「ラプラスの魔女」シリーズの3作目。
相変わらず、円華の能力が冴えている。
ストーリーは、東野圭吾ならではのスピーディーな展開に、ずんずん引き込まれていく。中学生あたりが登場するストーリーはあまり好きではないが、まぁ今回も許してやろう。
それより衝撃なのは、「ゲノムモンタージュ」という技術?だ。
DNA解析から本人の顔をAIが予測して、それを写真並の精度で書き上げる。ある程度、年齢も予想して、犯人の現在の年齢からその顔の変化も予想して書き上げる。さらに驚いたのは、マイナンバーカードとの連携。DNAはそこら中でやろうと思えば採取できる。喫煙所のタバコの吸い殻。自販機横のペットボトルや缶飲料のゴミ。DNAを集めるのはそれほど問題がないが、それらは不特定多数のDNAであって、これを特定個人と紐付けることは並大抵ではない。もちろん、犯罪歴のあるものは別だ。ところが、「ゲノムモンタージュ」と「マイナンバーカード」の情報を使えば、DNAと個人を紐づけて特定できる。マイナンバーカードには、個人を特定するあらゆる情報が含まれている。顔写真まである。DNAから分析したモンタージュの顔とを突き合わせれば、簡単にDNA情報を紐付けられる。
ますます国家権力(警察を含む)による、巨大な管理システムへの恐怖が湧き出した。
管理システムは、防犯等の分野では良いと思うが、管理する側の人間の倫理観、公正性等によって、乱用されることがあってはならない。今の政治家、地方自治等を考えると、そら恐ろしい。
そういう恐怖を、引き出してくれた点で、読んで良かったと思う。