【読書】機本伸司著「メシアの処方箋」 | なんのこっちゃホイ!

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「神様のパズル」に触発されて、機本伸司の著書を読み続けている。その第2弾「メシアの処方箋」のご紹介です。


この人の本は、「ハルキ文庫」から出版されているので、どうも表紙の装丁が少女っぽくて、手にするのが少し恥ずかしいわけですが、内容は結構、シビアに科学的です。どうも「何かを作る」ことが大好きなようで、前作「神様のパズル」では、宇宙を作る事に挑戦していましたが、今回は何を創るのでしょうか。


主人公は土木建設会社に勤めるサラリーマンで、どうもうだつが上がらない。そんな時、上司に命じられたのが、インドのカシミール地方にある氷河湖決壊防止工事の担当。単身赴任でインドへ出向く事になりました。何が原因かは分からないけど、前任者は自殺してしまったという、なにやらいわくつきの任地です。


行ってみれば、そこは何もない山の中で、もちろん日本人は一人だけ。そんな環境で、現地人を使って決壊防止工事をやらねばならないのですから、なるほど精神的な苦痛は想像がつきます。


さて、お話はここから。

恐れていた氷河湖決壊が、ある日突然、現実のものとなってしまいます。氷河湖が崩れ、せき止めていたダムに向かって大量の水が流れ込みます。命からがら脱出に成功した主人公。ところが、この崩壊が運んできたのは水だけではなかったのです。その氷河湖の底から浮上してきたのは、何と5000年前の木でできた舟。まるで「ノアの方舟」のような大きな舟と、その中からみつかった木櫃には、厳重に保管された木冊が大量に発見されます。それら木冊には、蓮の花と見られる模様が書かれており、それが一定の規則性を持って並んでいることが分かります。インターネットでクイズを装って答えを募集してみると、中に一つ以外な回答が。「塩基配列に似ている。」そのネットオタクも交えて、この木冊の解読を進めていくと、どうやらそれは紛れもなくDNAの配列を表しており、しかも人間のものにも近く、チンパンジーにも近いという、この世にないような配列であったのです。これをコンピュータを使ってシミュレーションをしてみた結果現れたのは、背中に3対の触手を持ち、それらは膜で繋がっており、額には第3の目があるという、信じられないものでした。そのものが、その後どのような成長をするのかは、さすがのコンピュータでもデータが足りずシミュレーションができません。誕生から10ヶ月までしか、計算できないのです。


この生き物は何か。10ヶ月をすぎると、どんな進化をするのか。

これらに興味を持った人々が、それぞれ資金と設備を持ち寄って、実際にこの配列を創ってみることになりました。もちろん人工授精が必要です。子宮を貸してくれるボランティアーの女性も必要です。


こうして主人公達は、禁断の「DNA操作による生命の創造」へと進んでいきます。


こうして生まれてきた「それ」は、一体何なのか。何のために創られたのか。誰が、何のために創った配列だったのか。もう、まっしぐらにラストへ向かって進みます。


これ以上はネタバレになるのでやめときます。面白いですよ!


評価:★★★★★(満点!)