映画#10 流転の地球 2 - 太陽系脱出計画- | なんのこっちゃホイ!

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世の中の、これでいいのか、こんなことでいいのかを描くブログ。そんなにしょっちゅう怒っていられないので、ほどほどに色々な話題も混ぜていきましょう。

太陽の内部で水素がヘリウムに変わるスピードが加速していることに天文学者が気づいた。これはいわば太陽の老化であり、いずれ太陽は膨張し白色恒星となり、300年後には膨張した太陽によって太陽系が消滅するというショッキングが予測が成立し、人類は選択を迫られる。

1.脳内の記録(記憶)の全てをデータにして、AIとして肉体的には消滅しても、仮想的に生存を確立する。

2.地球を移動させ、太陽系から離脱する。

喧々ガクガクの議論の末に人類は、地球を移動させる案を採択する。世界の様々な場所に1万機のロケットエンジンを設置して、地球の軌道を外し、太陽系の外に出るという「移山計画」が中国中心に国連で始まる。まず邪魔な月を追放せねばならない。残された時間は300年。宇宙ステーションまでのエレベーターを作り、そこから月へと資材を運び、ここにもロケットエンジンを取り付け地球の軌道から外そうと計画する。しかし、却下されたプラン1を支援する者達の攻撃により思わぬ事態が起こり、このままで36時間で月が地球に落下する。それを阻止するためには、月面に月の核までとどくような4000機の核爆弾を設置して月を破壊、同時に地球のエンジンも吹かして、軌道を脱出するという、荒唐無稽なお話。

 

原作は、劉慈欣。言うまでも無く「三体」の作者で、これも荒唐無稽な話ではあったが、背景にある理論がしっかりしているので、すっかり虜にされてしまった。この作者にして、これか!?という映画。ところが、漢字ばかりのエンドロールをみていると、どうやら劉慈欣自身もこの映画の制作に関わったようなので、原作者のお墨付きということなんだな。

 

VFXのレベルは非常に高いと思う。この映画を63億円で作ったのは、ゴジラ-1.0の22億円から見ても、頑張った方だ。

残念なのは、VFX以外の部分の構成や演出が少々雑なことかな。特殊撮影やCGのせいで、画面は非常に賑やかで、音響も響き渡るのだが、一体なんでそんなに騒いでいるのかが、ついていけない。中国語の音のせいか、中国語以外はロシア語のせいか、あるいは字幕翻訳か。僕は脚本や構成だと思う。早口の中国語でわぁーわぁー話しを進めるのでは無く、しっかり大切なところは押さえてほしい。

例えば、まず、なぜ地球を移動させよういう荒唐無稽な結論になったのか。なぜ、人々はそれが可能だと思ったのか。移動させれば自転が止まるような気がするが、その場合どんな事が起こって、どう対処するのか。少なくともこういう部分の背景はしっかりと描いてほしい。その上で、月で間違いが起こり、地球は300年も経たずに危機に直面し、可能な限りのエンジンを使って移山計画を実行に移すという決断にいたる理論と納得。世界中の核ミサイルを月の海に並べて一斉に起爆しようと言うときに、各国の起爆コードが暗号化されていてそれが解読できずに、解読までに700時間以上かかるとか、ありえない。みんな納得で核を提供したんだから、爆破コードも提供するでしょ、普通。

このあたりは劉慈欣の原作にはないので、映画の制作陣の追加だと思うが、お粗末に過ぎる。

VFXに力がはいりすぎ、どうだ、どうだ、これでもか!と派手なシーンを連続してくるが、それだけじゃアカデミー賞には届かない。

 

登場人物が、中国人中心であるのはまあ、仕方ないとして、友好的な立場の外国人はロシア語を喋る。中ロ関係の表れか。英語を喋るアメリカ人と思われる人たちは、みんな無礼な暴れ者で知性のかけらもなくわめき回るという、中米関係を如実にあらわしたキャスティングは笑える。しかも、全部のアメリカ人の英語が上手くないので、英語の台詞もどうやらMade in Chinaなんだろうな。

月の破片が流星になって流れ落ちてくる。被害に遭う都市は、ニューヨーク、パリ。それ以外は聞いたこともないような都市が写る。どこ、それ?もう少し、西側のセンスもつかんでやってもらわないと、分からないよ。緊迫感が。

 

実は2019年に「流転の地球」は映画化されていて、NETFLIXで公開されていた。最近をそれをみて、この映画にたどり着いたってわけ。

NETFLIX版は、この映画の後を描いている。首尾良く月の墜落を免れて、太陽の引力でスイングバイして速度をあげ、次に木星の引力を使ってさらに加速し、2500年をかけてプロキシマ・ケンタイリ星雲までの4.3光年を旅する予定だったが、途中の木星で引力に引き寄せられ、地球は大ピンチを迎えるというもの。だから、この映画は2と言われているが、実は1の前を描いている。スターウォーズみたいにややこしい。

 

中国のVFX技術に興味がある方は、絶対におすすめします。