とにかく病気の時にはやることがない。昼間のTVがいかに下らないかを思い知った。ふと思い出したが、「下らない」の語源についてだ。昔、食の都は浪速であった。秀吉天下の頃、政治の中心も大阪であった。しかし、家康の努力で江戸は栄えていた。大阪で受けたものや、上手いものは、江戸へ送られた。つまり、「下った」わけである。大阪でもつまらないものは、江戸でもうけないので、それは「下らなかった」。だから「つまらないもの」や「美味しくないもの」のことを「下らない」と言う様になったと、雑学本で読んだが、嘘か本当か知らない。
さて、異端の女性民俗学者「蓮丈那智」のフィールドファイルシリーズの第3弾である。蓮丈那智は、薄い唇を持った魅力的で美しい女性だが、民俗学の常識を覆すような論文を発表するという異端児でもある。美しい外見とは裏腹に、その頭脳は明晰で沈着冷静、事実を積み上げて推理し、学説にまとめるという優秀な学者でもある。
この蓮丈那智のゼミに勤める助手の内藤三國がワトソン役ってとこでしょうか。フィールドワークと称して、地方を調査して回るのだが、必ず殺人事件に巻き込まれ、新たな民族学上の発見や、新説を打ち出すと同時に、事件まで解決してしまうというお話。どこかホームズちっくな香りがする。
今回の短編集は、①憑代忌 ②湖底祀 ③棄神祭 ④写楽・考 の4作が納められている。
北森鴻と言えば、蓮丈那智シリーズ以外にも、いくつかあって、どれも面白い。薀蓄もすごいが、それぞれの主人公の個性が楽しくて、いつも一気読みしてしまう。
今回も、今月読もうと思って買った4冊の内の1冊であったが、病床にあって一気に読み終わった。もし見かけることがあれば、一度手に取られる事をお奨めします。もちろん、好き嫌いは好みであって、皆さんのご判断にお任せしますがね。