トルデジアン2018・アラ還暦オヤジの挑戦③ ~大失敗の3‐4日目~ | カッコイイおじいを目指すランBAKA院長のトレーニング診療日誌

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ウルトラランナー・トライアスリート院長の加齢と闘うドタバタ奮闘記

    ”Tor des Geants” (トルデジアン/巨人の旅)

 

トルデジアンは、イタリア北西部アオスタ自治州の山々で開催されるトレイルレース。

総距離330km(200マイル)、累積標高差は2万4000mD+、を制限時間150時間(6日+6時間)で

  1 モンテ・ビアンコ(=モンブラン・4810m)、
  2 グラン・パラディーソ(4061m)、

  3 モンテ・ローザ(4634m)、
  4 モンテ・チェルヴィーノ(=マッターホルン・4478m)

等アオスタ自治州を囲む4000m級の4つの名峰(4人の巨人)を望みながら進む巨人の旅です。

 

スタート&ゴールは、アオスタ川のリゾート地、クールマイヨール。(UTMBのほぼ中間地点)

レースコースは、アオスタ自治州の山々を反時計回りにぐるりと一周する。

トレッキングルートであるAlta Via1(アルタ・ヴィア:天空の向こう)とAlta Via 2をつなぎ

標高2000mを超える25の山々、30の山岳湖、2つの国立自然公園をノンストップで走ります。

 

2018年は9/9(日)~15(土)の7日間で行われます。

   ※4人の巨人には登りません。周囲の山々を走ります。

 

                    < 夜が明けると眼下に雲海 >

 

   「コーダ小屋 (中間点・169,3キロ地点) に (身体の) 問題なく行ければ完走できる。」

今となっては、いつ誰から聞いたのか覚えてませんが、この言葉と初日に聞いた

   「ヴァルグリセンセ(第1のライフベース)に午前2時(スタート後14時間)までに行ければ完走できる。」

この二つの条件が、私の頭の中で完走の絶対条件になっていました。

 

私の計画では、中間点『Rifugio(山小屋) Coda』に4日目(D‐4)・午前1時30分/63,5時間に着く予定。

そこからが本当のトルデジアンだと思っていたため、『コーダ小屋』という言葉に過剰に反応します。

 

そしてこの3日目(D-3)は、第3のライフベース(LB)『ドンナス』(151,3キロ地点)までの45,1㎞。

その間2827mの山を一つだけを行く、楽なコース設定になっています。

 

  …そしてこの日、『コーダ小屋』に過剰反応してしまったため、ゴールまで苦しむ大問題が発生。

 

     < バード要塞・ナポレオンの進行を食い止めるための要塞。現在は美術館。 >

 

第2のLB『コーニュ』(106,2キロ地点)の出発が,「3日目(D‐3)」の午前3時11分(39:11:19)。

5時間28分滞在し、約4時間ほど眠れ、身体はまだノープロブレムで快調に進める状態。

 

『シャルドネ』(133,2キロ地点)通過が、「D-3・午前10時37分/46時間37分」。

美しい牧草地のここが、あのワインで有名なシャルドネなんだろうか?

 (高低表では『Chardonney/シャルドネ』とあり、結果表では山頂の『Chanporcher』とあります。)

 

ほとんど分からない緩やかな下りが、牧草地から美しい田舎町までずっと続いて第4LBの『ドンナス』へ。この間多くの日本人と出会って話しながら進みます。

 

低い草地を下っている時、ホテルで同室のタナダさんが追いついて来ました。

しばらく話したり写真を撮ったりした後、タナダさん曰く

「今日はボーナスステージだから、頑張ってコーダ小屋まで行きます。」と言って消えて行きました。

 

「え?そうなの! コーダ小屋って中間点じゃん。もうそんな所まで来てるの?」

計画・高低表を見るとドンナス(151キロ地点)を過ぎれば、程なくコーダ小屋だと気付きます。

 

  (そして、ここでつまらない欲を出してしまったため、後々大きな後悔をする事に。)

 

「計画では、コーダ小屋に明日午前1時半到着。今日中に着けたらいいなぁ。身体軽いから走ろうか。」

走ってみるとそれほど辛くない「なんだ、走れるじゃん。」 で、ゆっくり走り続ける事に。

  (しかし、初日のバナナさんの言葉「登りと平地は走らない…」が頭をよぎる)

でも、ゆっくりだし走れるんだから走ろう…

 

牧草地で、ある選手から「どの位でゴールする予定ですか?」の質問に、「126時間です。」と答えると

「今、ここだと140時間位ですよ。睡眠時間を削らないと…」

「え?そうなの!」と慌てるも、これ以上のムリはどこかで潰れるかも知れないし、睡眠も削れない。

じゃあ、頑張って走れる所は走らなきゃいけないなぁ、と少しムリを始めます。

 

林道を下り、ドンナスの町はずれに入る頃、右足の甲に違和感を感じ始め、次第に痛みになって来る。

強くなる前に、靴紐を緩めて歩く… しばらく行くとやはり痛むので完全にデロデロに緩めて歩く。

先程抜いた、歩きのイギリス人と中国人グループに抜かれるも、なんとか彼らに付いて行く。

この時から走る事は封印、なんとなく走らなければよかったような後悔が湧いてきていました。

 

            < LBドンナスの外観。手前はドロップバッグを運ぶ車 >

 

私のシューズは『モントレイル/マウンテンマゾヒスト4』で、過去同モデルを1~3まで使ってきました。

比較的軽量でクッション性が高いので、「3」を履いて『スパルタスロン/ギリシャ246㎞』も完走しました。

「コロンビア・モントレイル」になった4は、ソール形状は同じでも素材が違う、全くの別物になりました。

 

一番の違いは靴紐で、細くなって一発で締まりシューレースロックで締めるため結ぶ必要がない。

富士山で使ってみると路面の喰いつきも良く、前よりも良い感じなので安心してTDGに投入しました。

ところが…

 

私の靴紐の締め方は、足先をしっかり締め、甲部分は緩め、足首はガチガチに締めます。

黒爪は、靴の内部で足が動いて指先がシューズに当たるため起こります。

私は、5ミリ大きいサイズで上記の締め方をして黒爪を予防してきましたが「4」ではそれができない。

 

足先・足首を締めて甲部分を緩めても、いつの間にか均等になるため、全体をガチガチに締めます。

これが原因で甲部分に痛みが発症、さらに両足第5指が当たって黒爪になってる感覚。

   さて、どうしようか…   あ! いい方法がある!

 

                 < 上・マウンテンマゾヒスト4/下・同3ゴアテックス>

 

ドロップバックに、寒冷時に使うため太い靴ヒモの『マゾヒスト3/ゴアテックス』を入れておきました。

感覚が変わるため、過去レース中にシューズを変えた事はないのですが、今回はドンナスで変更。

 

ゴアは暑いのですが、サハラマラソンでもゴアを使ったし、履いた違和感もほとんど気にならない。

太い靴ヒモは、思い通りに締められるのでこれで正解。

2泊3日の100マイルでは気付かないトラブルであり、マゾヒストのヒモは太いのに戻して欲しいですね。

 

甲部分の痛み緩和と、シューズを変更して安心してしまったため、後で悔やむ大失敗をする事に…

この時、何となく足の裏で悪魔が育っていた事に気付いていたのに、対処を怠ってしまった…

 

            < ドンナスのLB。大勢の仲間達に会えました。 >

 

第4のLB『ドンナス』(151,3キロ地点/標高330m)到着がD‐3・午後14時51分(50時間51分)。

ここは多くの日本人が先着して食事を摂っていました。

数人は仮眠を終えて間もなく出発、数人はこれから仮眠を取るとの事。

 

私は、まだ午後2時なので、コーダ小屋(169キロ地点/標高2224m)まで登る覚悟。

しかしトイレを済ますと突如眠気が襲い、建物外の販売ブースの後ろの日陰で仮眠を取る事に変更。

30分ほど眠りました。

 

 < ドンナスLBの販売ブースの後ろで30分の仮眠。ブースのお兄さんがマットを貸してくれました。 >

 

するとセキヤさんが来て、「仮眠所は暑くて眠れないので出発する。」との事で一緒に行く事にしました。

セキヤさんは銀座の肉バルのシェフで、料理と日本酒に詳しくいろいろ教えてもらいました。

また、ドンナス名物の『悪魔くん』と写真を撮ったり、「コーダ小屋でステーキ食べよう。」やレースの事

等いろんな話しをさせて頂きました。

 

                       < セキヤさんと悪魔くんと >

 

                  < ドンナス名物・イケメンの悪魔くん >

 

しかしコーダ小屋への登り途中で、急にセキヤさんが遅れだし、体調不良の様子。

一緒に仮眠を取る申し出をするも、私に気遣って固辞するため、セキヤさんがやりたいようにできるよう

敢えてここで別れました。

 

コーダ小屋手前の『ラ・サッサ』(164,9キロ地点/標高1305m)通過がD‐3・午後22時07分(58時間07分)。

わずか4,4㎞で900m登って『コーダ小屋』(169,3キロ地点/標高2224m)到着。

はっきりした時間は不明ながら、D-4・午前0時ごろではないかと思います。

 

                 < ラ・サッサで地元の人たちの楽団 >

 

とにかく疲れていました。

スープとトマト・スパゲッティを食べて、すぐ寝るためベッドルームに案内してもらう。

一つのベッドに二人で寝る感じで、掛布団はコタツ掛けのような正方形を渡される。

正方形の布団を二つ折りにして、間に入って眠りました。

まだ汗は引かず、とりあえず汗とホコリまみれのシャツとパンツと靴下だけ脱いであっという間に眠る。

 

2時間ほどで目覚め、ボーっとしている頭で、思い出したステーキを注文したのが午前2時位か。

面倒くさそうに「そんなものは無い」みたいな素振りなので、仕方なく出発する。

『Rif バルマ』(178,0キロ地点/標高2040m)を、まだ暗いD‐4・午前6時14分(66時間14分)通過。

 

そして…  バルマから下っている最中、足裏の悪魔にハッキリと気付く。  

両足裏の指と踵にいくつかマメができている。

早くマメ防止のクリームを塗らなければいけないと思うも、ここで靴ぬ脱ぐ気にならず下り続ける。

 

『ニイル』(192,9キロ地点/1573m)を、午後13時26分(73時間26分)通過。

マメはさらに大きくなってハッキリ痛みを作っている。 

  「やっちゃった。 これはマズイ事になる… ああ、走るんじゃなかった…

   バナナさんの言う事聞けばよかった… ちゃんとクリーム塗っとくんだった…」

悔やみながら第4LB『グレッソネイ』(205,9キロ地点/1329m)に、D-4・午後16時11分(78時間11分)到着。

                                             ~第4話に続く~

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