みなさま
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ウクライナ、ロシア、EU
政治的解決を探れ
ウクライナ情勢は2月のキエフでの政変の後、3月16日のクリミア自治共和国住民投票での圧倒的支持を経て、同共和国がロシア連邦に編入されるなど危機的な状況がつづいている。この地域の平和と人々の生活の安定がそこなわれている。
ウクライナ暫定政権の政策、ロシアの軍事を含めた介入姿勢とクリミア併合、これに対する欧米各国による対ロ制裁の発動など国際情勢は緊迫し、日ロ交渉にも大きな影響を及ぼしている。「軍事的圧力」とか「併合」とか「制裁」は問題を解決しないどころか、いっそう紛糾させるだけだ。
今こそ、ウクライナ、ロシア、EU(欧州連合)が対話・交渉によって平和的、政治的な解決策を探ることが求められる。
そうした解決策を目指すうえで無視できない二つの視点を指摘しておきたい。
2・21の「合意」は?
一つは2月22日の暴力的な政変である。
前日の21日に行われたヤヌコビッチ大統領と野党各派との「合意」が覆されたのだ。この「合意」は危機打開のために、①大統領権限の縮小②与野党による「暫定国民連合政権」を10日以内に樹立する②大統領選挙を前倒して5月末に実施する、というものだった。
この合意はEUとロシアの特使の仲介で成立したのだが、一晩で覆され、出来たのは“勝者の政権”だった。腐敗と強権のヤヌコビッチ政権を打倒したとする現在のウクライナ暫定政権の正当性が同国憲法からも問題になってくる。
暫定政権には一部の排外主義的な国粋主義グループが加わっており、民主派・親EU一色ではない。反政府勢力と治安部隊との衝突で100人近い死者が出た際にも、このグループが狙撃したという。ウクライナには、50年代まで反政府武装グループが存在したのは、歴史的な事実である。
いま進行しているのが「ウクライナ革命」だとするなら、その「革命」は国民の統合と生活にとってきわめて危ういものだ。
「クリミア」と「コソボ」
もう一つは、領土主権と民族自決の相克である。ウクライナの領土主権を尊重するべきことは言うまでもなく、一方的な領土の変更は許されない。だが一方、クリミア自治共和国で多数を占める民族が自決する権利もある。この二つの葛藤は慎重に考慮されねばならない。他国による領土の一方的「併合」は、「独立」とは別の問題となる。
クリミアで現在進行している状況は、08年のセルビア共和国のコソボ自治州がNATO・EUの支援の下、住民投票の圧勝により独立宣言したときと酷似している。当時、欧米各国はすぐにコソボ独立を承認したが、セルビア共和国は独立を認めず、ロシアなども拒否している。つまりロシアがクリミアで行っていることは、欧米がコソボで行ったことをなぞっているのだ。
深くつながる対等な国家
ウクライナはソ連崩壊の独立以来、親欧州と親ロシアで揺れてきたし、04年の「オレンジ革命」など政変もあった。経済も復興のメドが立たず、厳しい状況がつづいている。ウクライナにはEUとの関係強化への期待が強い。ロシアとは歴史的に文化的、社会的な深いつながりだけでなく、最大の貿易相手国、エネルギー供給国、最大の国債保有国である。ウクライナにロシア系市民が多いだけでなく、ロシアにもウクライナ系市民が少なくない。
もちろん、ウクライナはロシアの“弟分”国家ではなく、対等な独立国家である。だが、ロシアと完全に断絶したウクライナの存在はありえないのではないか。EU市場ともロシア市場とも関係改善した場合に、ウクライナの経済的成功の可能性があるのだろう。ロシアとEUとの貿易総額も13年は4600億ドルと米ロのそれの11倍と深いつながりがある。
ウクライナ・ロシア・EUの三者協議による政治的解決の可能性には、現実的基盤があるのだ。(14年3月20日記)
堀江則雄(ジャーナリスト)