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堀江則雄のブログ ユーラシアの風

ユーラシアの各地で起きていることについて思っていることを書き連ねる。

“プーチン2”になるか?

汚職、外交、領土・・・

 プーチン首相が5月からロシア大統領に返り咲くことになった。先の大統領8年間、首相4年間についで、さらに6年間という異例の長期政権になる。

 不正選挙疑惑や汚職の横行、大統領メドベージェフとのタスキ掛け交替による長期政権への強い批判が吹き荒れたが、プーチン首相は3月の大統領選で得票率63%の当選だった。だが、首都モスクワでは得票率は47%にとどまり、大都市での反プーチン気運の高まりを裏付けた。

 昨年12月の下院選挙で与党が大幅後退し、「プーチンなきロシア」を叫ぶ街頭デモがつづいた。プーチン氏はこれに相次いで手を打ち、巧みな選挙戦を展開したのだ。

 投票所でのカメラ設置など不正防止策、年金や公務員給料の引き上げ、野党との対話と知事などの公選制復活、汚職・腐敗防止の約束、欧米の内政干渉批判とナショナリズム鼓吹――。プーチン氏はテレビ会見もやったが、新聞寄稿の6つの個人論文で訴えた。

 このプーチン流「安定」の訴えが、有力な対抗馬もないなかで、多くの人に消極的ではあれプーチン支持をもたらしたのである。国民はざっくり言って、当面は「混乱」より「安定」を選んだことになる。

  しかし、再登場するプーチン氏をめぐる状況は、7,80%の支持率を誇った先の大統領時代とは様変わりしている。

 最も大きな違いは、反プーチンの強固な政治勢力が公然と登場したことである。

 不正選挙追及などを掲げて、中流層が台頭しているモスクワやサンクトペテルブルクなど大都市で数万人規模の集会がすでに6回も開かれている。こうした状況は20年前のソ連崩壊時代以来のことである。

 この政治グループには雑多な政治勢力が参加しているが、反プーチン政治勢力としては一致している。

 プーチン氏はこの政治潮流に常に目を配らなければならない。従来のように、側近をテコにして超然として君臨することはできないだろう。

 プーチン氏は内政で言う。「中流層が社会の多数派にならねばならない」、「システム化された汚職である。わいろで国家予算の10%が消えている」、「企業への国家監督の不透明さを打破すべきだ」。

 外交・軍事では――。「変わりつつある世界で、アジア太平洋地域の役割が高まっている。中国、インド、新アジア各国、BRICSとの関係を抜本的に強める」、「強くあることが安保の担保である。核抑止力は米国並みを維持する」。

 対日関係では――。「領土問題を最終的に決着したい。必要なのは双方に受け入れ可能な妥協だ。引き分けのようなものだ」。

 プーチン氏はこれまでの延長線上で、新政権を発足させる考えはないようだ。同氏を取り囲む内外の状況が、そうさせているのだ。

 そこに“プーチン2”がとりざたされる理由がある。

 だが、それは表面的な戦術を変えるだけなのか、それとも本質的な変化をもたらすのか――本当に“プーチン2”となるのだろうか?

 そのためには、既成概念にとらわれず、注意深く見ていく必要があるだろう。

リセットの兆しか?--日ロ平和条約交渉



 128日東京で日ロ外相会談(玄葉、ラブロフ両外相)が4時間半にわたって行われ、日ロ関係、日ロ平和条約問題で突っ込んだ意見交換があった。会談の中身は、この間の対立を際立たせる会談と違って、合意を目指そうとする両国の姿勢をうかがわせる、注目に値するものだった。交渉リセットの予兆さえ感じさせた。

 *領土問題などでの両国の立場は平行線だったが、平和条約交渉を「静かな環境のもとですすめる」ことで一致し、「双方が受け入れ可能な方策を探る」ことになった。

 *3月のロシア大統領選挙を経て5月の新体制発足から交渉を本格化させる。

 *係争の島での共同経済活動では「日本の法的立場を損なわないように努力する」。

 *昨年300億ドルを超えた日ロ貿易総額をさらに新しいレベルに上げる。

 *日本人向けビジネス・ビザの発給を簡素化する。

 *9月にウラジオストクで開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に両国が協力する。この地域での安全保障面での協力を推進する。

 この2年間の両国の交渉・会談とは様変わりだった。メドベージェフ大統領の国後訪問、一連のロシア閣僚の南千島訪問、「戦争の結果を認めるべき」というロシア政府の立場表明。これに対する「ロシアの不法占拠」、「許しがたい暴挙」といった日本政府の立場表明。対立だけがエスカレートしていた。

 交渉のリセットが求められていたのだが・・・。

 どうやら、両外相は「静かな環境で」平和条約交渉をすすめる姿勢を確認したようだ。

 なかでも注目されるのは、共同経済活動だ。ロシアと国境を接する北海道根室市が地域産業の活発化のために日本の参加を要請、元千島住民らも強く要望している。ビザ問題が日本の法的立場にかかわるのだが、その妥協の余地はありそうだ。

 この係争島での日ロ共同経済活動(漁業、水産加工、農業、観光)が本格化すれば、北海道東部を含む経済圏が成立し、状況は変わるだろう。

 日ロ貿易は長年停滞していたが、06年に100億ドルを突破、リーマンショクを経て11年に300億ドルを超えた。急成長ぶりだ。今後、ロシアからの原油、天然ガスの輸入の増加も必至で、シベリア開発の機械類輸出も本格化する。日ロ経済のつながりは強まるだろう。

 領土問題・平和条約を推進する底流は、それなりの流れになりつつある。だが、重要な視点がある。交渉が本格化すると両国の従来の立場に固執すれば再び暗礁に乗り上げるだろう。

 両国間の準平和条約とも言える1956年の日ソ共同宣言をベースにした真摯な交渉ができるかどうか――それが最大の問題だ。ロシア政府は「戦争の結果を認めるべきだ」という立場、日本政府は「4島返還」固執を脱却できるか否かにかかっているだろう。

 今後の動向を注視していきたい。





ダルビッシュ(托鉢僧)

イラン、ユーラシア

 日本球界のエース、ダルビッシュ有の米国メジャーリーグ入りが、巷の大きな話題となっている。異例な高額の契約金、期待されるマウンドでの活躍、端正なマスク・・・。

 投手ダルビッシュの父親がイラン人で、母親が日本人のハーフであることは、よく知られている。ダルビッシュは父親の姓を引き継いだものだ。

 この「ダルビッシュ」というのは、ユーラシアの歴史をひもといているときに、目にした記憶があった。調べてみると、ペルシャ語(イラン語)で「托鉢僧」とか「修業僧」の意味だった。

 「ダルビッシュ」はイスラームのスーフィーズム(神秘主義)を広げるために各地を放浪していた。13世紀ごろから近代まで、今の中央アジア、イラン、カフカース、トルコの地で清貧に甘んじながら「アッラー」への帰依を人々に訴えてまわったという。

 投手ダルビッシュの姓名がこのペルシャの“托鉢僧”とどんな関係があるのか詳らかではないが、この日本国籍をもつ“托鉢僧”が米国球界で活躍する姿を見たいものだ。

 そのイランの核開発疑惑をめぐる欧米諸国の対イラン制裁で、緊迫の度が強まっている。

 イランの核兵器開発疑惑はかねてから問題となっていたが、イラン政府は核エネルギーの自主開発であり、核兵器開発は全面否定している。だが、今回濃縮ウラン技術の開発で、米国などが核開発疑惑は深まったとしてイラン原油の禁輸措置をとり、EU(欧州連合)もこれに加わることになった。

 イランはこれに強く反発し、中東原油のほとんどが通過するホルムズ海峡の軍事封鎖さえ対抗措置として示唆している。

 米国、EU27カ国、それに日本がこのイラン制裁包囲網に参加するシステムができあがりつつある。10年以上前だったら、この包囲網は完璧な圧力だったろう。ところが、新興国が台頭する今日の力関係は様変わりしているのだ。

 ユーラシア各国がこの経済圧力、制裁戦略に異議を唱えているのだ。

 イラン原油の30%を輸入している中国は「制裁や武力による威嚇は問題の解決には役立たず、状況を一層悪化させるだけだ」と批判、イランからの原油輸入を続行している。

 イランの関輸出の20%を占めるインドは米国の対イラン制裁への参加要請を拒み、「我が国はイランから石油を買い続ける」と表明している。中国、インド両国とも原油代金でのドル以外の決済を求めていくとしている。

 ロシアも制裁や軍事的緊張に反対し、外交的解決を求めている。カザフスタンはイランとの石油バーター貿易を行っており、これを続行する構えだ。トルコもイランへの経済的、軍事的圧力は問題解決にならないとし、イランとの仲介を申し出ている。

 この点で注目すべきなのは欧米の制裁に反対しているのが、トルコを除き、上海協力機構の加盟国あるいはオブザーバー加盟国であることだ。イランもオブザーバー加盟国だ。

 ユーラシアをゆるやかに束ねる上海協力機構は地域の紛争や軋轢の外交的、平和的解決を掲げており、それに沿った共同歩調をとっているのだ。







 2012年を迎えたロシア、ユーラシア各国は新しい展開をみせている。下院選挙で「変化」を求める国民の声が噴出した新プーチン体制のゆくえ、脚光浴びるウラジオストクと「ユーラシア連合」の二つについて報告したい。

                      

「変化」求める国民と新プーチン体制

 12月の議会下院選挙(比例代表制、450議席)は、ロシア国民の政治意識が地殻変動を起こす予兆を感じさせた。この3月の大統領選も波乱含みだ。

 プーチン首相が党首でメドベージェフ大統領が候補者名簿トップの与党「統一ロシア」が事実上の敗北を喫したのである。得票率が前回の643%から493%に激減、辛うじて過半数の議席を占めるにとどまった。ロシア共産党が得票率192%で議席を倍増させるなど野党が伸長した。

 与党「統一ロシア」は中央と地方の政治家、幹部官僚、国営企業や大企業の幹部らが集まった“利益共同体”の「権力党」とされる。網の目に張り巡らした行政機構や国営テレビを総動員して、集票活動を行った。行政圧力と言論統制である。それにもかかわらず、得票率は半分に達しなかった。

 しかも、各地で不正選挙が指摘され、関係者は「実質の得票率は30%台だった」と言う。

 2000年のプーチン登場以来、こうした政治構図は初めてのことだ。ロシアのネットでは、「プーチン時代の終わりの始まり」とか「与党の敗北だけではなく、プーチン多数派の崩壊」という分析が出ている。

 不正選挙に抗議する大規模な集会デモが、モスクワはじめ各地の大都市で数万人から数千人の規模で連日行われている。そこで叫ばれているのは、「プーチンなきロシア」である。

 こうした反プーチンのうねりをもたらした背景には、二つある。ひとつは、汚職・腐敗の蔓延に対する抗議である。与党を盛り上げるテレビとは異なって、インターネットでは「(与党は)ペテン師と泥棒の党」というキャンペーンが飛び交った。紙幣にもこのスローガンが書き込まれ、ひそかに広がった。友人のモスクワ市民から添付メールで送ってきたのは、10ルーブル紙幣だった。

 もうひとつは、プーチン=メドベージェフ双頭体制がポストを交換するだけで今後もつづき、プーチン氏が結局20年以上も権力の座につきかねないことへの強い反発だ。権力の私物化はもうご免だというわけだ。

 もちろん、プーチン風強権政治や金融危機による経済格差の拡大への不満と不信も底流にある。

 プーチン首相はこうした反プーチンのうねりに抗して、3月の大統領選への出馬を再表明した。ただ、軌道修正を図っている。

 選挙母体を国民から批判を浴びた「統一ロシア」から、より幅広い運動体を組織している「全ロシア人民戦線」に変えたのは、その現れだ。さらに、年金や教育、医療への国庫支出の増加など政策の修正、人事の刷新などを検討しているという。

 反汚職・反プーチンの下からの噴出は、この10年来で初めてのことである。ロシアの政治構図は様変わりだ。3月の大統領選でプーチン首相が大統領に返り咲いても、これまでとまったく異なった政治風景のなかでの再登場となるだろう。「プーチン2」がどうなるか、注目されるところだ。

脚光浴びるウラジオと「ユーラシア連合」

 2012年には、日本海を隔てた沿海地方やウラジオストクが脚光を浴び、ユーラシア各国の経済統合がすすむ画期的な年になるだろう。

 APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が9月、ウラジオストクで開かれる。APECが創立されて以来、ロシア開催は初めてだ。加盟21カ国、地域の首脳が一堂に集まり、世界政治の焦点になる。

 ウラジオストクの街は、荘がル役3000億円が投入され、一新されつつある。首脳会議が開かれるルースキー島は、立派な会議場、ホテル、リゾート施設が建設されている。

市内と同島を結ぶ3100メートルの連絡橋もほぼ完成している。この海上を渡る橋は、アジア地域で最長のものだ。ルースキー島は「東のクロンシュタット」と言われ、国境警備隊が駐屯しているだけの島だったが、リゾート地域として開発されているのだ。

 ウラジオストクは日本などアジア太平洋に向けた石油、天然ガスの輸出拠点としても注目を集めている。東シベリアからの全長4200キロの石油パイプラインから郊外のコジミノ製油・積み出し港に流れ、石油輸出が始まっている。

 サハリンや東シベリアからの天然ガス・パイプラインが昨年夏、ウラジオストクまで完成。ここからLNG(液化天然ガス)として輸出するとともに、このパイプラインを朝鮮半島を縦断して釜山まで敷設する計画が具体化している。

 日本とロシアの貿易総額も昨年300億ドルを超えた。5年前、100億ドルを超えて注目されたが、急速な成長である。

 こうした北東アジアの新たな胎動とともに、その向こうのユーラシアでは、経済統合の動きに拍車がかかっている。

 昨年、ロシア、カザフスタン、ベラルーシ三カ国の「関税同盟」(関税の削減・撤廃)が発足、この1月から自由貿易を柱とする「単一経済圏」に発展した。

 ロシアはこの現実を踏まえて「ユーラシア統合プロジェクト」(プーチン首相)を動かそうとしている。この三カ国にキルギス、タジキスタン、さらにはウクライナを加えて、「ユーラシア連合」を結成しようとしている。旧ソ連8カ国は昨年秋、「自由貿易地帯条約」に調印している。

 今年は、そうした経済統合の本格的スタートになるだろう。

 米欧各国が金融危機や債務危機で苦闘しているなか、ウラジオストクの再生とユーラシアの統合の動向は日本だけでなく、世界的にも影響を与えることに

ユーラシア(Eurasia=Europe+Asia)。この言葉はあまり聞きなれない。そして漠然としている。このブログでは、ヨーロッパ半島を除くユーラシア大陸を指すことにする。それは、ほぼかつてのモンゴル帝国の版図をカバーすることになろう。

そのユーラシア地域が今、沸き立っているのだ。

爆発的な経済力を発揮する中国やインド、エネルギー資源大国として復活したロシア、史上初めて独立や自立を手にした中央アジアなどのトルコ系諸民族、”アラブの春”が吹き荒れるイスラーム各国、経済台頭の目立つASEAN各国ーー。

このユーラシア沸騰について日本に伝えられるニュースは断片的であり、ある意味で偏っている。その本当の意味、歴史的な意味が捉まれていないからだ。

このブログはそうした鼓動、胎動を伝えつつ、歴史的な射程からその意味を考えていきたい。

それは今の出口の見つからない閉塞的な日本の状況をどう打開するのか、大きな視座を提供してくれるはずだ。そう期待したい。

そのつもりで書いていきたい。反論や議論も期待したいのだ。