輝ける闇 | 将棋

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将棋について
将棋上達法(将棋の初段を目指す方への提案・サポート)

開高健さんの小説『輝ける闇』を読んでおります。


作品の内容を簡単に紹介しますと以下の通りです。

「1968年作ベトナム戦争へ取材に赴いた主人公による

一人称で物語が進む。この作品は開高健が取材のため

南ベトナム政府軍に従軍した際、激しい戦闘に巻き込まれ

奇跡的に生還した体験がベースになっていると言われ、

よって内容は主人公の心情の変化に主眼が置かれる。

戦況や周囲の環境、主人公の心情が変わるに従って、

主人公と戦争との関わり方も変化していく。」


ちなみに私の開高健氏のイメージは「アラスカ辺りでシャケ釣って、

自分でさばいて、金属製のマグカップにウイスキー入れて、

シャケをつまみにニコニコしながら旨そうに一杯やるオヤジさん」

そんなイメージですが、れっきとした芥川賞作家で御座います。


この小説の中でアメリカ人兵士と定期的に中国将棋を指すとの

シーンがあり、将棋についての記述がありましたので紹介します。


「ここの将棋は中国将棋である。駒は丸くて兵や炮と漢字が書いてある。

日本将棋に比べるとルールはずっと単純である。西洋将棋と同じで敵から

とった駒をその場で味方にの駒として活用することがないのである。

あくまで<敵は敵>であって、とったら死んでしまうのである。兵をうごかし、

炮をうごかしながらしきりに私は日本将棋のことを考えている。一瞬で

<敵は味方>となるその非凡な精妙さと辛辣さのことを考えている。

いったい誰があの比類ないルールを編み出したのだろうか。敵からとった

ばかりの駒をすかさず味方の駒として敵陣へうちこみ、たった一線を越えた

だけで歩がたちまち金となる。駒はおかれる場所で敵にもなれば味方にも

なる。いつごろの戦争の経験から編みだされた知恵だろうか。」中略


「ビンに手ほどきされて私はこの将棋を知ったのだが、日本将棋の複雑さの

ことを考えて、いささかバカにした。いまでもどこかでそう感じている。

けれど、何回やってみても私はやぶられる。どれほどルールが簡単でも

1つの将棋にはそれ自体の広さと深さがあって、不屈の定跡がある。

それを知らないで私はルールのちがう勝負を挑むものだから目もあて

られない。包囲は破られる、退路は断たれる。中央突破は砕かれる。

かろうじて待ち伏せしようとたくらむと、たちまち看破されてしまう。

汗で朦朧となってくる。」


勝負は主人公が8連敗したあと、お情けで2回程勝たせて貰った

と記述があります。


開高氏の日本の将棋の実力は不明ですが、将棋に対して

なかなかの考察であると思い紹介したものです。