~From.裕~ -80ページ目

『空の色は幸せの色』 3

午後の仕事が始まった。
話しを聞いて藤本を少し身近に感じられた。部屋に入るなり妙に穏やかな雰囲気に警戒するかの様に立ち止まる中、昂太の異変を感じる成田。小、中、高と一緒で、大学は別だったが、何かと繋がって居る息の合う親友、成田晃(あきら)だ。
『らしくねぇな…何かあったか?』
机に軽く座り肩を叩くと同時に昂太がため息ひとつ
『なぁ~に黄昏れてだよ…彼女と喧嘩…する彼女が居ないってか…終わったら付き合いましょうか?昂太君?』
『…』
『こりゃ重症だな…何時もの店で。じゃあな!』
気合い入れるように肩を2回程強めに叩き部屋を出て行った。そんな様子を見て居た藤本が近づき見えないように右手を付き仕事の話しに託け
『お姉さんの事で何かあった?まぁ、俺には関係ない事だけど…彼女…思い詰めた顔してたからちょっと気になって、あっ!誤解するなもう俺は』
『藤本さん!』
『はい。』
『今日3時に上がらせて下さい。それと俺、これからは定時に帰ります』
『えっ?…まぁそれは仕事次第だけど』
吹っ切ったような態度で宣言すると、真剣な表情で書類手に走って部屋を出て行った。詳しく聞く事も出来ずに気にしたまま見送った。

『空の色は幸せの色』 2

階段の途中に居た数人が、勢い良く走り寄り立て続けの質問を、来たか。そんな顔で受け止めると
『長くなる話しだし、俺がここで話すのもなんだし…』
やけに勿体振る藤本は部下の態度を楽しむ顔。だが、出て行った二人の姿を見つめる顔は何処か陰りがあった事に誰も気付かなかった。
『落ち着け。彼女は「松浦茜さん」まあ、早い話しあの二人は姉と弟だ。そして、俺を振った女性だ。…(ここまでかな)』
『姉弟(きょうだい)~!』
『先輩にお姉さん居たなんて~しかも過なりの美人…』
『似て無いっすね』
『似てるだろう。整った美術品の様な涼しげな顔立ち』
松浦の後輩、溝口と蒼井の会話に近くに居た女性達ももう見えない二人の後を見つめ
『確かに…絵になる二人』
二人に見せられボーッと見つめる部下達をため息混じりに笑う藤本が、慌てて会釈をした。
『魔術にでも掛けられた様ね。…あの女性が松浦君のお姉さん、茜さんか…なるほどね』
『結木さん…何かご存知なのですか?』
『まあ。ちょっとだけね…姉弟か。余り似てないか』
この会社の社長婦人、副社長の結木仁美。過なりやり手の大人の女性で美人だが、憎めない可愛さを持つ魅力的な女性だ。
『似てます…自分には鈍くて頑固で…こっちが引くしかないような…』
『そうか…で、彼女に振られたの?弟が原因で?』
『弟ですかね…昔の事です…』
『そうでもなさそうだけど…』
意味ありげな会話を交わし、部下達が魔術から溶ける気配を感じたのか寸前でその場を後にした。
『振られた?』
今更話しを振り返すなと伝える間もなく詰め寄られ、昼食をとりに連れ出した。
食べ終わるのを待っていたかのように話しを切り出す溝口。
『何でお前達に俺の失恋話する必要がある訳?聞いてどうするの…』
話す気を無くしている藤本の手からコーヒーカップが落ちそうな勢いで溝口が反論。仕事が出来、容姿端麗、男から見ても惚れそうな藤本を振る人が居る。完璧に思える男でも振られるという現実、藤本にも同じような過去がある事に興味を持った。諦めたのか熱意に負けたのか、呆れたのか、懐かしむ様に話し出した。
『彼女と知り合ったのは大学の学園祭。友達に強引に連れて行かされた演劇だった。内容は大して面白くも無かったが一際目立つ女性が居て、まぁ俗に言う一目惚れってやつかな…ただ、同じ舞台に居た一人の男が気になって、嫌な直感だったんだけど』
『綺麗だもんなぁ。舞台似合いそうですよね』
『その後、公演を気にして探していた時に聞いたんだ。彼女は条件付きの特別出演だったってね。どうにか会う事は出来たけどあの頃は俺も仕事を任され始めてたしなかなか会えなかった』
『条件付き?仕事って…』
『あッ!その時俺は24歳社会人、彼女は21歳大学3年だった。条件は…アイツとならって事…いやッ、そこまでは知らない』
意味ありげな微笑みに引き寄せられている、まるでお伽話の続きを待つ子供の様な表情が可愛いと思い続けようとしたが…
自分では既に過去の思い出として忘れていた事だった。だか、「昔の事です…」「そうでもなさそうだけど…」そんな結木の言葉が過ぎった。昂太が入社して来た時再会し蘇る想いを感じ、茜に再会した今。忘れた想いの懐かしい思い出のはずが、他人に話す事で愛しさに変わっている事に気付き始めた。
『何度か会って気持ちを伝えようとした時に紹介されたんだ。彼ですってね』
『彼氏がいたって事ですか?』
曖昧な顔でひと息ついた後の藤本らしくない豪快な笑いに少し身を引いた。
『彼氏だと紹介されたのがなんと…アイツ松浦昂太だったんだ。後で弟だと聞かされ重ね重ねショックだったよ。彼氏と弟どちらを演じてたのかやけにリアルで、アイツは良い役者になれたろうな…いや!何でも無い。代役立てられてまで断られたって訳…』
冷静な藤本と違う様子にそれ以降言葉を失った。自分でも妙な雰囲気になっていると感じてはいたが、予想外な感情を認めたくないと思う自分に少し動揺していた。

『空の色は幸せの色』1

それは、春穏やかなお昼どき。

 賑やかに動き出したオフィース街に、一際目を奪われる鮮やかな彩りのビル。
資料片手に話しながら階段を下りて来る数人の男達。昼休みの女性達の視線を集めるのも無理もない、硝子から差し込む陽射しに良く映える。
『昂太!(こうた)』
見つめる視線も、真剣な会話も、一瞬の時間(とき)を止める女性の声。視線集めたのは突然の声だけではなく、綺麗なその容姿だった。
名前呼ばれた男、松浦昂太に仲間達が問い質そうとした時
『茜…』
驚きながら昂太と女性つまり茜を見返すと、ニッコリ笑う茜に射ぬかれたような顔の男達。落ち着いた上司らしき男、らしきではなく課長の肩書きを持つが、社内では肩書きで呼ばれるのを拒む藤本が近づき声を掛けた。その事に新たな驚きを呼んだ。
『久しぶりだね…俺に逢いに来てくれたのなら嬉しいのに』
『ごめんなさい。私、過去は引きずらないの』
『相変わらずサッパリして…俺としては忘れたくない女性(ひと)だけど』
知り合い?でも名前呼んだのはコイツ…そんな理解不能な仲間達をよそに、ちょっと不機嫌ながら素早く話し出して居る二人の下へ
『何してんだよ』
『何?って…あなたに話しがあって来たのよ。お昼休みだし良いでしょ』
動じない態度と上司、仲間達の手前焦る姿にうっすら微笑み
『もしかして…照れてる?』
『あのな~…話しなら家で』
『時間が合わないんだから仕方ないでしょ。最近あんた遅いし、それに時間が無いの!』
声を荒げるのを聞き、二人が熱くなる前に間に入り昼休みをとって来るように外へ出した。




調子に乗り始めようかと淲……
お付き合いいただけたら、と。

だって!姿観られなくて
水不足なんです湜