【読書】カタコンベ 神山裕右 | なんのこっちゃホイ!

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hiyoyoのアメブロ日記


神山裕右著、カタコンベを読了。

江戸川乱歩賞の受賞作ということで、注目していたのだが、何故か単行本で買うのがおしくて、買わなかった。その後、最近になって文庫本が出たが、何故か情熱を失って、買うのをやめてた。


先週、図書館で偶然に見つけたので、借りてみて読んだ。ケイブダイビングという言葉は初めて聞いたが、洞窟の中の海とでも言おうか、地底湖とでもいうか、そういう所に潜るダイバーのことらしい。また派生して、未発見の鍾乳洞や洞窟へ潜り込み、測量して地図を作ることを趣味としている人のことでもあるらしい。


マイコミ平にあると言われている巨大な洞窟。まだ、誰も潜ったことのないこの鍾乳洞に、選りすぐりのダイバーを集めて、測量するというプロジェクトがある。始まりは、新しい洞口を発見したアマチュアダイバーが、そこへ潜り、正体不明の動物に襲われて、命を落とした。生き残りのダイバーによると、それは野生の狼で、描写からすると絶滅種である「ニホンオオカミ」である可能性が大きい。だとしたら、捕獲して保護する必要がある。そこで、大々的な探検隊を結成して、この鍾乳洞に潜ることになった。


いざ出発という時になって、天候が悪化、大雨が降り始めた。それでも探検を強行する一行。第1班が降下を始めたそのとき、洞口上部の崖が崩れて、入り口を塞いでしまった。あわててかけつけるレスキュー部隊。閉じ込められた第1班は、やむを得ず洞窟の中を進むことになる。洞窟は地下水路になっていることが多く、この辺りの洞窟は雨が降れば、水没してしまうものが多い。隣の洞窟ともしも繋がっているとすれば、後4時間で完全に水没してしまう。それまでに、第1班5人を救出しなくてはいけない。


レスキュー隊とは別に、別のルートからこの洞窟へ挑み、救出を試みる一人のダイバー。そのダイバーの目的は、第1班に含まれる女性助教授の救出であった。彼女とこのダイバーの間には、亡くなった彼女の父親との間に、ある特別な事情が隠されていたのだ。


迫り来る時間、闇の中の行軍、竪穴の恐怖、更に、誰も入ったことがないはずの洞窟でみつかる白骨死体。正体不明の動物の恐怖。そんな中、一行は果たして無事に地上へ戻れるのか。


読み始めると、ハラハラドキドキしながら読めてしまう。また、スキューバ・ダイビングにおける事故の恐怖や、巻き込まれる事故での、自己防衛のための殺人、あるいは、思わぬミスによるバディーの死。とにかく、常に死と隣り合わせのゲームだ。そう、これはゲーム。自らの命をかけたゲームなのである。どうしてそうまでして、そんな穴に潜りたいと思うのか。


幼い頃、空き地や山の中で作った秘密基地。そのためには、その山の中を探検せねばならない。抑えようのない好奇心と、ヒロイズムに満たされた、何ともいえない高揚や興奮。その延長線上に、これらケーブダイバーはいるのだろう。最後まで、一気に読まされてしまった。


評価:★★★★★