昨日12日夕方から今日13日未明にかけて、台風19号は東海地方から関東地方を通過して、東北地方東海岸側に出て温帯低気圧に変わった。
今回の台風によって、東京都、神奈川県、埼玉県、山梨県、長野県、静岡県、群馬県、栃木県、千葉県、茨城県、新潟県、福島県、宮城県、岩手県、の計14都県に「大雨強風特別警報」が発令された。
一度の台風で此れ程多くの都県に発令されるのは史上初めての事である。
今回の台風の規模は暴風直径が何と650kmもあったらしく、これ等の広範囲に渡る地方で風速約30~50m、並びに300~600mmもの大量の雨をもたらした。
気象庁の統計調査をしても、此れ程大規模で強力な台風は半世紀に一度しか起こり得ないとの事である。
風速50mになると自動車が横転したり、鉄筋コンクリートの電柱が折れたり、建造物が破損ないしは倒壊する程の威力である。
又、1日300~600mmの降雨量とは、年間降雨量の3~4割に匹敵し、今回の雨量は東日本の130個の観測所で史上最多を記録した程である。
此れ程までに大規模で強力な台風が襲来した為、総務省消防庁の統計によると14日の時点で死者は12県で84人、行方不明者は6県で9人、そして負傷者は約320人以上にまで至り、避難者も1都16県で最大約3万8000人に上っている。
そして住宅被害は、5万6700軒以上が浸水、内3300軒以上が全壊ないしは一部損壊している。
今回は気象庁や各テレビ局の気象予報士も揃って其の危険性を主張して、国民に細心の警戒及び迅速な避難を促した事、近年度重なる自然災害に呼応して、日本国民の災害に対する危機管理意識及び対応能力が成程高まっている事、そして警察、消防、自衛隊の迅速且つ適切な救助活動によって、人的被害は予想より少なかった様に見受けられる。
しかしながら此度の様な大規模で強力な台風が襲来すると、物質的被害はどうしても此の様におびただしい数にまで上ってしまう。
たとえ人間がどんなに研究、工夫、努力を重ねても、自然災害を克服する事は出来ないと改めて痛感させられるのである。
今回の台風19号が急速に発達し、尚且つ勢力が衰えなかった原因として、「地球温暖化」による海面温度の上昇が挙げられる。
此れに依って海面上に発生した大量の水蒸気を台風があたかも栄養剤の様に吸収して、かくも大規模で強力に急成長したのである。
又、ある気象学及び地質学者の予測によると、最近の「地球温暖化」の影響で、日本に毎年襲来する台風の進路は段々東に移動して来るとの事である。
故に此れまで台風の経験が少ない東日本の住人は、地震のみならず更に台風に対する危機管理意識及び対応能力を養う必要があると言える。
現在までに確認されている例を挙げると、東日本の68河川の125箇所で堤防が決壊した事が国土交通省の調査で分かった。
堤防の決壊が確認されたのは、以下の河川である。(NHKのHPより)
《国管理の河川》
・吉田川の宮城県大郷町付近
・久慈川の茨城県常陸大宮市の富岡と塩原、合わせて2か所
・那珂川の茨城県常陸大宮市の野口と下伊勢畑、合わせて2か所
・都幾川(ときがわ)の埼玉県東松山市正代
・越辺川(おっぺがわ)の埼玉県坂戸市平塚
・九十九川の埼玉県東松山市正代
・千曲川で長野市穂保
《県管理の河川》
・秋山川の栃木県佐野市赤坂町
・黒川の栃木県壬生町上稲葉
・荒井川の栃木県鹿沼市野尻
・三杉川の栃木県栃木市下岡
・荒川の栃木県那須烏山市藤田
・蛇尾川(さびがわ)の栃木県大田原市北大和久
・中川の栃木県矢板市
・内川の栃木県さくら市
・百村川(もむらがわ)の栃木県大田原市
・志戸川(しどがわ)の埼玉県美里町
・都幾川(ときがわ)の埼玉県東松山市
・新江川(しんえがわ)の埼玉県東松山市
・宇多川の福島県相馬市
・渋井川の宮城県大崎市
・砂押川(すなおしがわ)の宮城県利府町
《国管理の河川》
・阿武隈川 ・多摩川 ・千曲川 ・牛渕川 ・吉田川 等、合計24河川。
《都県管理の河川》
・宮城県:13河川 ・福島県:4河川 ・茨城県:3河川 ・群馬県:2河川 ・栃木県:24河川 ・埼玉県:34河川 ・東京:5河川 ・神奈川県:4河川 ・山梨県:5河川 ・新潟県:3河川 ・静岡県で15河川 ・長野県と三重県:いずれも2河川 ・青森県と山形県:いずれも1河川
河川工学及び防災学の専門家達も今回の洪水は規模(浸水面積:23000ヘクタール)に於いても、システムに於いても前例の無い物であると主張している。
今回の洪水を大別すると、以下の2種類が挙げられる。
・流域型洪水
本流の河川から木の枝の様に分かれる多数の支流が増水して、其の水が本流に流れ込んで起きる。
・バックウォーター型洪水
本流の河川の水量は増え過ぎて、支流の河川の水流が滞り氾濫して起きる。
12日から13日午前中まで首都圏全ての鉄道、並びに東海、北陸、上越、山形、等の新幹線、そして航空機812便が運休となった。
停電も関東地方だけで約14万6700戸、そして断水は14都県で約13万8000件にも及んだ。
被害を受けた家屋の数はまだ集計されてはいないが、恐らく驚異的な数に及ぶ事は間違い無い。
被災者の方々は家の修復だけでも大変な手間暇及び費用がかかると言うのに、其の上停電、断水にまでも堪えなければならないのは、心身共に大変なストレスが溜まる事であろうと察して止まない。
余も被災地の惨状をテレビ中継で見て、気が滅入る思いである。
其れに引き換え、余は今まで幸福過ぎた恵まれ過ぎた人生を送って来たにも拘らず、些細な事で怒ったり、憂鬱になる自分を恥ずかしく思ったのである。
まだ被害の全貌は明らかではないが、最終的には人命のみならず、工業、商業、※農林水産業、等の経済、産業上の被害、損失も莫大な規模に及ぶ事が予測される。
(※現時点で農林業の被害額は380億円以上にまで上っている。)
余としては何よりも先ず被災地の方々に心よりの御見舞いを申すと共に、被災者の方々が
不屈の精神を以って1日も早く復興される事を願って止まない!
安倍総理は14日夕方、首相官邸で開いた台風19号の非常災害対策本部の会合で「被災地が躊躇せず、全力で応急対策や復旧対策に取り組める様、「激甚災害」に指定する方向で調査を進める。」との方針を示した。
「激甚災害」は、農林水産関連施設、等の被害額が一定基準を上回る場合に政府が指定して、自治体の財政負担を軽減し、早期の復旧・復興を支援する為に指定された定義である。
総理は会合で、「被災者が一日も早く安心して暮らせる生活を取り戻せる様、全力を尽くして欲しい。」と関係閣僚らに指示をした。
又、総理は被災者支援を迅速に進める為に設置した各省庁の「被災者生活支援チーム」の取り組みとして、政府職員約370人を被災地に派遣した事を明らかにした。
昨年も今までの日本の歴史でも希に見る程の自然災害が連続して起きて、国内に甚大な被害をもたらした。
被災地に該当し無い地域に住んでいる人々もこれ等の自然災害を「対岸の火事」即ち他所事として見ずに、自分達もいつか似た様な災害に遭遇する可能性があると想定して、「転ばぬ先の杖」の如く、万が一の場合の為の心得と備えを固めておくべきではなかろうか。
誠に昨年に続き今年も自然の猛威をつくづく思い知らされる事になった。
19世紀の「産業革命」以来、人間による自然破壊が深刻なまでに進んだ結果、地球規模で様々な自然災害が起こっている。
これ等の現象に対し、人間は自分達が被害者であると言う意識を抱くのは間違いであると余は考える。
そうではなくて、人間が地球環境を破壊した「加害者」として、これ等の自然災害を「地球からの警告」として真摯に受け止め反省し、今一度「自然と人間の共存」を見直し、実行する義務があるのではなかろうか。
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