赤子をあやす | なんのこっちゃホイ!

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世の中の、これでいいのか、こんなことでいいのかを描くブログ。そんなにしょっちゅう怒っていられないので、ほどほどに色々な話題も混ぜていきましょう。

最近は居酒屋は煙いので、駅の上にあるギネスビールのお店に一人で立ち寄ります。このお店は、完全に分煙で、禁煙席なら、タバコの臭いが一切しません。また7時までに入店すれば、ハッピーアワーで1000円でギネスビール一杯と、生ハム等のおつまみが一皿ついてきます。ギネスは、ゆっくり飲むビールなので、Twitterをしたり、電子書籍を読んだりしながら1時間程リラックスして、そのまま家路につきます。

先日、そのビアホールで知り合った人から、面白い話を聞いたので披露します。

その人とは、たまたま席が隣同士になり、お互いに一人だったので、なんとなく話をするようになりました。その方の年齢は57歳だそうで、僕よりは先輩です。でも、結婚が遅かったというか、とにかく新妻は28歳だそうです。およそ30歳も違う若い奥様と結婚したということになります。しかも、できちゃった婚で、お互い初婚だということで、また驚きました。

彼の悩みは、子供の夜泣きだそうです。とにかく、ひっきりなしに夜中に泣くので、新妻も彼も参っていると。そこで彼は、色々な本を読み研究したそうです。いわく、赤ちゃんが最も安心する音は、母親の胎内で聞いた心臓の音だそうです。そこで彼は、心臓の音をきかせれば泣きやむのではないかと考え、自分の心臓の位置に赤子の耳をあてるように抱いたのだそうです。しかし、ちっとも泣きやみません。そうか。母親の心臓の音でないとダメなのかと思い、新妻に交替すると、不思議な事にぴたりと泣きやみます。やれやれと思ったのもつかの間、いちいち新妻を起こして抱き上げるのでは、対策になっていないことに気がつきました。そこでグーグル等で調べてみると、波の音の周期が、母親の胎内の音と近いと知ります。早速アマゾンで、波の音のCDを発注し、泣きだしたら、よし!とばかりにステレオでかけてみました。すると、効果はてきめん、一発で泣きやみ、すやすやと眠り始めたそうです。そこで、小さなスピーカーを買って来て、ベビーベッドに取りつけて、泣きだすと昼夜を問わず、波の音のCDを聞かせました。

しかし人間には慣れと飽きというものがあります。いつまでも波の音に騙される赤子ではありません。じきに効果がなくなりました。それから彼は、風の音のCDや、小川のせせらぎ等、ありとあらゆる効果音を買って来ては、かけてみたそうです。しかし、波の音ほどの効果はありませんでした。

人間は、ある種の音を聞いていると、眠くなる習性があります。例えば、列車のゴトンゴトンという線路の音。飛行機のエンジン音は、ずーっと続いている単純な音なので繰り返しがなく、眠くはなりません。むしろ五月蠅いと感じてしまいます。同様に、お経というものがあります。これも単調なリズムの繰り返し、ときどき入る金の音。非常に眠気を誘うものであります。そこで、お経をかけてみたそうです。しかし赤子に効果はなく、新妻の怒りを買っただけでした。

そしてついに彼は究極の眠気を誘う音に気付きます。学校の講義です。つまらない講義ほど眠気を誘うものはありません。それは誰しも経験済みでしょう。そこで彼は、最もつまらないと評判の教授の授業を録音し、持ち帰り赤子に聞かせました。文化経済学の講義であるにも関わらず、赤子はしばらくすると、スヤスヤと安らかに眠ったのでした。しかも、何度かけても飽きることなく、赤子は眠ってくれるのでした。

最後に彼は、自分は某大学の教授をしており、自分の授業は大学でもイチニを争う退屈なものだと学生には評判で、授業中の睡眠率は8割を超えるという猛者であることを僕に打ち明けました。図らずも、その退屈さ、単調さ、つまらなさを、自らの赤子で証明してしまったとのことでした。

授業はどうだか知りませんが、大変に愉快な話を聞かせてもらいました。

ただ、これ程面白い話にも関わらず、彼の喋り方は淡々としていて一本調子で、途中で眠気を覚えてしまった、僕がいました。


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