全日空の全面的協力を得て、矢口監督が作った、空の映画。主演は、綾瀬はるか。
機長昇格を目前に控えたコーパイの鈴木は、シミュレーター訓練で、海に墜落するという、ちょっとトボケたコーパイだ。彼の昇格をかけた、最後のテストフライトは、羽田発ホノルル行きのチャーター便。期待していた優しいユルーい機長は、急遽風邪でとべなくなり、代わりにスタンバイの機長、原田が飛ぶ事に。社内でも有名な細かく厳しい機長ということで、緊張する鈴木。制帽をかぶらないことを注意されたり、細かい注意をいくつも受けて、緊張は高まるばかり。
フライト前の期待チェックで、エンジンスターターの不調と、右のピトー管の不具合が報告されるが、定時出発を絶対とするグランド・チーフの方針もあり、どちらかしか調整できない。エンジニアの判断で、エンジンを調整したが、ここでもドック整備士とライン整備士の間で、もめごとが・・・・ 不安を残したまま、原田機長から、「どうするんだ!」と決断を迫られる鈴木は、ピトー管には予備があるので、このまま飛びたいと判断。
一方、グランドスタッフも問題山積みである。エコノミークラスが3席オーバーブックされていることが判明。ビジネスの乗客1名をファーストクラスへアップグレード、空いたビジネスにエコノミーから3人をアップグレード。さて、だれをアップグレードするのか。ビジネスクラスにリゾートばりばいの乗客は乗せられない。そこで、ハネムーンの一組と、ビジネス風の1名をアップグレードすることに。これが問題の乗客だとは露しらず。ハネムーンの新婚さん、新婦はいきなり飛行機から飛び出して、「墜落するのが怖い」とトイレにこもってしまう。グランドスタッフの度重なる説得にも応じない。チーフが説得にあたるが、さすがの話術を発揮、ついに新婦を搭乗させることに成功。もう1名のビジネス風の客は、キャビンサイズを超えた荷物を手荷物として持ち込もうとする。貨物室に入れるというキャビンクルーと揉め事に・・・・
波乱万丈のフライトは、ようやくドアクローズして出発することになる。この間に、デパーチャー管理のスタッフの仕事や苦労、管制塔の様子等が描かれて、なかなか楽しい。
機長昇格をかけたフライトは、いよいよ出発である。エンジンを全開にして、B747-400は滑走路上を速度を上げて疾走する。V1(離陸決心速度)からVR(機首上げ速度)。そしてついに大空への舞い上がった。ところが、かもめの群れと遭遇、離陸直後にかもめの群れとぶつかってしまう。エンジンには吸い込まなかったものの、不安をつのらせる設定だ。
キャビンでは、クルーが飲み物のサービスに続き、食事のサービスを始める、最も忙しい時間を迎えている。ファーストクラスでは、この日、全日空自慢のデザートをサーブする予定で、その準備も進められる。エコノミーでは、肉料理が足りないとクレームを出す乗客に、パーサーは「ちゃんとバランスを取りながら配りなさい」と見本を見せる。詳しくは忘れてしまったが、「XXを使った白ワインソースにバジリコと、XX岩塩を使った、白身魚のソテーと、肉料理を用意しています」というと、たちまち乗客は、「魚をくれ!魚だ!」と注文し始める。さすがにパーサーだと、新人アテンダントの斉藤悦子(綾瀬はるか)は関心し、同じように説明を。「XXを使った白ワインソースにXX岩塩を使った白身魚のソテーと、「ただの」肉料理です!」肉を食べてる客は、驚いてしまうというお笑いの場面。これ、現実にあるよ。僕もしょっちゅう飛行機に乗るし、ビジネスもエコノミーも利用するが、こういう売り込み方をされる場合があるもんね!ほんと。ちなみに、キャビンアテンダントに喜ばれる対応ってのがある。それは、「僕は急がないから、一番最後に余った方でいいですよ」ということ。これはエコの場合。ビジネスの場合には、「僕は和食がいいけど、今日は混んでるみたいだから、数が合わなくなったら言ってください。ボランティアーしますよ。どちらでもいいです」ということ。これで、大層スペシャルなサービスを受けることができます。結局、機内を快適に過ごすには、キャビンアテンダント(昔はスチュワーデスと言った)と、いかに良好な関係を築くかってことですよ。絶対に。
それに比べて、大きな荷物を持ち込み、エコノミー運賃しか払ってないくせに、アップグレードでビジネスに座ってしまったお客の偉そうな態度。いるんだなぁ~、こういうお客。本当にこの映画、全日空が協力しているだけあって、「あ~、あるある!」と言いたくなるような場面が随所に出てくる。
そんな機内の喧騒の中、コックピットでは別の問題が。かもめの群れに気を取られた鈴木は、誤って小さな雲の中に入ってしまう。雲の中は水蒸気の塊だから、当然機体がぬれる。そのまま上昇すれば、塗れた機体は凍結する。不調の右のピトー管に水蒸気が入り、ピトー管が凍結。ヒーターは故障で動かないわけだから、右のピトー管は死んでしまったわけだ。あわてふためく鈴木。どうする!と迫る機長の原田。「左だけでいきます。」と決断を伝える鈴木。ピトー管というのは、機首についているアンテナみたいな管で、その名の通り、中は空洞の管である。ここを空気が通りことで、対気速度を計っている。言ってみれば、スピードメーターだ。これが使えないと、飛行機がどれくらいの速度で飛んでいるのか分からない。速度は飛行機にとっては非常に重要なファクターだ。速すぎても遅すぎてもストール(失速)を招く。ほどなくすると、キャビンからの連絡が。「乗客の一人が、翼の周りで鳥を見たと言っています。それで、窓から良く見ると、主翼に血のようなものがついているのですが」機長は急いでキャビンへ降りていく。「確かに血のようでもあるが、油のようにも見える」「でも、色が少しずつ変わっているようです」と話しているときに、突然目の前に鳥の羽が飛んでいる。クルーは見たが、機長は見ていない。その時、急激な揺れが機体を襲う。頭上の棚から落ちてくる、例の乗客のでかい荷物を、機長が両手で受け止めた。この時、彼は右手に傷を負う。
一方、空港である。羽田にはたくさんいるが、飛行機マニアの連中だ。飛行機の写真をとったり、アテンダントの写真を撮ったりして、WEBに公開するようなマニアだ。それが、国内線の待合椅子に座っている。グランドのスタッフが近づき「いいかげんにしてよね。そこはお客さんが座るんだから。早くどいて!」「でも、さっき飛んでいったB747-400に鳥がぶつかった写真があるんだ。」それに気を止めないグランドスタッフ。「いいから、そこは優先席よ。早くどきなさい!」
ゆれる機内で機長がコックピットへ戻る。「どうした!」「それが、ストールの警報がなりまして、速度が分かりません。今、エンジンを全開にして速度を上げるように、頭を下げたところです」しかし、揺れは収まらない。速度はどんどん低下している。ベテラン機長の原田は「違う!これは速度が速すぎるんだ。エンジンを絞って、頭を上げろ!計器を信じるな!」鈴木がエンジン出力を絞ると、揺れが収まる。「どうなってるんだ。速度はどんどん下がっている。」何が起こったのか?「さぁ、どうする?離陸して2時間半だ。」 「戻りましょう!羽田へ!」鈴木の判断は、羽田へ戻るということだ。早速、東京コントロールへ連絡。「不具合発生で戻りたい。機体は制御できているが、計器が信用できない。羽田へ戻る」 オペレーションコントロールは騒然となる・「どうしますか?緊急事態を宣言しますか?」 「緊急事態を宣言する!」さぁ大変だ。早速羽田周辺の気象情報を集めると、大型の台風が接近しており、ちょうど戻る時間に羽田上空は、台風に見舞われる。台風になると、風が定まらないし、予想ができない。それを聞いたグランドスタッフは、あることに思いつく。「さっきのマニアが、何か言ってた。鳥があたったとか何とか・・・・」大慌てで空港ロビーへ駆け戻り、そのWEB画像をチェックする。「機首に何かひっかかってるなぁ、これはなんだ。拡大してみろ」すると、左のピトー管に鳥が突き刺さっていることが判明。これでは、速度が正しく測定できない。
さぁ、機体は速度計を失った状態で、台風の最中、空港へ緊急着陸しなければならない。果たして、無事に戻れるのか!
時々、「ありえないよなぁ~」という場面はいくつも出てくる。緊急着陸態勢に入っている機内で、シートテレビを見ていたり、ありえない状況もあるが、かなりディテールにはこだわっている。基本的には矢口監督の映画だから、コメディータッチだが、飛行機を一機飛ばせるために、いろんな人達が関わっており、それぞれが忙しく働いているんだということが、描かれる。
もちろんハッピーエンドだよ!これで墜落したら、全日空はおしまいさ!
でも、なかなか楽しめる映画ですよ。特に、出張の多い人や、飛行機のメカニズムに詳しい人には、楽しい映画だと思います。妻は、飛行機にも乗らないし、メカも知らないけど、やんやの喝采で、大いに楽しんでおりました。
PS::綾瀬はるか、いいなぁ~ アーモンドみたいな目がいいなぁ~
評価:★★★★★