手嶋龍一のウルトラ・ダラーを読んだ。
1968年、東京で若い彫刻職人が行方不明となった。
2002年、ダブリンで新手のドル紙幣の偽札が発見される。
その流通経路は、モスクワを経由していると見られるが、発信地は北朝鮮と思われる。現在のドル紙幣には、偽造を避けるための様々な工夫や、技術が導入されているが、ことごとく破られている。日本のあるメーカーは、ドルの真贋を調べる機械を作っている。信用第一のこの企業が、中国やロシアを経由して、北朝鮮にその偽札発見器を輸出していた。つまり、北朝鮮は、自分たちが作った偽札を、予め検査機にかけて、反応を調べることができるというわけ。北朝鮮の狙いは何か?
さて、作家は手嶋龍一さんで、この人はTVにもよく登場するジャーナリストである。ジャーナリストであるから、その文章は、きわめてジャーナリスト的であって、ちっとも面白くない。この人、作家と自称しているが、ただのレポーターであろうな。人が描けていないし、淡々と事実(彼の想像だが)を重ねているだけで、緊迫感もスリルも伝わってこない。
偽札作りに国家が関与した場合、その狙いはおおよそ決まっている。通常のルートでは絶対に手に入らないものを買いたいが、高額すぎて手が出ないから、偽札を作ってこれをロンダリングして購入する。あるいは、敵国通貨を偽造して、経済的打撃(スーパーインフレ等)を与えるというもの。アメリカを相手に、後者の攻撃をしかえるやつなんているわけないので(相当な量の偽札が必要となる)、当然前者となり、相手が北朝鮮となると、核とミサイルってのは、すぐにピンとくる。そんなことを、ウダウダともったい付けて、さも驚愕の真実であるがごとく、レポートしているのには、正直疲れた。