天使の悪戯44 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『奈緒っ・・・捕まったから覚悟して自分から車に乗ったの・・・


で、私ここまで走って・・・』


涙ぐむ彼女の手は震えていて、奈緒の事が本当に心配なのだろう。


俺の横に居た成は、既に携帯を片手に周りの奴らに何か指示を出している。


俺は、俯き息を整えようとしてる彼女に近づき尋ねる。


「奈緒を連れってた野郎に心当たりは?」


少し落ち着いてきたのだろう・・・


彼女は周囲をキョロキョロと見回してから、俺の顔を見て


『あっ・・・あの・・・奈緒の彼氏さんですか?』


俺が、あぁ・・・と頷くと


『野郎じゃないですっ・・・奈緒を連れってたのは・・・言ってもいいのかな・・・』


ふざけてんのかっ、この女。奈緒を助けなきゃなんねぇのに、何ほざいてんだか。


「さっさと言えよ!知ってる奴か?」


声が大きくなった俺に、少しビビリながらも、彼女は言いづらそうに話し出す。


『奈緒が今朝、話してて・・・だから断定はできないけど・・・たぶん・・・


彼氏さんの浮気相手?だと思います。』


周囲のざわめきが一瞬で止まり、全員の視線が俺に注がれる。


「はぁ?浮気相手?・・・誰だよ、それ?」


俺のセリフに、彼女は疑いの眼差しを向ける。


『だって、腕を組んで車から降りてきたって、ものすごく綺麗な人で・・・


奈緒は、ショックを受けてて・・・で、何も聞けなかったって・・・』


何だよ・・・それっ・・・俺にそんな女いねぇつうの・・・


奈緒と付き合いだして、遊んだ女などいない。


まして、腕組む事など、どうでもいい女相手に、したことねぇよ。


『歩、わかった。奈緒ちゃん乗ってる車、見つけたってさ。今、後つけさせてる。


たぶんセンター街に向かってる。』


成が俺に近づき耳元で告げる。


「で、誰だよ?」


苦笑いを浮かべる成。


『いやぁ・・・それが・・・アカリさん?・・・だって話なんだ・・・』


「あぁ?姉貴?」


成が・・・口にした名前に・・・俺は姉貴の顔を思い浮かべて・・・怒りで震える。



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