朝青龍は強い。文句なく強い。
初場所では、怪我や引退問題で、世間を賑わしていたが、見事な優勝であった。全勝で勝ち進んだ千秋楽、いよいよ1敗の白鵬との直接対決。これに勝てば、全勝優勝だったのだが、立会いでミスがあり、負けてしまった。しかし優勝決定戦に向けて、朝青龍は休むことなく、支度部屋でも身体を動かしていた。後一回勝てば、優勝できる。世間を見返してやることができるという気持ちがあったことは、多分間違いないだろう。そして優勝決定戦は大一番であった。見ていて力の入る、いい相撲だった。
ところが、これに味噌をつけたのが、この「ガッツポーズ」である。相撲協会の一部の理事からは、「品格のない行為」であり、引退勧告も辞さないという動きがあるらしく、毎朝のようにニュースショーを賑わしている。良くも悪くも世間を騒がせる横綱であることは間違いない。しかも、帰らないと言っていたモンゴルに、「やっぱり帰る」と言い出したことから、高砂親方の指導力まで問われる(そんなものが、大ちゃんに最初からあるのかどうか疑問だが)事態に発展している。
しかし、横綱の品格とは、ナンだろうか。相撲の品格とは、ナンだろうか。
元々相撲は古来より、五穀豊穣を願う神事であり、横綱は悪霊を沈める神のような存在であった。横綱の土俵入りは重要な儀式で、悪霊に対して神の存在を知らしめ、四股を踏む事で、悪霊を地面に押し込める意味合いがあったそうだ。天国は空にあり、地獄は地下にあるというのは、日本人が共通で持つ、イメージではなだろうか。
しかし、現在の大相撲はどうだろう。国民のどれくらいの人が、これを「神事」と見ているのであろうか。これにより、五穀豊穣を願う気持ちが、どれだけあるのだろうか。現在の大相撲は、誰がみても「興行」以外の何者でもないような気がする。横綱は、いわばチャンピオンであり、優勝へ向けたリーグ戦を、各力士が戦っている。そういう風に見ているのではないか。
外国人から見ても、これは変わらないと思う。なにやら七面倒くさい儀式が続き、一発で戦えばいいのに、何度も何度も力士が顔を突き合わせては離れる。その間に気合を高めているのだろうが、見ていて面倒臭い。
NHKの国際化による衛星放送で、世界中のどこにいても、大相撲は見る事ができる。時々、コピーライトの都合で画像が出ないこともあるが、ニュースでは勝敗は知らされる。そんな相撲を見た外国人が、これはトーナメント制による、力比べであると理解したとしても、それのどこが悪いのだろうか。
そもそも相撲が国技だと、誰が決めたのか。総理大臣?天皇陛下?どっかの役所?実は、相撲協会が勝手に言っているだけというのが、真実のようだ。
モンゴルにも、相撲ににた競技があることから、モンゴルの青年が、金が儲かる相撲を日本でやりたいと思い、出稼ぎにやってくる。日本の青少年の中には、今更相撲で横綱になろうなんて夢を抱く子供達が減ったため、外国人の出稼ぎ力士を採用するしか、新陳代謝を補う方法がない。
「興行」である限り、それは見ている観客を楽しませるのが目的であり、現代では派手なパフォーマンスを観客は喜ぶ。まして今回の朝青龍は、今場所に賭ける意気込みもすごかったろうから、つい「やったー!」って気分で両手を突き出して、喜びを「思わず」表現してしまったのかもしれないことも、理解できる。ガッツポーズのどこが品格のない行為なのだろうか。そういう時代錯誤なことを取り上げて、やれ追放だ、引退だと騒ぐ相撲協会の方がどうかいしているような気がする。
ただ、朝青龍の態度は問題があると思う。場所後の記者会見も、遅刻してきた上に記者を睨みつけ、威圧的な態度で質問に答える。「どうなんだよ!」とか「お前、しつこいな!」という発言は、明らかに上から物を言っている態度であり、「大人げ」がない。こちらの方が、余程品格のない態度だと思う。マスコミにあれだけ叩かれたのだから、頭にくるのも分かるが、興行の基本は「お客様あっての」という精神であるはず。それから考えれば、お客様の代弁者のようなマスコミに対して、あんな態度はどうだろうか。
20代前半の若者が、身体がでかくて力が強い。それで大関だ、横綱と持ち上げられて、分不相応な大金も手に入れて、祖国モンゴルではでっかく事業を展開している。思い上がり、舞い上がるのも仕方ない。それをしっかり教育するのが親方の勤めであり、相撲協会の指導力だ。信号は青で渡れとか、道は一列で歩けとか、そんなことよりも、まだまだ若い青年に大金を持たせて、舞い上がらせてしまう谷町筋こそが、よく考えるべきではないか。
大相撲は興行でいいじゃないか!
ファンが楽しめる相撲を取ってくれれば、それでいいじゃないか!ゴルファーでも若い選手が数多く出てきているが、朝青龍ほど、「生意気な」態度をとる選手はいないだろう!そこが問題なんだよね!
ちなみに剣道においては、ガッツポーズをやると失格になるというルールがあるそうだ。武士の態度として、敗者に気遣いをしないガッツポーズは、いかんということらしい。まぁ~ね~