3人の男を殺めて、死体をバラバラにした罪で逮捕された品川真珠は、逮捕のときにピエロのメイクをしていたことから、「品川ピエロ」とネットで広められた。
彼女が殺したとされる一人の男の小学生の息子から、「父の頭を探してください」と頼まれた、児童相談所職員の夏目アラタは、この少年が、自分の名を語って獄中の品川ピエロに手紙を書き、面談の段取りまで整えていたことを知る。彼は少年に変わって品川ピエロに会い、少年の父の頭がどこにあるのかを聞き出そうと東京拘置所へ出かける。
面談室に現れた品川ピエロは、逮捕時とはまるで別人の様相で現れる。
「あなた、私が怖くないの?」
「怖ぇよ」
歯並びの悪い歯をむき出して彼女は言う。
「あなたは手紙の人じゃない」
面談室を出ていこうとする真珠に声を掛ける。
「なぁ、俺と結婚しようや。そうしたら毎日面会することができる」
その言葉に振り向いた彼女は、邪悪な笑みを残し、去っていく。
真珠の私設弁護士が、獄中のピエロが署名した結婚届を持って、アラタのもとを訪ねてくる。アラタは署名した結婚届けを持って東京拘置所を訪れ、結婚届を彼女にガラス越しに突きつける。
「うれしい」彼女はつぶやいた。
それから二人のガラス越しの面談は続く。
そのたびに、真珠の言動は変動する。
「実はね、誰にも言っていないけど、私は誰も殺していない。無実なの」
その時から、アラタは真珠の周辺を調べ、そして過去にたどり着く。
彼女の父親のこと、母親のこと。
逮捕された部屋に残された、誰のものか分からない血痕のこと。
彼女は本当に連続殺人犯なのか。そして死体をバラバラにして隠したのか。
彼女の驚愕の過去、生い立ちが少しづつ姿を現す。
公判のたびに、態度も証言も変わる真珠に、弁護士も裁判官も翻弄される。
そして、実は彼女は本当の品川真珠ではないのではないかと疑問が。
幼少時の異常なIQの低さ。
しかし面談した時の彼女からは、知恵遅れの印象は全くなく、むしろ非常に頭が良いという印象を得た。そして成長し20歳の彼女のIQは正常値を超えていた。
なぜ異常な成長を遂げたのか。
彼女につきまとったという、ストーカーの正体は?
彼女の父親は何をしたのか。
様々な謎を絡ませながら進むストーリーに目が話せない。
監督は堤幸彦。
コメディーサスペンスの名手であるが、この作品ではコメディー部分は封印して、純粋にサスペンスを描き出していく。
主演はアラタを柳楽優弥。独特の、悪の空気と正義の空気を同時に纏う不思議な役者。ドラマの「ガンニバル」での怪演が忘れられない。
品川真珠には、黒島結菜。NHK「ちむどんどん」での主演、芝居の評価はいまいちだったが、その可憐な可愛らしさに僕は魅かれた。特にシャープな顎と唇が好きだ。その彼女の表情がいつもの可憐さから変化しているのは、歯並びの悪いマウスピースを装着しているせいだろうか。異常な殺人鬼、サイコな女を、演じきっていて好感が持てる。
恐ろしく、おどろおどろしく、童顔でかわいい。