カナダのモントリオールに住む一人の青年が、物々交換だけで、家を手に入れる物語。カナダ版「わらしべ長者」のお話だ。彼はブロガー。ブログを通じて、手元にあった一本の赤いペーパークリップから、物々交換を開始する。
英語では、「Bigger or better」というらしい。本の中では、「ビッガー・アンド・ベター」と書かれているが、ブログのタイトルから見ると、どうや「大きいものか、いいもの」つまりORが正しいようだ。
この青年は、最初の赤いペーパークリップを皮切りに、魚のペン、ドアノブ、アウトドア用コンロと着実に物々交換を繰り返していく。しかも、インターネットを極めて有効に利用している。ネット時代の昨今では、最も有効なメディアは「口コミ」であることは、マーケティングの世界ではよく知られた事実だ。何億円の広告費をかけたCMフィルムよりも、有効な口コミ1件の方が、遥かに宣伝効果は高い。言ってみれば、この有効な口コミを実現するために、CMフィルムを作成していると言っても過言ではない。
彼のブログはネットを通じて、広く知られていく。まずラジオ局が反応し、メディアに乗っかることから、彼の物々交換は規模を大きくしていく。
何より興味深いのは、カナダ人やアメリカ人のこの活動への取組だ。決して個人として無理をすることなく、今の自分には必要ないものと、今の自分が興味のあることを、面白半分で交換していくだけであるということ。日本人だと打算が入って、こうは行かない。つまり「損得勘定」ってやつが紛れ込むと、これはうまく行かないような気がする。
いづれにしても、人生をあらゆる場面で楽しもうとする精神や、こういう個人の面白そうな活動に対して、非常にノリ良く対応したり、参加したりする大らかさが楽しい。