横山秀夫さんの売りは、「警察の内部をえぐる新境地」ってことで、どうも僕はこの、「警察内部の」ってのに抵抗があって、あまり手に取ることをしなかった。例えば、新宿鮫シリーズのような、刑事は個人で動き、組織はそれを閉じ込める。組織の理論は正義や国民の安寧ではなく、警察官僚による自己保身である。というような内容にちょっと食傷気味であったせいだ。
先週1週間は、風邪を引き、すっかり会社を休んでしまったので、結構読書の時間が多くて、ついにこの本を、手にとってしまった。もちろん、BookOffで。
さて、日本中を震撼させ、全国の警察が歯軋りをした、3億円事件の刑事時効が成立したその年に、一人の女性教師が、勤めていた高校の屋上から飛び降り自殺をした。その時は、死体の状況、屋上に靴が揃えて置かれていたこと、更に靴の中に自筆の遺書めいた紙があり、本人の筆跡と判断されたことから、単なる失恋による自殺として処理されていた。
ところが、所轄の警察署に怪情報がもたらされた。それは、女性教師の死は自殺ではなく、当時生徒だった3名の男子による、殺人事件だというのである。もしこれが真実であるとするならば、この殺人事件の時効まで、後2日しかない。上層部からの強い指示で、捜査本部が立ち上がる。しかし、もう15年も前の出来事であり、すでに証拠は残されておらず、事件は自殺として処理されたため、充分な資料もない。
この2日間におこる出来事が、物語の中心だ。3人の高校生は当時から落ちこぼれの不良達で、学校にも行かずに近所の喫茶店に入り浸っていた。その喫茶店の名前が「ルパン」。そして卒業をかけて3人の悪達が企てた計画は「ルパン作戦」。果たしてルパン作戦と女性教師の死には、関連があるのか。
卒業後、それぞれがそれぞれの生活を営んでいた。紆余曲折を経ながらも、サラリーマンとなり家族を支える生徒、身をやつし、ホームレスとなり公園で寝泊りしているもの、さらにはやくざの手先、チンピラとなり今でも警察のお世話になりながら人生を送るもの。これら3人を警察に呼び、別々に事情聴取を行っていく。
自殺した女性教師は、その魅惑的な体型から「グラマー」と呼ばれ、当時のディスコへ出入りするような、そういう派手な一面を持っていたことが判明。生徒との間に、恋愛関係はあったのか。ルパン作戦とは何か。それに時効を迎えたはずの3億円事件までが絡まり、息も付かせぬペースで物語は進む。最後に待っているのは、時効への秒読み。遂に時効成立か!ところが最後に大どんでんがえし!
一気に読まされた。
なるほど、これは面白い。
評価:★★★★★