「かまへん、かまへん!腹一杯食うて寝たら、なんでも、どないかなる!」
「いいから、いいから、とりあえずお腹いっぱい食べて寝たら、なんとかなる」
この「なんとかなる(どないかなる)」という関西文化における根拠のない慰めないしは励まし。
あいまいで中途半端で、何も提案してないし、解決に向けてどうしろとも言わない。
だけど、なんか心の中がすぅ〜〜〜っとする感じがする優しさがある。
他には「知らんけど」というのもある。
「それはそうやて!絶対にやった方がええよ!絶対ええよ!、知らんけど」
ちょっと一言、責任逃れをしているようで、関東の人には嫌われるけど、この「知らんけど」も「どないかなる」と同じように、「決めるのはあんたやで」と優しく背中を教えているのである。まぁ、関西文化のおさらいはこの辺にして。
兵庫県尼崎市。
兵庫と大阪の境目に位置するこの街。
いろいろと悪評(?)のある街で、ダウンタウンの二人の出身地でもある。
海抜0メートルの尼崎市には、洪水や津波から街を守るために「尼崎閘門(こうもん)」と呼ばれる可動式防潮堤がある。通称「あまろっく」。
この街で生まれ育った39歳の近松優子(江口のりこ)は、独特な感性で、小学校の時から「空気を乱す」と言われながらも勉強に励み、京都大学を卒業し、東京で就職したが、理不尽なリストラにあい、実家の尼崎に帰ってきた。
そこでは、毎日やることもなく、ぶらぶら過ごしている優子に、町工場を経営する父親近松竜太郎(笑福亭鶴瓶)は「人生に起こることは、なんでも楽しまな!」と言いながら、こちらも仕事は工員に任せきりで、調子よく生きていた。
そんな竜太郎がある日、優子に切り出した。「おとうちゃんな、再婚すんねん」そして連れてきた再婚相手は、市役所に勤める20歳の女子、早希だった。39歳の優子に、20歳の母ができた!パニックのあまり反抗を繰り返す優子。
そんなある日、超大型の台風がアマに接近。雷ゴロゴロの最中に、竜太郎は若妻にすすめられ、町内をジョギング。その時、一筋の雷が!
あっけなく竜太郎は逝ってしまった。そして、若妻佐季のお腹には、竜太郎の子供が宿っていることが分かった。
優子にも出会いがあった。大手商社のエリート社員だ。
それぞれに問題を抱えながら、アマの地で家族が形作られる。
前編、尼崎でロケを行い、出演者はみんな関西出身の関西弁ネーティブスピーカー達。個性的な俳優の裏で、浜村淳やら佐川満男やらが、顔を出す。公開も、関西だけは全国より1週間早い公開とするなど、それなりにこだわりを持った関係者が作ったんだなぁという、手作り感のようなものが、心地よい。