虐待で物理的に傷つく脳 8(解離性同一性障害) |  虐待後遺症を生きる

 虐待後遺症を生きる

   
   母親からの虐待を生き抜いた娘
   虐待後遺症をどう生きていくのか
   娘とオヤジのリアル奮闘記です。

複雑性PTSDが発症したと思われるのは

中学に入ってすぐだったと思います。

 

母親の虐待に加え、中学校でもいじめに苦しんでいました。

そのいじめがトリガーとなって発症したのだと思われます。

 

リョクが脳内に存在し始めたのは

どうやら小学校高学年ぐらいからのようです。

 

「なんか自分に話しかけてくる声が聞こえる。」

 

母親の虐待(躾に厳しい母親との認識しかなかった)が続き

誰にも言えず苦しんでいるときに脳内から話しかけて来る存在

があったそうです。

 

それは娘の脳が知らず知らずの内に作り出した人格です。

 

解離性障害という病気があります。

解離とはつらい体験によるダメージを避けるために

人という生物に備わった防衛反応のひとつです。

心と身体の機能を切り離し、精神機能の一部を停止させたり

自己を切り離したりすることで自らの精神を守るのです。

 

そして

 

その解離性障害の中でも自己を分離して複数の人格に

辛い記憶を分散、封印し自分へのダメージを避けるのが

解離性同一性障害。

ダメージが多ければ多いほど記憶を預ける人格も増えていきます。

障害とはいいますが、極めて複雑な防衛反応なのです。

 

別人格が作られるとはどういうことなんでしょう。

そもそもひとりの人に別の人格というものがどうして宿るのでしょう。

僕はこう考えます(医学的には違うのかもしれませんが)

 

自分にとって絶対耐えられない

恐ろしい出来事が目の前に迫っているとします。

 

今から受けるであろう暴力や、暴言は想像することができます。

 

「今から自分は凄く恐ろしい思いをしなければならない。」

「逃げたい!でも絶対逃げられない。死ぬかもしれない。」

「誰か、今すぐ私に代わってこの恐怖を受けてとめて欲しい。」

「私に起きる事じゃないんだと思いたい。」

「誰か別の人の事なんだと思いたい。」

「誰かが代わりに受けてくれるはず。きっと誰かが・・・」

 

脳は身代わりになってくれる自分以外の誰かを懸命に探します。

物理的には誰もいない。私しかいない。

でも、私以外の誰かを身代わりにしたい。

私は安全なところに避難してその場をやり過ごしたい。

私がもう一人いて、その子が恐怖を受け止めてくれたなら・・・・

 

切なる願いは極限の緊張した精神の中で分離。

 

リョクはこうして生まれました。

娘の恐怖を受け止めて主人格の娘の精神を守る守護人格として。

 

脳内だけに存在し、娘が辛い時、苦しい時に声を掛け続けた。

辛いときにかけてほしい言葉は娘の脳の中にあり、

シナプスを通してその言葉を受け取った。

別人が自分に声をかけているように思うようになった。

その繰り返しの中で自分が理想とする人格が育っていった。

 

それが今のリョクです。

 

虐待という不可避な恐怖が現実に始まるとき

諦めと絶望が駆け巡り体と心は硬直し身動きができなくなります。

 

硬直した身体と正常な精神を守るため

脳と精神は究極の対応で本人を守ろうとします。

 

言葉の暴力で傷つくことを少しでも防ぐため

脳の聴覚野を肥大させ聞こえにくくします。

 

目から入る恐ろしい対象を見えにくくするため

視覚野は萎縮し情報を減らします。

 

暴力による痛みに耐えるため

前頭葉は萎縮し痛みが伝わるのを減らします。

 

脳の変異と並行して身体と精神の解離がおこり

人格を交代して主人格の娘の精神を守るんです。

 

その一番最初の守護人格がリョクなのです。

 

でもそのリョクがずっと娘に囁いていたことは

 

「辛いなら、もうやめちゃおうよ。」

「無理して生きてること無いじゃん。」

「僕は消えちゃうことになんの不安もないよ。」

 

などなど。

 

おおよそ守護する者とは思えない囁きばかりだったそうです。

 

このことは、娘の心の声でもあり

人格という形を通した娘の本音でもあったはずです。

 

恋の破局でダメージを受けた娘は

彼氏の分身として脳内にオトという人格を作り上げた。

そしてオトという人格が娘の身体を通して具現化した際に

その存在を僕が認めたことでリョクは暴走した。

 

オトと入れ替わったリョクは出てくるなり

 

「俺が一番昔から〇〇(娘)に寄り添ってきたのに、

後から出てきたオトが○○(娘)の守護人格として

振舞うのは納得いかない。おっさん、俺も認めてくれ!」

 

人格がオトと娘以外に入れ替わるなどあまりにもいきなりで

驚きましたけど確かにリョクは僕にそう言ったと思う。

 

もう一度言いますがオトもリョクも娘の姿でのことですから

非常に頭が混乱します。

 

話すに従っていかにリョクが娘を慕っているかが伝わってきます。

 

「これが○○(娘)の髪かあ~ いい匂いだなあ~サラッサラやん。」

髪の匂いを嗅いだり撫でたり

「おっさん、触ってみい~ ホッペ プニュプニュやん。」

そう言って自分の(娘の)ホッペを撫で回したり

 

「俺さあ~ 今まで出てこれんかったやん。

○○に触れることも出来んかったやん。

ああ~○○(娘)ホントかわいいなあ~」

 

もう一度言いますが見た目は娘。

でもリョクがそう言ってるんです。

 

「オトさあ、服買ってくれとか言っとったやん。あいつワガママだわ。

俺は○○(娘)が好きやから服なんて要らん。○○(娘)の服がいいわ。」

と自分の方が娘を想ってることをアピールしてきた。

 

「あのさあ~、俺、肉好きなんだよね。○○(娘)でいるときにさあ

肉食わせてよ。あっ!でも○○(娘)が太ったとか言うかなあ~」

 

娘を気遣いながらも元気いっぱい。

 

身体を持ったことで、人格としても認められたことに満足の様子。

 

そこから時々話すこととなるリョクは

時間の経過とともに娘を守ることに対して

諦めの囁きからサポートする方向に変化していきました。

 

人格は生まれた時のままでずっと変わらないというけれど

リョクに関してはメンタル面で変化が見られる気がしています。

娘の経験値と共に変化する人格たちの一人です。

 

このあともいろんな人格が現れます。

 

つづく

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