前回紹介した「床下仙人」の作者、原宏一の作品の2作目、天下り酒場を読了した。面白いわぁ~
これも短編集である。
①天下り酒場
②資格ファイター
③居間の盗聴器
④ボランティア降臨
⑤プラッシンク・エクスプレス
⑥ダンボール屋敷
①小さな居酒屋を経営していた主人公のオヤジは、常連さん相手に細々と商売をしていた。それでもバイトのお姉ちゃんは雇い、それなりに評判もよかった。そんな時、一人の常連さんから、県庁のお役人を一人、天下りを雇ってくれないかと頼まれる。早速やってきた天下りさん。最初は洗い物仕事などをこなしていたが、流石に役人さんだけあって、PCを導入した経営管理をやろうといいだす。仕入れの無駄、マニュアルがないので、バイトの対応もだめ、在庫の管理も駄目。天下りさんの経営管理のお陰で、急速に居酒屋の経営は向上、更に役人のコネクションで、これまで常連一本であった居酒屋に役人が大挙して飲みに来るようになり、売上は急上昇。ついには株式会社にして、2号店を出店するまでになる。しかし、少しづつ何かが狂い始めていることに、主人公のオヤジは気づくのであった。天下りの問題点とは・・・・
②資格ファイター
縁故で入手した主人公は、期待の新人であったが、全く仕事ができないことが会社に知られ、かといって縁故であるのでクビにもできず、閑職に追いやられていた。ところが、この男、受験だけはすばらしい才能を持っており、資格試験に合格することだけを生きる楽しみとして100を超える資格を取得していた。そんな時、元芸能プロダクションの社長という男と資格試験発表会場でであったことから人生が変わり始める。なんとその元プロダクションの男は、彼を「資格ファイター」というキャッチで、世間に売り出すというのだ。ファイターである限りは、ライバルが必要だ。この二人を、「日本一難関な資格に挑む」ということで、TVに売り込んだ。順調に売れ始めた資格ファイター。しかし、その裏に思わぬ落とし穴が・・・
③居間の盗聴器
自宅のTVの裏にコードがとぐろを巻いてる。その下に、小さな黒い箱を見つけた主人公。この箱は盗聴器であったことから、誰が、何のために仕掛けたのか、どうしても調べたくなる。私立探偵に依頼して、奥さんの素行調査から始めたのだが・・・・
④ボランティア降臨
一家のおばあちゃんの面倒をみますという触れ込みで、ボランティアーがやってくる。おばあちゃんはこのボランティアを大いに気に入る。奥さんは近所のスーパーでバイトをしている。少しづつ家族の様子が変わり始め、ボランティアーのおばさんが、主婦の座を脅かし始めた。果たして、このボランティアーおばさんの目的は・・・・
⑤ブランッシング・エクスプレス
歯科医院を潰してしまった歯科医が思いついた新しいビジネスとは、「出張歯磨き」であった。ためしにやってみた主人公は、その心地よさにすっかり酔ってしまい、このビジネスをもっと大掛かりなものにしようと提案する。昼間のブラッシング、夜のおねえさんのためのブラッシングと、商品をそろえて、二人で手分けして出張歯磨きを広めていく。一見順調に見えた歯磨きビジネスだが、昼と夜という市場の違いから、すこしづつズレ始める二人。
⑥ダンボール屋敷
親父が失踪してから、母親の奇癖が始まった。「安かったから」と言って、歯磨き粉や歯ブラシ、ティッシュペーパー等をダンボール単位で大量に購入するようになった。これをとがめた主人公、失敗に気づく。母親のこの「大量購入癖」の裏にあったのは、失踪した父親に対する愛情であったのだ。ついには、洗濯機や冷蔵庫まで大量購入をしてしまい、庭にブルーシートを引いて置いたまま。そして当然だが、闇金から取り立てがやってきた。貯金をはたいて母親の借金を返済した彼は、ついに対策を思いつく。母親の大量購入癖を止めるため、彼がとった対策とは・・・・
とにかく、奇想展開で笑わせてくれる本です。