南船系倭人の渡来により拓かれた集団稲作社会の上に、韓半島経由の北馬系勢力が乗っかる二重構造にあり、その基本矛盾は海彼の二王権の南船北馬の興亡の結果、発祥した。その列島王権は出雲王朝-九州王朝-近畿王朝と三変し、天皇制の成立は、自村江の九州王朝・倭国敗戦後の壬申の乱に勝利した天武崩御後の、六八六年の大津皇子の変のクーデターにより大和朝廷を変質させ、持統に流れた百済系の天智皇統の文武を戴き日本国を成立させたことによる。それを正史・『日本書紀』が日本国に先在した列島王権の成果をことごとくわがものにするグラフト(接ぎ木)国家説をもって、その継ぎ目を隠蔽した皇統一元史観をそそり立たせたことによる。この歴史造作が成功した秘密は、皇統の舞台である豊前の倭ヤマトを畿内大和に変換し、皇統の前身を隠すことに成功したことにある。

 
 その継ぎ目隠しは、聖徳太子問題一つをとっても、飛鳥仏教が畿内飛鳥への九州仏教と吉備仏教の取り込み造作に気づかないことによって、畿内に架空の飛鳥仏教の功労者が皇室の刻印を打って、九州や吉備の仏教功労者の偉業を独り占めにして架空の聖徳太子が正史に出現を見たのだ。飛鳥寺が元興寺、法隆寺が斑鳩寺という別名を持つのは、飛鳥寺の本尊が豊前の椿市廃寺址にあった元興寺仏の移坐なら、法隆寺は播磨の斑鳩寺の移築・移坐により建立されたことによる。つまり聖徳太子は、九州の多利恵北征や播磨の上官法王を事跡を中心に、椿市廃寺にあった元興寺の善徳の功績をも取り込み、つまり列島の仏教功労者の精華を掠め、皇室の出自を持つ人物として創造を見たミックス像以外ではないのだ。

 

 それでは畿内の天皇陵とは何か。それは六八六年の天武崩御後の大津皇子の変で、畿内大和を拓いた出雲系の大和豪族・大氏を粛清した持統や藤原不比等は、十八氏の豪族に墓記提出命令を出した。それに連続し、八世紀を前後して、粛清した大氏を中心とする豪族の地に、九州の倭ヤマトから移住した住民に、倭ヤマト地名に合わせ、好字二字による新地名を大和地名を創出させた。それは墓記が抜き取った畿内豪族の大古墳に、数百年かけ天皇陵を比定していったものにすぎない。それでは初代神武から四十代持続までの天皇陵で確実なのは天武・持統合葬陵のみにすぎないので、しかも天武は皇統一元史観の必要上、皇統に取り込まれた倭王で、山科の天智陵は、持統の陰に隠された高市天皇の寿陵を天智陵に改修したものでしかない。このことは日本国は天智皇統を戴くため、京都の皇室の菩提寺・泉涌寺の天皇位牌から、天武系七代の天皇は排除されていることは知っておいた方がよい。

 

 列島古代史は、畿内大和中心の皇統一元史観を「大和から疑い」、皇統一元史を出雲王朝や九州王朝へ開き、海彼の東アジア民族移動史に開くことなくして、本来の姿の回復はありえないことを、21世紀の民間史学は、記紀史観を突き抜け、学界を尻目に大展開してきたのである。しかしそれを知る人はまこと少ない。それは、我々がそうであったように、我々の子女が大和中心の皇統一元の記紀史観による洗脳が公教育として罷り通るため、その皇統枠を越えて歴史を考えられないことによるが、それを越えることなくして真実の歴史の奪回はないのだ。

 

 

 

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