~From.裕~ -74ページ目

笑顔のバロメータ

今日も良い笑顔だ
楽しんでいるんだ
何気ない朝の挨拶しながら
見つける元気のバロメータ

特に話しをしたわけじゃない
二人だけの思い出が
あるわけじゃない
だけど気になって
飾らない笑う君が
誰とでも変わらない
自然な態度の君が

つまりは
好き…だったってことなのかな

知らずのうちに
好きになって思い出にして
扉の向こうへ閉じ込めようとしてた
ほんわかとした柔らかな想い

だったのに…

飾らないその笑顔は
化粧をしてるからか
ほんの少し大人っぽくて
迷う自分を
閉じ込め掛けた
柔らかい想いが声をかけていた

初めて俺だけに
向けてくれたその笑顔
思い出がないことが
寂しかった

思い出に閉じ込め掛けた
柔らかな想いを
少し確かな想いに変えてみようか
もう一度
その笑顔を俺の元気に
君との思い出を
作ってみようか

また、会おうね

胸の奥を
飾らない笑顔の君が
ざわつかせた

雨上がりの微笑み

雨上がりの西の空
太陽を隠していた雲を
鮮やかな色に染める
あんなにも
寂しいそうに泣いていたのに…

どんなに泣いても
見上げてはくれない
足早に駆け抜けるだけ
どれほど泣いたとしても
声を掛けてはくれない
うっとうしく思われるだけ
待っている
樹木や草花さえ
羽根を休ませる鳥達も
飛べないと騒ぐ

雨の粒少なくなり
太陽の笑顔見えだすと見上げる
雲の間から覗く光
迎え入れ笑う

雨上がりの西の空
邪魔をした雲さえ
鮮やかに染める太陽の光
微笑んでいるように優しく
包み込むように穏やかに
励まされる…

君と同じ
まるで君そのものだよ

何が出来るだろう
ひとり頑張る君に
何を伝えたら良いだろう
ひとり抱える君に
ただ側で見守るだけなのに
いつも最後は
ありがとう…って微笑む君に

雨上がりの西の空
オレンジに染められた微笑み
包んでみようか
君をまるごと
雲が君の邪魔をするのなら
迷わないように手を繋ぎ歩こう
いつでも君の味方だと

あの夕日のように
君を包みに行こう

『空の色は…』~スタート

門の前で先生が二人、園児と挨拶しながら迎えていた。思ったより父親が出勤しながら送って来ることを知り少し安心した。
自転車から降りると元気に先生と挨拶。
『来たわね昂太。なかなか似合うじゃないのその自転車』
『朝から嫌味かよ』
『あら~褒めたのに…抵抗合っただろうに頑張ったなって…照れんなよ』
園長の千草さくらの娘で先生をしているゆり。茜も昂太ともに子供達の先生というより歳の離れた姉、良い相談相手だった。
『空ちゃ~ん…誰?あっ、空ちゃんのパパ?』
『昂太だよ』
『お、おい、空…』
軽く行って来ますの挨拶をして友達と話しながら歩き出すのを止めようとする昂太に
『心配すんなよ。僕が話しといてやるよ。じゃ、行って来ます』
『あッ…行ってらっしゃい、宜しくお願いします青くん』
少し優越感を漂わせた後ろ姿を見送る微笑み二つ。
『じゃあ…お母さん達の方は私が話しをしてあげようかな!昂太君』
意味ありげに微笑むゆりの視線の先に、これもまた興味津々に声を掛けるタイミングを図るような微笑みがチラホラ…増えだす。視線合わさないように愛想笑いをぎこちなくすると
『これ、預かっといて。じゃあ俺行くは…後、宜しくゆり姉』
流石に子供達無しでこれに乗る勇気はまだ無い。自転車を預け駅迄5、6分走る方を選んだ。
『こうちゃん!』
園庭から歩いて来る園長のさくらへ右手を上げ
『おはよう、さくらちゃん。宜しく~行って来ま~す』
『そんなに急ぐと転ぶわよ~行ってらっしゃい…忙しい子ねぇ。大丈夫なのかしらね』
『大丈夫じゃない、アイツが頑張り過ぎなければ』
『それが心配なんじゃない…あの子人一倍頑張る子だから』
走り行く後ろ姿を見送りるさくらに、今はこっちを片付けないとねと、面倒そうなゆりの先にあの微笑む人達がてぐすね引いて待っていた。
『あの馬鹿。先生って呼べって言ったのに…』
『急には無理よ』
『もう~昂太に甘いんだから』
『ほら、来たわよ。皆イケメン君が好きなのね』
園児の母親達に愛想笑いをしながら
『もう、何呑気な事を』
眉間にシワを寄せるゆりと母親達を穏やかに見つめるさくらの笑顔は、秋の日だまりのようにホンワカと暖かく春の風が吹き抜けるように和やかにする。
『そんな怖い顔しないで。昂ちゃんみたいな男の子をイケメンって言うんでしょ?』
『まあ…そうかな…』
『やっぱり、思った通りね!良い男になるって思ってたのよね…良かった』
両手を口元で軽く叩き嬉しそうに立ち去って行く後ろ姿に、何が良かったのか問い質す間も無く、声を掛けられ…
笑顔を引き攣らせながら
「来たか」覚悟した。
勿論、昂太の事。
茜と昂太は姉、弟でこの園の卒園後も何かと相談相手になっていて、母親の海外赴任中預かって居る。まあこんな感じでザクッと話すと。
昂太が父親で無いことがそんなに安心顔になる程?
どんな対象として受け取ったのだろう。疑問とちょっとした不安が残るゆりの笑顔だった。
 いものように会社に着いた昂太だったが…
雰囲気はいつもの、ようには行かなかった。
勿論、話したのは溝口。
蒼井がこれでも抑える努力は…溝口の勢いに抑え込まれていた。盛り上がる同僚、後輩を遠巻きに見て楽しんでいる晃の後頭部を平手打ち
『楽しんでんじゃねぇよ』
『いてッ!乱暴な挨拶だこと』
『お前なぁ…人事だと思って』
ニヤッ!と笑い
『だって人事だもん』
気が抜けたような顔でデスクに座る昂太を溝口が見つけると集まって来た。煩さそうな顔の昂太を見兼ね
『これから暫くの間、松浦は新米パパをすることになったんで何かと迷惑掛けるが宜しく頼むは。大目に見てやってくれ』
挨拶しろと立たされ一言伝えながら頭を下げた。それだけ?松浦らしいと笑って収まった。
流石に上司でる藤本には一言で済ます訳にはいかない。仕事に支障を与える事は避けようと思っているが…何が起こるか未知数。
緊張した面持ちで藤本のデスクの前に立った昂太を包むような穏やかな微笑みで見つめた時
『聞いたわよ。パパになったんだって』
『結木さん』
立ち上がる藤本と更に緊張する昂太の慌て振りに笑いながら書類を手渡した。
誰から…ゆっくり溝口を見ると慌てて首を振る。そのまま視線をずらすと
「アイツ…」
悪びれる事もなく左手をこめかみに当てWink
「先に話しといてやった」
そう言っているような笑顔の晃から視線を外し、結木の言葉を訂正しようと慌てる昂太を笑う二人。話はきちんと通じていて特別扱いするから頑張るように言われた。
昂太の会社は結木浩二郎の経営する結木建設。妻である仁美は子供用の遊具などおもちゃを製作、輸入もしている。その試作品等を幼稚園で使って貰い参考にさせてもらっている中の一つがさくら幼稚園なのだ。
昂太は建設会社の設計で面接をしたのだが、何故か仁美の部所Chilby(チャイルビー)からの合格通知。
「女性ウケする見た目のいい子の方が仕事がスムーズに運ぶのよね」
単なるイケメン好きと言われそうだが…そんな理由もあって集められていたりする。
設計志望の昂太達は子供用のおもちゃハウスや、Dollハウスなどの図面を引いているが、中には幼稚園を設計した先輩もいるらしい。勿論、Hobby関連部所を希望して入社する者も居る。その一人が成田晃。そして溝口一平もその一人だった。
子供絡みのこととなれば大目にみない訳にはいかない。子供あっての我社…と仁美は思っていた。
そしてこれからは昂太がさくら幼稚園の担当になるように言われ、返事をする間もなく
『宜しくね…パパ』
Winkし立ち去る仁美の言葉を投げられた昂太から視線逸らし皆がクスッとする中
『まあ、頑張って』
藤本の顔は堪えきれずしっかり笑っていた。
付け加えるように、いつでも会社の託児所を使うようにとドアからちょこっと顔を出して笑っう仁美に男達は遣られた。
仕事は何事も無く順調に進んだが気のせいなのか視線、対応がどこかシックリしない昂太は、ふと呼び名が「パパ」にならないよなと本気で不安になった。

だいぶ陽が高い。
帰宅途中の学生、塾に向かう小学生、買い物帰りの主婦…街の色も風景もまるで違う、通い慣れたはずの道を急いだ。
 帰り際、何か言いたそうな気配を感じ
『言っとくけど。俺はパパじゃないからな!』
釘を刺す昂太の言葉は摺り抜けただろうと思える笑顔達に見送られて来た。
仕事帰りの父親と手を繋ぎ帰る園児もチラホラ…まだ元気な声も聞こえている中で
『あっ!空ちゃんパパだよ』
今朝会った空の友達。ここでもかよ青は話をしなかったのかと諦め顔でため息。青はちゃんと話したが
「パパの代わり」
そんな一言がピンポイントでインプットされてしまったらしく、伝わりきれなかった事に不本意な顔の青。それに比べ嘘でも「パパ」と言う憧れる言葉が使える人が居ることが嬉しく機嫌の良い空。対照的な二人に複雑な表情のまま、まずは青の努力は認めお礼を言い励まし、嬉しそうな空の理由を知りむやみに否定も出来ず片手で抱きしめ苦笑いの昂太だった。
自転車を押しながら青の元気が無い本当の理由を話すゆり。
夕方5時頃から手伝いに来て居る陽(ひなた)が休みで会えなかったから。
ゆりの高校の後輩で大学3年保育士を目指している戸上陽(とがみひなた)。子供達と走り回る元気で明るく笑顔の可愛い「女の子」という感じの女性。
ゆりに本心を突かれ照れ隠しで怒る青に謝った顔は笑顔だった。不機嫌なまま自転車に乗り挨拶もしないで視線逸らす青の分まで、空が元気に挨拶をした。
『何とか話はしたけど、父親じゃないあなたに興味があるみたいだからまあ色々と覚悟しときなさい』
『覚悟って?おい!ゆり姉』
子供達の方へ歩き出していたゆりが慌てて戻り顔に指を指して
『それ!言ったよねッ!私の事は先生付けろって!それに、園長先生だから…変に親しいと煩さのよ、ひいきだとか何だとか…解った?先生だからね』
煩さそうな顔でしかたなしの態度で返事をする昂太を、心配そうに見る空とちょっと嬉しそうな顔の青。
当分の間は何処へ行っても興味の視線で観られ、その相手をすることになるのだと覚悟するしかないと諦めた。
『な~んか、面倒くせ~な』
自転車を漕ぐ力に任せに吐き出した。

夕食、入浴を済ませ明日の用意をしながら最後のひと騒ぎの青と空。元気な奴らと微笑みながら後片付けと朝食、お弁当の準備をする昂太が時計を見て二人を止めた。
パソコンをテーブルに置くと茜からの交信を待った。
画面に姿が映ると再びテンションが上がり、同時に話出す嬉しそうな三人を少し離れたソファーに座り見つめる昂太も嬉しそうな顔。
『昂太が髪を結んでくれたの。凄く上手なんだよ』
『そう…良かったね可愛くして貰えて…』
「自分もして貰ってたなんて言えねぇか」
笑いを堪え聞いて居る昂太を、ゆりに怒られた話をする青の言葉が焦らせた。助けるように
『昂太の卵焼きってね、茜ちゃんと同じなんだよ。凄く美味しいんだよ』
青もその事には同感だと伝えると、少し動揺したような茜。昂太の抑えた笑いに振り向き不思議そうな二人。
「そりゃそうだろ。俺が教えたんだからな」
『茜ちゃんが教えてあげたの?』
見兼ねた昂太が笑いながら教えて貰った事にして話すと、ごまかしながら話を合わせる茜がまた笑いを誘った。
おやすみの挨拶をして交信を切りベットへ入った子供達を見守り、再びパソコンで一言メールを送った。
「母親の面子崩さねぇよ。それと寂しさごまかしに、飲み過ぎんなよ」
『何よ…ハッキリ言うな…バカ昂太』
堪えていた茜の眼から涙が零れた。