「チームバチスタの栄光」、「ナイチンゲールの沈黙」に続く、田口&白鳥シリーズの第3弾文庫化である。
舞台はチームバチスタ事件のあった、桜ノ宮市にある東城大学医学部付属病院だる。しかし、よくよく事件の起こる病院である。どうやらこの小説は「ナイチンゲールの沈黙」と同時並行して起こっているような感じである。伝説の歌姫が大量吐血で救急車で担ぎこまれシーンから始まる。この病院のナースが、たまたま歌姫のステージを見に来ていてこの吐血に遭遇。機転を利かせて、満床だという救急を説得し、東城大学付属病院へ担ぎ込む。
救急救命センター部長は速水晃一。伝説の救急医だ。過去、桜ノ宮市で起こったカタスロフィー、高速道路での玉突き炎上事故。これをニュースで聞きつけた速水は、前病院に緊急事態を宣言。ただの高速道路の事故じゃないかと軽く考えていた医師達のところへ、続々と患者が担ぎこまれてくる。それを一人で仕切り、全ての患者を救急救命したという伝説の医師。リーダーシップには、冷静さと強さが必要。流石に青ざめる速水に看護師長が差し出したのは、一本の真っ赤なルージュだった。これを唇に引き、懸命に救命に奔走した。それ以来、院内では彼の事を「ジェネラル・ルージュ」と呼ぶようになった。
その頃、不定愁訴外来の田口医師の所に、一通の匿名告発が届く。「速水医師は、業者と癒着している。」病院長の高階から依頼を受けた田口公平は、事実の調査に乗り出す。
徐々に明らかになる実態。癒着や収賄はあったのか。あった。しかし、その裏に秘められた、救急救命センター部長の大いなる憂いとは。また倫理問題審査委員会の介入、ドタバタ看護師の姫宮、そしておなじみ、厚生労働省の「火食い鳥」白鳥の登場。
速水の悲願、ドクター・ヘリの導入を目前に、彼は病院を追われてしまうのか・・・・
救急救命の問題は、いまやどこのチャネルでも日常的に見かけるニュースとなっている。妊婦を死なしてしまう現在の救急救命の実態、その問題点。何故、病院にはベッドがないの。何故、救命医師はいないのか。そういった現在の問題点を、一人の救命医の視点から見つめ、更に高度でかつ効率的な救命医療を目指すものと、予算や補助金との間に横たわる矛盾。果たしてこの汚職は、倫理上問題であるのか!
なかなかスピーディーな展開、コミカルな文体、投げかける問題の大きさと重さ。
そして未曾有の大惨事が、桜ノ宮市と病院を直撃することに!
やめられない面白さです。
評価:★5つ!