天使の悪戯45 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『お嬢さん、さっきから・・・バイクにずっと後をつけられてます。』


運転手さんが、ミラー越しに彼女に話しかける。


『あーもう歩、気付いちゃったみたい・・・予想以上に早いんだから』


車にピタリとついたバイクを確認して、頬を膨らませながらも・・・嬉しそうな表情。


彼女は、間違いなくこの状況を楽しんでいる。


『奈緒ちゃんは、やっぱり特別なのねぇ。』


隣に座る私にニッコリ微笑むと、携帯を私の膝上に乗せる。


『歩に掛けて、替わってもらえる?』


彼女の顔を横目で見ながら、携帯を掴み慌てて歩君に電話をする。


すると・・・1コールもせず、聴こえてくる歩君の声。


『奈緒!すぐに車から降りろっ!』


走ってる車から降りろって言われても・・・無理だよ・・・


私が言葉を発する前に、携帯を奪われる。


『邪魔しないでよ、歩!はっ?ドーナツ?あんた何言ってるの?』


クスクスと楽しそうに笑い、更に歩君を挑発する。


『だって、歩・・・最近、着信拒否ばっかだし・・・会いに行っても泊まっても・・・


帰れって言うし・・・寂しかったんだもの・・・』


ウソ泣きのように声を悲しげに出し、私を見て舌を出し笑う。


確実に・・・彼女は歩君を弄んでいる。


でも、やっぱり彼女とはそういう関係なんだ・・・かなりショックだよ・・・


『だから、奈緒ちゃんと私仲良くなりたいなってね・・・』


だから・・・って意味が分からない・・・恋敵と仲良くなんて、できないよ。


『ねぇ、実は私・・・弟よりも妹が欲しかったんだよね。』


全く分からない・・・妹が欲しかった?って・・・えっ・・・んっ?どういうこと?!


『何?歩っ、こんな綺麗な姉に向かってババァは無いでしょ♪』


あね・・・アネ・・・姉!!!はぁー・・・うそぉ・・・お姉さん?


隣に座る彼女を見る。


言われて見れば・・・そっくりな目元・・・鼻・・・口・・・


私は、とんでもない勘違いをしていたのだと気付く。



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