帰郷~理由2~
梯子の上で枝を切っている父親を見るのは久しぶりだった
祖父が全体を見ながら指示を出し
二人の職人姿にちょっと見とれた
1時間位経った時
『ヒロ君じゃないの…そんなとこに居ないでこっちにいらっしゃい』
おばさんに見つかった
すんなり行くより気まずい
相変わらず無愛想な態度のじいちゃん
何処か嬉しそうに笑い頷く父さん
無言のまま仕事を続けて
無言のままただ見ていた
終わったのか片付け出した
分からないながら手伝い出すと
『使え』
軍手を投げてきた
『怪我をするから、使いなさい』
片付けながら父親が後付けをした
全て終り車に乗る二人に
自転車に乗ったまま
仕事終わりの汗と土で汚れた作業着と
日焼けが取れない浅黒い顔が格好良く
そう思う自分が照れくさく視線反らしたまま
『小さい仕事だけど任せて貰えるようになった。責任は重いけど何とかやってる
人間関係も多少は色々あるけど
頼りになる先輩も
話せる奴も出来たし
逸れなりに楽しくやってるから…』
黙って聞いていた
『一番聞きたいのはお母さんだ。話してやれ』
微妙に頷きハンドルを前に向け
『じいちゃん…サンキュー』
背中越しだったが祖父が微笑んだのを感じた
そしてそれを隠すように
『仕事にでかいも小さいも無い…お前なりに精一杯やれ。男として人として恥ずかしくないようにな』
結局一度も視線合わせず
気まずさを消す間
その辺を一回りして帰ると言い捨て
自転車を漕ぎ出した
昨夜のように極普通に夕食を済ませた
ただ少し祖父の態度が柔らかくなっていたような気がした
母親が席を立ち片付け出すのを見て
『手伝うよ』
驚く母親からお皿とスポンジを取り洗い出した
嬉しさが伝わり俺の方が恥ずかしくなってくる
『男の子って父親に似て来るのよね…いずれは』
同時に振り向きリビングでくつろぐ二人を見た
『まぁ、多少は何だけど。年代毎に良い男よ
あら、嬉しくなさそうね?』
『微妙…』
『何事にも真っ直ぐに向き合って精一杯やり抜く
相手のことを分かろうとする優しさ
あの二人からの血筋よ
だから、自信持って歩きなさい
良いお手本が居るんだし』
真面目に聞いていたのに
『男の子はね母親に似ると可愛いって言われてるのよね
だ、か、ら、格好いいと言われるその顔は私の血筋…感謝しなさい』
『はいはい』
それなりの話しの後はなぜか最後はこうなる
恥ずかしさ隠し…
似てるかもな
仕事終わりに二人に話したことを話した
一般的に母親が知りたい彼女の話しも…まぁ改めて話すほどの事はないが
相槌をうちながら聞いていた母親の様子が変わった
濡れたままの手で両頬を拭った
『後はお母さんがやる。明日は休みだし…終わり終わり』
無理矢理止めさせられ、向きを変えられ俺の後ろにまわった
顔を見られたくないかのように
前に押す力が
ふと弱まると
改めて俺の背中に両手をつけ
しみじみと
『いつの間にこんなに大きくなったのか…』
おでこまで付け寄り掛かっているのか母親の重さを感じた
『元気な顔、見せてくれてありがとうね…ヒロ』
『…』
一息吐くと
『順番は大事だけど…できちゃった婚でもOKよ』
突っ込めねぇよ
泣くのを我慢してるようなそんな声で話されたら
でも、あえて言うなら
俺のシャツで手を拭くなよな…母さん…
祖父が全体を見ながら指示を出し
二人の職人姿にちょっと見とれた
1時間位経った時
『ヒロ君じゃないの…そんなとこに居ないでこっちにいらっしゃい』
おばさんに見つかった
すんなり行くより気まずい
相変わらず無愛想な態度のじいちゃん
何処か嬉しそうに笑い頷く父さん
無言のまま仕事を続けて
無言のままただ見ていた
終わったのか片付け出した
分からないながら手伝い出すと
『使え』
軍手を投げてきた
『怪我をするから、使いなさい』
片付けながら父親が後付けをした
全て終り車に乗る二人に
自転車に乗ったまま
仕事終わりの汗と土で汚れた作業着と
日焼けが取れない浅黒い顔が格好良く
そう思う自分が照れくさく視線反らしたまま
『小さい仕事だけど任せて貰えるようになった。責任は重いけど何とかやってる
人間関係も多少は色々あるけど
頼りになる先輩も
話せる奴も出来たし
逸れなりに楽しくやってるから…』
黙って聞いていた
『一番聞きたいのはお母さんだ。話してやれ』
微妙に頷きハンドルを前に向け
『じいちゃん…サンキュー』
背中越しだったが祖父が微笑んだのを感じた
そしてそれを隠すように
『仕事にでかいも小さいも無い…お前なりに精一杯やれ。男として人として恥ずかしくないようにな』
結局一度も視線合わせず
気まずさを消す間
その辺を一回りして帰ると言い捨て
自転車を漕ぎ出した
昨夜のように極普通に夕食を済ませた
ただ少し祖父の態度が柔らかくなっていたような気がした
母親が席を立ち片付け出すのを見て
『手伝うよ』
驚く母親からお皿とスポンジを取り洗い出した
嬉しさが伝わり俺の方が恥ずかしくなってくる
『男の子って父親に似て来るのよね…いずれは』
同時に振り向きリビングでくつろぐ二人を見た
『まぁ、多少は何だけど。年代毎に良い男よ
あら、嬉しくなさそうね?』
『微妙…』
『何事にも真っ直ぐに向き合って精一杯やり抜く
相手のことを分かろうとする優しさ
あの二人からの血筋よ
だから、自信持って歩きなさい
良いお手本が居るんだし』
真面目に聞いていたのに
『男の子はね母親に似ると可愛いって言われてるのよね
だ、か、ら、格好いいと言われるその顔は私の血筋…感謝しなさい』
『はいはい』
それなりの話しの後はなぜか最後はこうなる
恥ずかしさ隠し…
似てるかもな
仕事終わりに二人に話したことを話した
一般的に母親が知りたい彼女の話しも…まぁ改めて話すほどの事はないが
相槌をうちながら聞いていた母親の様子が変わった
濡れたままの手で両頬を拭った
『後はお母さんがやる。明日は休みだし…終わり終わり』
無理矢理止めさせられ、向きを変えられ俺の後ろにまわった
顔を見られたくないかのように
前に押す力が
ふと弱まると
改めて俺の背中に両手をつけ
しみじみと
『いつの間にこんなに大きくなったのか…』
おでこまで付け寄り掛かっているのか母親の重さを感じた
『元気な顔、見せてくれてありがとうね…ヒロ』
『…』
一息吐くと
『順番は大事だけど…できちゃった婚でもOKよ』
突っ込めねぇよ
泣くのを我慢してるようなそんな声で話されたら
でも、あえて言うなら
俺のシャツで手を拭くなよな…母さん…
帰郷~理由1~
気付いたら翌朝午前10時
ビックリだ!
そしてもっとビックリなのは
あれだけ楽しみにしていた息子が帰って来たのに
みんな仕事に行くとはね…
だからって一緒に居るのもなんだけど…
まぁ、一人のんびりするのもいいか
ビールと適当な摘みを手に縁側へ
急な休みだったし、地元の仲間はそれぞれ仕事でなかなか時間が合わず
まあ、今回はじいちゃんに
家族に逢いに来たんだしな
諦めてみても
肝心の家族が居ない!…
昨日の夜も
普通に食事して
テレビ見て笑って
母親のご近所話し聞いて
7年前と変わらない
ただ一つ違うのは
俺がビールを飲んでいたこと
聞かれると面倒だが
いいのかこんなで
大の字に倒れてみた
自分の今の家ではちょっと場所を考えないと難しいが
俺がどう倒れようがここでは有り余っている
ふと
アルバムが目についた
一人で育てるのが精一杯
本当はそんな気が無かったのだと思うが。
そんなだから写真の少ない父親の反動でか
一人っ子なのにアルバムが多いこと
見始めると懐かしく
その時に帰っているような気持ちになった
それにしても千里(ちさと)
写り過ぎだろ
誰のアルバムなんだよ
仕事の都合で知り合いの居ない俺の家の隣に越して来た
無愛想な祖父にも優しく接し何かと頼ってくれるのが嬉しかったのか
いつしか家族付き合いになり
俺が5歳の時…正確には4歳11ヶ月の時に千里が産まれた
自分の孫が産まれたように喜んで
千里は女の子というだけで特別だった
良くくっついて来てたな
ページをめくるたび思い出が蘇えり笑っていた
『何をニヤニヤしているのかと思ったら、彼女の写真見てたの…』
突然現れて何言い出すんだ
この母親は
確かに千里の写真見てましたよ
だけど何処を見たって写ってんだろ
『あのなぁ~…』
何か続けて言いたそうな顔をみたら面倒になり諦めた
『あなたも、満更でもなかったんでしょ?
まだ間に合うわよ
いざとなれば、映画の「卒業」ように当日誓いのKiSSの寸前に花嫁を奪い去る
ダスティン.ホフマンだって格好良く見えたんだから…あなたなら良い感じになると思うけど』
俺の顔を自分の方へ向け
妙な笑顔に…
触れずにおこうと思った
『そして千里ちゃんと手と手を取り、二人は愛の逃避行へ…
ちょっと聞いてるの?』
『はいはい』
見ていたアルバムを取り上げられ、聞いているよと仕方なく言う俺に
『だったら早く止めなさいよ。続けられなくなるでしょ』
止めて欲しかったのかよ
話す前から止めたかったよ、こっちは
この時は母親の単なる空想話しだと聞き流していた
『いつからindoor派になったんだか…友達に連絡つかないんじゃなくて、私達に気を使っているんじゃないの
そんな仲じゃないでしょあんた達は』
過なりの力で俺の肩をひと叩きして立ち去った
あいつ等が
気を使ってる…
想像してクスッと笑ってしまった
あいつ等にまで気を使って貰ったのに俺は
家族との時間ちゃんと使っていないような気がして
キッチンに立つ母親に声をかけようと
『十分よ…あなたが元気で帰って来てくれて、美味しそうに一緒にご飯食べて…
人の気持ちを分かろうとする、優しい子だったし
お父さんがね…
「何も聞くな、得に男は面倒なもんだ。
あいつも男だ、やれるとこまでやって何かあれば話すさ、その時は出来だけの事をしてやればいい
何かと忙しくしているんだろう、ゆっくりさせてやれ」って
だから何も気にしなくていいの
今夜はトンカツにしようかな』
何も言え無かった
ただ無性に
『おじいちゃんとお父さんなら
駅裏の木村の床屋よ
それと、自転車乗れるわよ』
全て背中越しで
今も俺は読まれていた
近づくだけで
誰なのか、何で来たのか、言い当ててた
こっそり隠れてしょうとする事
こっそり隠したい事
嬉しい事、泣きたい事…
隠せ無かったな
妙なとこで実感した
母さんの凄さだ
『行って来ます』
それだけ言って家を出た
自転車はいつものように
車庫の隅に綺麗になってあった
綺麗なだけじゃない
中学時代からもう12年
いつも手入れをしていてくれたと分かる
自転車に乗り
ハンドルを握り
漕ぎ出すと
思い出と一緒にじいちゃんの優しさが伝わり
妙に力が入った
ビックリだ!
そしてもっとビックリなのは
あれだけ楽しみにしていた息子が帰って来たのに
みんな仕事に行くとはね…
だからって一緒に居るのもなんだけど…
まぁ、一人のんびりするのもいいか
ビールと適当な摘みを手に縁側へ
急な休みだったし、地元の仲間はそれぞれ仕事でなかなか時間が合わず
まあ、今回はじいちゃんに
家族に逢いに来たんだしな
諦めてみても
肝心の家族が居ない!…
昨日の夜も
普通に食事して
テレビ見て笑って
母親のご近所話し聞いて
7年前と変わらない
ただ一つ違うのは
俺がビールを飲んでいたこと
聞かれると面倒だが
いいのかこんなで
大の字に倒れてみた
自分の今の家ではちょっと場所を考えないと難しいが
俺がどう倒れようがここでは有り余っている
ふと
アルバムが目についた
一人で育てるのが精一杯
本当はそんな気が無かったのだと思うが。
そんなだから写真の少ない父親の反動でか
一人っ子なのにアルバムが多いこと
見始めると懐かしく
その時に帰っているような気持ちになった
それにしても千里(ちさと)
写り過ぎだろ
誰のアルバムなんだよ
仕事の都合で知り合いの居ない俺の家の隣に越して来た
無愛想な祖父にも優しく接し何かと頼ってくれるのが嬉しかったのか
いつしか家族付き合いになり
俺が5歳の時…正確には4歳11ヶ月の時に千里が産まれた
自分の孫が産まれたように喜んで
千里は女の子というだけで特別だった
良くくっついて来てたな
ページをめくるたび思い出が蘇えり笑っていた
『何をニヤニヤしているのかと思ったら、彼女の写真見てたの…』
突然現れて何言い出すんだ
この母親は
確かに千里の写真見てましたよ
だけど何処を見たって写ってんだろ
『あのなぁ~…』
何か続けて言いたそうな顔をみたら面倒になり諦めた
『あなたも、満更でもなかったんでしょ?
まだ間に合うわよ
いざとなれば、映画の「卒業」ように当日誓いのKiSSの寸前に花嫁を奪い去る
ダスティン.ホフマンだって格好良く見えたんだから…あなたなら良い感じになると思うけど』
俺の顔を自分の方へ向け
妙な笑顔に…
触れずにおこうと思った
『そして千里ちゃんと手と手を取り、二人は愛の逃避行へ…
ちょっと聞いてるの?』
『はいはい』
見ていたアルバムを取り上げられ、聞いているよと仕方なく言う俺に
『だったら早く止めなさいよ。続けられなくなるでしょ』
止めて欲しかったのかよ
話す前から止めたかったよ、こっちは
この時は母親の単なる空想話しだと聞き流していた
『いつからindoor派になったんだか…友達に連絡つかないんじゃなくて、私達に気を使っているんじゃないの
そんな仲じゃないでしょあんた達は』
過なりの力で俺の肩をひと叩きして立ち去った
あいつ等が
気を使ってる…
想像してクスッと笑ってしまった
あいつ等にまで気を使って貰ったのに俺は
家族との時間ちゃんと使っていないような気がして
キッチンに立つ母親に声をかけようと
『十分よ…あなたが元気で帰って来てくれて、美味しそうに一緒にご飯食べて…
人の気持ちを分かろうとする、優しい子だったし
お父さんがね…
「何も聞くな、得に男は面倒なもんだ。
あいつも男だ、やれるとこまでやって何かあれば話すさ、その時は出来だけの事をしてやればいい
何かと忙しくしているんだろう、ゆっくりさせてやれ」って
だから何も気にしなくていいの
今夜はトンカツにしようかな』
何も言え無かった
ただ無性に
『おじいちゃんとお父さんなら
駅裏の木村の床屋よ
それと、自転車乗れるわよ』
全て背中越しで
今も俺は読まれていた
近づくだけで
誰なのか、何で来たのか、言い当ててた
こっそり隠れてしょうとする事
こっそり隠したい事
嬉しい事、泣きたい事…
隠せ無かったな
妙なとこで実感した
母さんの凄さだ
『行って来ます』
それだけ言って家を出た
自転車はいつものように
車庫の隅に綺麗になってあった
綺麗なだけじゃない
中学時代からもう12年
いつも手入れをしていてくれたと分かる
自転車に乗り
ハンドルを握り
漕ぎ出すと
思い出と一緒にじいちゃんの優しさが伝わり
妙に力が入った
帰郷~きっかけ
疲れた身体でドアを開けて、部屋の電気を付け鍵と鞄をソファーになげた。
「また、母さんか…」
気にもせずいつもの流れで風呂
子供の頃から植木職人の祖父と父親がしていたから自然と身についてた。予定があっても無くても、仕事終りの区切りを付ける。とはいいながら
おやじ化してんのかな…
俺
ふと、思ったりする
頭からバスタオルをかぶり、冷えた缶ビール開けながらソファーへ
この部屋に決めた時
『母さんと話している時に彼女から電話が繋かって来たらどうするの』
意味ありげな笑顔の母親に押し切らて入れた電話。彼女とダブルっていうのはともかく、所構わず携帯が鳴らないのは助かる。
母親の長電話するのが前提だった…だけ
一人息子としては、たまには母親の長電話くらい付き合わないとな
『俺って…結構、親孝行じゃん』
『だったら、たまにはゆっくり帰って来なさい』
母親の声が聞こえたような気がして
覚悟を決め再生ボタンを押した
メツセージ無し?
間違い電話か…
また?
切れる一瞬前に聞き覚えのある一言、いや一文字の言葉
『じいちゃん…?』
この7年、今まで一度も電話なんてかけて来たことなんか無いのに
俺の父親が5歳の時祖母が亡くなってから一人で育てた。
無口で愛想が良いわけでも無く不器用で
でも
情に厚くて涙もろく面倒見が良く、頼りにされている
これぞ男!
厳しいところもあるが、そんなじいちゃんちゃんが好きだった。
なのになんだよ…
弱々しい声なのに強かってるのが見え見えじゃねぇかよ
『あっ…ヒロか…元気ならそれでいい…』
予定を経てずの旅行とはいえ急なドタキャンなのに
『行事がある訳じゃないのに良く行くな。
面倒な歓迎に疲れに行くようなもんなのにさ。
お前、じいちゃん好きだもんな。
無事に帰ったら連絡しろよ』
友よ、感謝!
そうなのだ
何かと理由をつけ帰らないのは、しつこい質問攻めと疲れる歓迎…
俺の居た町は特に熱烈で
子供の頃からよく見て来た
家迄、何分かかるだろう
覚悟を決めて駅を出た
新しい店、住宅が増え多少風景は変わったが、変わらない空気だった
所々見ては、思い出している俺を誰かが呼んでる
来た!
『あら~ヒロ君じゃない。久しぶりね…すっかりいい男になって』
言い終わらないうちに一人、また一人…
歩くたびに増え、遂に止められた
ちょっととしたアイドル状態。但し年齢層かなり高い…けど
みんな息子が帰ったかのような笑顔
そうなんだ
この町はみんなが家族だった
誰からも怒られ
誰もが誉めてくれ
誰かが一緒に泣いて、笑って、悩んで、喜んでくれた
逃げ場をくれた
隠すこと無く助け合って過ごしてた
でも…
それが嫌になり
大学入学をきっかけに
俺はこの町を出た
気付くと
鞄ひとつだったはずなのに4つに増えていた
飛び交う言葉にただ苦笑いで返事だけ返す俺
『じいちゃん?』
家の前をうろうろし、目が合うとさりげなく慌てて家に戻った
見兼ねたばあちゃんが
『朝からシゲさん、楽しみでしかたなく、駅まで何回もうろうろして。
「帰ると連絡があったが、時間を言わんから」
聞いてもいないのに話したりして…最近、元気無かったけど
無愛想な態度に滲み出てたよ、嬉しさが…
よく帰ってきたね、ヒロ
早く帰ってあげな』
やっと解放された
急にみんなの想いの温かさが背中に伝わり
重くなった荷物が、ゆっくり帰らなかった7年の月日の長さに思え、たいしたことも言えず歩き出した
だけど…
家まで1Kmほど
4分たらずでほぼ毎日走っていたのに
3時間…
早く帰れってよく言うよな3時間引き止めといて
どこか怒り切れなく
笑っている俺がいた
玄関を開けると
懐かしい母親の料理の匂いがした
声をかけようとすると
エプロンで手を拭きながら
『お帰り…早かったじゃない』
『(早い?)…ただいま』
『おばちゃん達の洗礼、どうだった?
裏の大輔君は2時間弱で、晃君は2時間ちょっと』
駅に着く時間を連絡させたのは時間を計る為…
それにしてもよく覚えてるよな
『3時間ちょっとか、まぁこんなものかな…
でも流石、子供の頃から人気があっただけはあるわね』
満足そうな勝ち誇った顔
『なんの勝負だよ』
『いいのいいの』
キッチンから父親の呼ぶ声に慌てながら
『いつまでも何突っ立ってんの。早く上がりなさい』
母さん…あなたが話していて足止めしてたんでしょ…
あと何年かしたら、洗礼するあの中に居るんだろうな…
溜め息をつき荷物を置き靴を脱いだ
『お帰り』
『ただいま』
『だいぶ貰ったな、荷造りして送ってやる…
お前は子供の頃から母さんの自慢だからな。
帰る連絡があってから
布団干したり掃除したり
家中大掃除だ。
まるで彼氏に会うかのように、嬉しそうにしてた。』
相変わらず綺麗になっている部屋と、俺の写真
懐かしくみている俺に、冷えた麦茶を差し出し
『よく帰って来たな…
若い時は自分の町が嫌になり出て行くもんだ。
きっかけは何であれ自分から帰ることが大事なんだ。
誰に説得されようが、自分で故郷の良さを実感しないとな。
7年か…父さんは8年だったが、一人では帰って来なかった』
しんみりと聞いてたのに結局自慢かよ
どうせ俺には連れて帰る相手が居ませんよ
『なんで居ないのかね。昔からモテたのに…選べないんだよねヒロは、優しいから』
いきなり参加してくるなよな
『慌てる事はないさ。お前が放したくないと想う女性(ひと)が現れるさ。なあ、ヒロ』
妙に照れくさく適当に返事をしてごまかした。
庭に面した縁側(廊下)の突き当たりが祖父の部屋だ
流石腕の良い植木職人の自慢する庭だけあり、素人の俺が見ても相変わらず見事だ。
縁側に座り盆栽の手入れをする祖父に近づき
『じいちゃん、ただいま』
『おぅ…』
振り向くこともなく、相変わらず無愛想な態度だ
得に話すこともなく隣に座り庭を眺めていると
懐かしさで穏やかな気持ちになった
『ゆっくりできるのか』
唐突に一言
『あっ、あぁ…二泊泊めてもらおうかと思ってる』
『何、他人行儀なことを言ってる。お前の家だろ』
枝を切る手を止め荒い口調に
そうだよな…
俺の家だよな
わかっていたけど、急に力が抜け笑い出していた
『俺のいえだよな』
そんな俺に気付いてか
スッと立ち上がり
『良く帰って来たな…ヒロ』
庭へ歩き出した祖父の目尻が光っていた
愛想のない祖父の精一杯の優しい言葉と、見慣れた庭からの夕陽にそまる背中
ゆっくりと胸に染み込み熱くなるのを感じた
元気の無いじいちゃんの声が気になって…
まぁいいか…元気そうだし
待ちきれず何度もうろつくほど嬉しいくせに
精一杯無愛想に見せかけているじいちゃんが
愛おしく思えて
電話してきた理由を聞くのを止めた
『あれは、盆栽にかけていた霧吹きの水が飛んだだけだ』
きっとこう言って来る
聞かないでおこう
じいちゃんの
男の面子(めんつ)の為に
「また、母さんか…」
気にもせずいつもの流れで風呂
子供の頃から植木職人の祖父と父親がしていたから自然と身についてた。予定があっても無くても、仕事終りの区切りを付ける。とはいいながら
おやじ化してんのかな…
俺
ふと、思ったりする
頭からバスタオルをかぶり、冷えた缶ビール開けながらソファーへ
この部屋に決めた時
『母さんと話している時に彼女から電話が繋かって来たらどうするの』
意味ありげな笑顔の母親に押し切らて入れた電話。彼女とダブルっていうのはともかく、所構わず携帯が鳴らないのは助かる。
母親の長電話するのが前提だった…だけ
一人息子としては、たまには母親の長電話くらい付き合わないとな
『俺って…結構、親孝行じゃん』
『だったら、たまにはゆっくり帰って来なさい』
母親の声が聞こえたような気がして
覚悟を決め再生ボタンを押した
メツセージ無し?
間違い電話か…
また?
切れる一瞬前に聞き覚えのある一言、いや一文字の言葉
『じいちゃん…?』
この7年、今まで一度も電話なんてかけて来たことなんか無いのに
俺の父親が5歳の時祖母が亡くなってから一人で育てた。
無口で愛想が良いわけでも無く不器用で
でも
情に厚くて涙もろく面倒見が良く、頼りにされている
これぞ男!
厳しいところもあるが、そんなじいちゃんちゃんが好きだった。
なのになんだよ…
弱々しい声なのに強かってるのが見え見えじゃねぇかよ
『あっ…ヒロか…元気ならそれでいい…』
予定を経てずの旅行とはいえ急なドタキャンなのに
『行事がある訳じゃないのに良く行くな。
面倒な歓迎に疲れに行くようなもんなのにさ。
お前、じいちゃん好きだもんな。
無事に帰ったら連絡しろよ』
友よ、感謝!
そうなのだ
何かと理由をつけ帰らないのは、しつこい質問攻めと疲れる歓迎…
俺の居た町は特に熱烈で
子供の頃からよく見て来た
家迄、何分かかるだろう
覚悟を決めて駅を出た
新しい店、住宅が増え多少風景は変わったが、変わらない空気だった
所々見ては、思い出している俺を誰かが呼んでる
来た!
『あら~ヒロ君じゃない。久しぶりね…すっかりいい男になって』
言い終わらないうちに一人、また一人…
歩くたびに増え、遂に止められた
ちょっととしたアイドル状態。但し年齢層かなり高い…けど
みんな息子が帰ったかのような笑顔
そうなんだ
この町はみんなが家族だった
誰からも怒られ
誰もが誉めてくれ
誰かが一緒に泣いて、笑って、悩んで、喜んでくれた
逃げ場をくれた
隠すこと無く助け合って過ごしてた
でも…
それが嫌になり
大学入学をきっかけに
俺はこの町を出た
気付くと
鞄ひとつだったはずなのに4つに増えていた
飛び交う言葉にただ苦笑いで返事だけ返す俺
『じいちゃん?』
家の前をうろうろし、目が合うとさりげなく慌てて家に戻った
見兼ねたばあちゃんが
『朝からシゲさん、楽しみでしかたなく、駅まで何回もうろうろして。
「帰ると連絡があったが、時間を言わんから」
聞いてもいないのに話したりして…最近、元気無かったけど
無愛想な態度に滲み出てたよ、嬉しさが…
よく帰ってきたね、ヒロ
早く帰ってあげな』
やっと解放された
急にみんなの想いの温かさが背中に伝わり
重くなった荷物が、ゆっくり帰らなかった7年の月日の長さに思え、たいしたことも言えず歩き出した
だけど…
家まで1Kmほど
4分たらずでほぼ毎日走っていたのに
3時間…
早く帰れってよく言うよな3時間引き止めといて
どこか怒り切れなく
笑っている俺がいた
玄関を開けると
懐かしい母親の料理の匂いがした
声をかけようとすると
エプロンで手を拭きながら
『お帰り…早かったじゃない』
『(早い?)…ただいま』
『おばちゃん達の洗礼、どうだった?
裏の大輔君は2時間弱で、晃君は2時間ちょっと』
駅に着く時間を連絡させたのは時間を計る為…
それにしてもよく覚えてるよな
『3時間ちょっとか、まぁこんなものかな…
でも流石、子供の頃から人気があっただけはあるわね』
満足そうな勝ち誇った顔
『なんの勝負だよ』
『いいのいいの』
キッチンから父親の呼ぶ声に慌てながら
『いつまでも何突っ立ってんの。早く上がりなさい』
母さん…あなたが話していて足止めしてたんでしょ…
あと何年かしたら、洗礼するあの中に居るんだろうな…
溜め息をつき荷物を置き靴を脱いだ
『お帰り』
『ただいま』
『だいぶ貰ったな、荷造りして送ってやる…
お前は子供の頃から母さんの自慢だからな。
帰る連絡があってから
布団干したり掃除したり
家中大掃除だ。
まるで彼氏に会うかのように、嬉しそうにしてた。』
相変わらず綺麗になっている部屋と、俺の写真
懐かしくみている俺に、冷えた麦茶を差し出し
『よく帰って来たな…
若い時は自分の町が嫌になり出て行くもんだ。
きっかけは何であれ自分から帰ることが大事なんだ。
誰に説得されようが、自分で故郷の良さを実感しないとな。
7年か…父さんは8年だったが、一人では帰って来なかった』
しんみりと聞いてたのに結局自慢かよ
どうせ俺には連れて帰る相手が居ませんよ
『なんで居ないのかね。昔からモテたのに…選べないんだよねヒロは、優しいから』
いきなり参加してくるなよな
『慌てる事はないさ。お前が放したくないと想う女性(ひと)が現れるさ。なあ、ヒロ』
妙に照れくさく適当に返事をしてごまかした。
庭に面した縁側(廊下)の突き当たりが祖父の部屋だ
流石腕の良い植木職人の自慢する庭だけあり、素人の俺が見ても相変わらず見事だ。
縁側に座り盆栽の手入れをする祖父に近づき
『じいちゃん、ただいま』
『おぅ…』
振り向くこともなく、相変わらず無愛想な態度だ
得に話すこともなく隣に座り庭を眺めていると
懐かしさで穏やかな気持ちになった
『ゆっくりできるのか』
唐突に一言
『あっ、あぁ…二泊泊めてもらおうかと思ってる』
『何、他人行儀なことを言ってる。お前の家だろ』
枝を切る手を止め荒い口調に
そうだよな…
俺の家だよな
わかっていたけど、急に力が抜け笑い出していた
『俺のいえだよな』
そんな俺に気付いてか
スッと立ち上がり
『良く帰って来たな…ヒロ』
庭へ歩き出した祖父の目尻が光っていた
愛想のない祖父の精一杯の優しい言葉と、見慣れた庭からの夕陽にそまる背中
ゆっくりと胸に染み込み熱くなるのを感じた
元気の無いじいちゃんの声が気になって…
まぁいいか…元気そうだし
待ちきれず何度もうろつくほど嬉しいくせに
精一杯無愛想に見せかけているじいちゃんが
愛おしく思えて
電話してきた理由を聞くのを止めた
『あれは、盆栽にかけていた霧吹きの水が飛んだだけだ』
きっとこう言って来る
聞かないでおこう
じいちゃんの
男の面子(めんつ)の為に