A銀行の従業員であったXは、昭和58年4月にA銀行に入社し勤務してきたが、平成10年5月6日にうつ病との診断を受け、同年11月30日にA銀行を退職した。災害の原因及び発生の状況として、おおむね
① 平成10年4月1日付けの名寄支店から野幌支店への人事異動の前後に長時間の時間外労働により発病したこと、
② 同年8月の休暇願が認められなかったこと、
③ 同年10月9日には、上司から、翌週から休暇を取るようにいわれたが、退職させられると考えて同月12日に出勤したところF支店長とK支店長代理により自宅に連れ戻されたこと、
④ 同月26日からの出勤を命じられて出勤すると、医師から係を換えない方が良い旨言われたことを伝えてあったにもかかわらず、融資係から営業係に係換えとなり、その後N支店長代理から怒鳴られたり、名指しで応接室に呼ばれて説教されたりし、また雑用や新入行員の面倒を見させられる等したことなどをXは主張として掲げていた。
またXは、平成14年11月11日、平成14年処分に対する審査請求を棄却した決定に対し、再審査請求をしたが、その際、災害の原因及び発生状況として、おおむね業務起因性の判断基準につき、労働の過重性と疾病・病気の発症・増悪との間には、通常、相当因果関係が認められる(あるいは事実上推定される。)とする最高裁判決があり、業務起因性の立証責任を転換して、相当因果関係がないことをYが立証すべきであると主張するが、労働の過重性については、これまでの検討から、Xの業務に特段の過重性が認められないから、事実上の推定の前提がないこと、立証責任の転換については、独自の見解であってこれを採用できないから、Xの主張は理由がない。