あんなにかっこいい「GO!」の掛け声は、そうはない。
ビートルズの名盤ホワイトアルバムC面に収録されている「エブリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー」の最後のジョンのシャウト「ヘイ!」と肩を並べるくらいカッコ良い掛け声だった。
そのGO↓
その掛け声の主は堀琴音。
若林舞衣子とのプレーオフ3ホール目、第2打を放った直後の「GO!」だった。
グリーンに届くかどうか、のように見えたこのショットは、まるで掛け声の後押しを受けたかのように舞い、うまくカラーに落ちてピン手前3mにナイスオン。
一方、3オンから7mのパーパットを残した若林。今大会3Rから一度も叩かなかったボギーが残念ながらここできてしまった。
堀のウイニングパットへの足取り、何度も会釈を繰り返し、照れくさそうにタップイン。
笑顔で両手を上げてのガッツポーズだったが、あっという間にぐしゃぐしゃの泣き顔に。これには画面越しに見ていた私もびっくりして、ついつい泣いてしまった。
突然のドライバーイップスに襲われ、シード権を喪失した2018年シーズン(34試合出場で27試合予選落ち・2試合棄権)、ステップアップツアーでも予選落ちが続いた2019年、コロナ禍の2020年は3試合の出場すべて予選落ち。
そのような文字通り“失うものなんて何にもない”状態で迎えた2021年ダイキンオーキッドレディス。1番ホールの第1打がダメだった堀は、帯同の森コーチにこう告げた。
「次のホールからフェードで行きます」
堀琴音の復活劇はここから始まった。
思えば2016年の女子オープン、当時アマチュアだった畑岡奈紗に最終ホールでかわされ2位で終わったときに「プロがアマチュアに負けるわけにはいかなかった」と悔し涙を見せて以来5年、ようやく歓喜の瞬間が訪れた。
こっちゃん、おめでとう! よくがんばった!
しかし本戦を見ていた限り、まさかこういう結末になるとは思わなかった。K-1に例えるなら“ミスター・パーフェクト” アーネスト・ホーストのような安定感でサンデーバックナインに入ってきた若林舞衣子に食いついた、“ザ・ビースト” サム・グレコのような猛烈なラッシュを見せた堀琴音。
「絶対に逃がさない!」
こんな声が聞こえてきそうな気迫だった。
菊地絵理香選手以外に、あれほど「この人に優勝してほしい」と思った試合はないかもしれない。