騙され易い日本人と用心深いドイツ人、そして投資の心得 | Kunstmarkt von Heinrich Gustav  

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ドイツの首都Berlin、Brandenburg州及び比叡山延暦寺、徳島県鳴門市の公認の芸術家(画家) Heinrich Gustav(奥山実秋)の書き記した論文、随筆、格言集。

2020~22年までは日本国内の1年間の詐欺被害総額はそれぞれ285億、278億、371億円位だったのだが、23年の詐欺被害件数は1万9033件、被害総額は441億円と言う驚異的な統計が出ている!びっくりあせる

此れを1日に換算すると、平均52人が被害に遭い、被害額は1億2千万円位になる。

詰まり1人平均231万7千円以上が騙し取られている事になる。

所謂「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」の件数は近年減少しているが、無能な政治家共が国民の金融資産を増やす意図(希望的観測)で、従来の「貯蓄」から「投資」に運用転換する事を奨励した。

此れに託(かこつ)けたSNS上の「投資詐欺」、更には荒唐無稽な「ロマンス詐欺」等に数百万ないしは数千万円を騙し取られる事件が毎日の様に報道されている。

余が小学校の頃には「道徳」並びに「学級指導」と言う授業が毎週土曜日に設けられていて、担任の先生が生徒達に社会に於ける正義や人道について、そして休日の家庭や学校外での過ごし方について指導してくれていた。

其の中で「見知らぬ人に安易に着いて行ってはいけません。」と教えてくれていたので、余の世代位までの人間は、見知らぬ初対面の人間を盲目的に信用する様な真似はしなかった。

ところが近年インターネットが普及する様になって以来、「通信販売」だのSNSだのと言ったIT機能によって遠く離れた他人や業者と直接の面識や訪問が無くても交流なり取引が可能になった。

此れに依って現代人は面識の無い他人とのやり取りに対する抵抗感が希薄になり、遂には疑惑の念すら殆ど抱かなくなっている始末である。

此の様な社会現象に伴う現代人の心理的変化に付け込んで悪事を働くのが詐欺や其の他のサイバー犯罪者共である。

余の個人的な感覚では、何故面識も無い何処の「馬の骨」か「豚の糞」とも知れない下賤の輩をこうも簡単に信じて、大金を何回にも分けて相手の口座に振り込むのだろうか? 

被害者は「若年性痴呆症」なのか?と、疑いたくなる程呆れてしまうのである。えー

心理学的に考察して観ると、人間は「欲望」や「恐怖」を刺激されると、一時的に思考力、判断力が著しく低下してしまう、所謂「盲目状態」に陥っていたのではなかろうか。

 P.P.Rubens:  Porträt von Julius Caesar

古代ローマ帝国・最高位の政務官Julius Caesar(BC.100~BC.44)の言葉「人間は誰しも全てを見ているわけではない。 大抵の人間は自分の欲する物事しか見ていない。」(そこに人間の盲点があるのだ。) がこの心理状態を象徴していると言える。

因みにドイツの諺に>Heute rot, Morgen tot.<(今日の赤ら顔、明日は死に顔)と言うのがある。

即ち「今日は元気でも明日は死ぬかも知れない。だから油断せず気を付けろ!」と言う意味である。

(最近多発する詐欺被害を見ていて「今日の金持ち、明日は素寒貧」言う諺を思い付いてしまった。)

更にドイツの諺に>Die Katze im Sack kaufen.<(袋に入った猫を買う)と言うのがある。

即ち「中身を確かめずに金を払うのは愚行である。」と戒めた諺である。

結局の処、心理学を悪用する詐欺の巧妙な手口によって洗脳されて、「色ボケ」「欲ボケ」した激烈バカが正しい見方や判断が出来ず、詐欺の言いなりになって行動した結末である。

(因みに余はSNSは全く使わないし、興味すら無い。)

後期Stoiker(ストア派)の哲学者Seneca先生(BC.4~AD.65)の言葉「王の様な莫大な財産でも愚者が持ち、浪費を続ければ必ず破産する。 僅かな財産でも賢者が持ち、管理すれば少しづつでも増えて行く。」更にはあるドラマの台詞「馬鹿が大金を持つとろくな事は無い。」が思い出されてならない。

消費者庁、警察、各金融機関、自治体、そして各マスコミが口が酸っぱくなる程までに「詐欺に気を付けて下さい!」と、過去のこいつらの手口をも公開してまで注意を促しているにも拘わらず、詐欺事件は減少するどころか、寧ろ被害件数、被害額共に増加しているのである!

そして警察や裁判所によると、一度騙し取られた金銭を詐欺から取り返す事は大変困難であるとの事である。

多くの人々が指摘している様に、こうなれば江戸時代に「十両(現在の100万円位)盗めば首が飛ぶ(死罪)。」と言われていたのと同様に、詐欺に対する罰則をより厳しく、又は極刑にする以外、この悪質極まりなき犯罪を制御する方法は無い様に思える。

だが裏の事実を見ると、詐欺の親玉(首謀者)は外国に潜んでいるので、日本の警察だけで「国際犯罪」を調査、取り締まるのは限界があるので、国際警察や外国の警察との連携が重要とされる。

 

日本でこれ程までに詐欺事件が毎日の様に多発し、莫大な金額が騙し取られている原因の一つとして、日本人が騙され易い性格である事が災いしていると思われてならない。

欧米各国の日本人に対する印象は「勤勉」「誠実」「清潔」「我慢強い」「礼儀正しい」「謙虚」「知的」と言うのが多いが、其の反面、「曖昧」「お人よし」「引っ込み思案」「無個性」「騙され易い」と言う指摘もある。
参考に各先進国の「意識調査」で、「情報の真偽を見分ける自信がある。」と思える人の割合は以下の通りの統計が出ている。 
ドイツドイツ: 80.0%   フランスフランス: 74.5% 
イギリスイギリス: 74.2%   アメリカアメリカ: 71.6%
日本日本: 28.8%
更に「情報の真偽を確認した経験がある。」と答えた人の割合は以下の通りである。
ドイツドイツ: 54.7%   フランスフランス: 43.5%
イギリスイギリス: 43.4%   アメリカアメリカ: 50.0%
日本日本: 28.4%
これ等の統計からも、日本人が他国民に比べて騙され易いと言う事実は否み様が無い。
其の反対にドイツドイツ人は先進国の中で最も騙されにくい国民である事が以上の統計でも見て取れる。

騙される人が殆どいないのなら、詐欺の犯行も成り立たないと言う事である。

其れ故にドイツ国内では詐欺犯罪もサイバー犯罪も各先進国の中で最も少ないのである。

同ブログ内のプロフィールや他の記事にも何度も書き記している様に、余は学業と仕事でドイツに1989年~2003年まで足掛け13年住んで活動して来た。

其の経験から書くのだが、ドイツ人は誠にsolid(堅実)でvorsichtig(用心深く)、ordentlich(整然とした)、そしてgesetzmäßig(合法的)な精神が強いのである。

例えばドイツでは他のヨーロッパ諸国に比べて窃盗事件すら少ないのに、住居に於いては家の全ての扉、窓、そして家具の全ての引き出しに至るまでSchloß)ないしは Schlüßel)が付いているのである。カギ

更には乗り物(自動車、自転車)、金庫や鞄、其の他の箱も合計すると、一般家庭でも100個位の鍵がざらにあるのが常識なのである!

此れには我がドイツ人の親友Ch.Radeke牧師も>Ah! So viele Schlüßel ich kann nicht leiden!<「こんな沢山の鍵にはウンザリするよ!」と言っている。

其れ故にドイツでは"Schlüßeldienst"(鍵の業者)が日本と比較しても多く見受けられる。

そしてドイツでは昔からBecker(パン屋) とBrauer(ビール職人)とSchlüßelmacher(鍵屋)に成れば生活に困らないと言われる位である。

此の鍵や錠の文化はMittelalter(中世、12~14世紀)の大昔から伝わっており、其の証拠にドイツの都市にはStadtwappen(町の紋章)に Schlüßel(鍵)を図案化している事が多く見受けられる。

例:Bremen, Minden, Naumburg, Regensburg, Worms,等

本来、Symbolik(象徴学)では「鍵」はAbschließung(閉鎖)、Sicherheit(安全)、そしてVerwaltung(管理)の象徴であるが、これ等の都市のStadtwappen(町の紋章)は、そこに強大なBistum(僧正領) ないしは重要なDom(大聖堂)が存在している事を示しており、キリスト教の伝説でSt.Peter(聖ペテロ)が持っている"Schlüßel der Himmelspforte"(天国の門の鍵)を図案化しているのである。

"Saint Petero" de Marco Zoppo (1468)

 

扨、余はドイツのKunstakademie(芸術大学)で学ぶ傍らMedizinische Akademie(医学大学)でも特別受講生としてPsychologie(心理学)を学んでいたので、此の分野に於ける「騙され易い人の特徴」を以下の通り記しておく
注意1.「自分は騙されない」と過信、慢心している
注意2. 意志薄弱、 優柔不断で、他人に操作され易い
注意3. 単純、短慮で、何事も容易く受け入れる
注意4. 人や物を外見だけで判断する
注意5.「欲望」や「恐怖」への自制心が弱い
注意6. 目先の利益に直ぐ飛び付く
注意7. 流行物や新しい物に直ぐ飛び付く
注意8. 情報や知識が不足している
注意9. 社会や人生での経験が不足している
注意10.  優しく、お人好しで、断るのが苦手
注意11.  権威、肩書、名声、ブランド等に弱い
注意12. 煽(おだ)てやお世辞に弱い 
注意13.「買い得」「限定」「特別」等の言葉に弱い 
注意14. 占い、迷信、噂話を簡単に信じる
注意15. 思い込みが激しく、忠告を聞かない

注意16. 物事の真偽の確認や調査をしない
注意17. 身近に相談出来る人がいない
以上の項目に多く該当する人は、詐欺に騙されない様に重々注意する事である!

 

今年1月より「新NISA制度」(1年間の投資金額が1800万円以内は免税となる)が制定される事によって、投資に関心を持つ国民が増えて来ているが、其れでも投資している日本人の割合はまだ僅か23%程度である。

此れはアメリカの投資する国民の割合約62%と比べると如何に低いかが分かる。

一方で現在の日本国民の「貧困化」は著しく、貧困層(資産500万以下)が約17%、下層階級(資産500万~1000万以下)が約33%と両方で50%にまで達している。

其の上最近の「国民意識調査」によると、52%の国民が「生活が苦しい」、ないしは「やや苦しい」と答えているらしい。

たとえ投資に有利になる「新NISA制度」が導入されたとは言え、毎日の生活にも余裕の無い「貧乏人」には投資する元手すら無いのではあるまいか。

此の様な制度で恩恵、利益を得ているのは「準富裕層」(資産5千万~1億、国民の6.5%)「富裕層」(資産1億~5億、国民の2.5%)ないしは超富裕層(資産5億以上、国民の0.16%)の「投資家」位であろう。

又、「所得税」には累進課税の制度があって、年収が高額になる程、税率も上がるのだが、一方「金融所得」に対する税率は幾ら利益があっても一律に20%と決まっているのである。

更に株の投資には「配当率」と言うのがあって、例えば同じ株に1千万投資するより、2千万投資すれば2倍以上、3千万投資すれば3倍以上の配当金が得られる仕組みなのである。

そして国民健康保険の掛け金を被保険者の年収から計算する上でも、「金融所得」は除外されるのである。

此の様な「社会の仕組み」が存続する限り、富裕層ばかりが更なる利益を得て、貧乏人はいつまでも貧しいままである。

あるフィナンシャルプランナーが書いていた格言「今日ではあくせく働く人より、社会の仕組みをよく勉強して其れを利用している人の方がずっと楽に沢山儲けています。」とは正に至言也と思えるのである。

結局の処、此の「社会の仕組み」と政府の方針は国民全体の資産を増やすどころか、更に「経済格差」を拡大させる事は火を見るよりも明らかである。

理性的に考えて観てもらいたい。

もし、ろくに経済学も学んでいない、そして株や証券、等の「社会の仕組み」も十分理解出来ていない素人風情が安易に投資して儲かるのなら、世界中の投資する誰もが皆「金持ち」に成れるであろう。

(そんな夢物語がある訳が無い! 世の中そんなに甘くも無ければ、簡単でもない!)

一部の経済学者や証券会社のOB、又は有力な投資家によると、実際の処は株で利益を得ているのは投資者全体の上位30%程だそうである。

逆に言えば残りの70%程の人々は損益を出していると言う事になる。

スポーツの世界に勝者と敗者があるが如く、資産や投資の世界にも同様に勝者と敗者が存在するのである。

そして其のゲーム差(格差)はどんどん開いている!

諺の「生兵法は大怪我の基」とある様に「素人投資は大損の基」と言っても過言ではない。

 

因みに我が家は親の代より既に1989年以来、大手証券会社を通じて株や証券に投資を続けているのだが、其の際に我が母上は「銘柄選び」と「買い時」と「売り時」は全て当証券会社の職員(プロ)に一任しているのである。

正に日本の諺「商売は道によって賢し」又は「餅は餅屋」の如くである。

そして、投資の三大要素である「長期・積み立て・分散」を常に守り抜いている。

此れにて年を追う毎に順調に金融資産を増やして来ているし、不動産資産、そして余が担当する資産物品(美術工芸品、貴金属、等)も同様に増やして来ているのである。

御蔭様で余は賃金の為に働く事も無く、我が家の(昔の男爵、子爵並みの)財産と不労所得(金融所得、不動産所得)だけで悠々自適、余裕綽々で生活出来る事には、常に我が先祖と母上と証券会社に感謝している!

結論として、多大な財産を有する者には、同時に大きな責任が掛かっている。 何故なら財産とは所有者によって良くも悪くも作用するからである、と言う事を主張しておきたい。

 

皮肉な追伸:                                        

仏教の「十如是」」(じゅうにょぜ)の法則の中に「因・縁・果・報」と言うのがある。

即ち此の世の全ての出来事は偶然でなく、全て「必然」であると言う事である。 

最近毎日の様に多発する詐欺事件も同様に以下の通りである。

:被害者が「馬鹿たれ」、「欲たれ」である事  

:「投資の勧め」に煽られて、SNSで詐欺と悪縁が出来た

:詐欺を見破れず、いとも簡単に騙され大金を振り込んだ 

:金融資産の殆どを失い、「素寒貧」になった

更に仏教では「貪」(邪な欲)「瞋」(憎しみを伴う怒り)「痴」(愚かさ、無知)を「三大悪」又は「心の三毒」として、これ等に心を毒されない様に戒めている。                「投資詐欺」、「ロマンス詐欺」等に引っかかる被害者共の心がこの「貪」と「痴」によって支配されていた事が最近多発する詐欺事件の原因であると言える。                                                   

 

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