「来年の目標は“挑戦”ですね。まだまだ課題がたくさんありますから」
昨季のJLPGAアワードにおいて、年間女王を含む5冠に輝いた山下美夢有の会見での言葉だ。
「みなさん、私に(上手いと)言ってくれますけど、ショットの分析力などの精度をこれからもっと上げていかないと(厳しい)。強い体を作るのも大きな課題のひとつです」
平均ストローク70を切ってもさらに精度を上げてくるとのこと。この山下を倒す者がこの先果たして出てくるだろうか。何人か頭に浮かんでは消え、そのまま2022年は暮れた。
永久シード獲得に向けてまず1勝
3月沖縄。平年通り「ダイキンオーキッドレディス」で2023年JLPGAツアーが開幕した。
このオープニングゲームに勝利したのは、昨年両肘手術の影響で未勝利だった申ジエ。日本ツアー通算27勝目をあげ永久シードまであと3勝とした。
第3戦「Tポイント×ENEOS」では青木瀬令奈が、第5戦「ヤマハレディース」と第9戦「パナソニックレディス」と立て続けに穴井詩が勝ち、序盤はベテラン勢の活躍が目立った。特に「ヤマハ」の穴井とささきしょうこのプレーオフは、前半戦1番の名勝負といえるだろう。35歳にして今もなお飛距離上位をキープしている穴井が「今年はアドレスを見直し、方向性を重視した」と話していた。それによりパーオン率が大きく改善されて、今季9戦2勝といきなり結果がついてきた。(ヤマハの勝利の瞬間の2度のガッツポーズは男前だった)
アニキのガッツポーズ
山下と岩井姉妹がツアーを引っ張る
4月に入り「富士フィルム・スタジオアリス」で山下美夢有が今季初優勝で本格始動。翌週「KKT杯バンテリンレディス」で岩井明愛が初優勝。すでに昨季初優勝を果たしていた双子の妹・千怜が、明愛に駆け寄りハグをした姿に、私を含め涙した人は多かったことだろう。山下と岩井姉妹この3人がツアー序盤戦を引っ張っていくことになる。
美しい姉妹愛に私ももちろん泣きましたよ
今季最初のメジャーチャンピオン
その他3~4月は「明治安田生命」で吉本ひかるが、また「アクサレディス」において、“史上最大の下剋上”、“宮崎のシンデレラ”と呼ばれた山下日菜子(なんとQT181位)、そして「フジサンケイレディス」でプロテストトップ合格の神谷そらがそれぞれ見事な初優勝を果たした。
5月。10戦目にして今季初公式戦「サロンパスカップ」では、初日から過酷なピンポジションにオーバー・パーの選手が続出するサバイバル・レースとなったが、吉田優利が見事にメジャー初制覇。優勝スコアは+1。これにより3年シードの権利を得た吉田は、今シーズン終了後に米ツアーへの参戦を決意する。
さて、ここまで一切登場がなかった菊地絵理香選手。日本史における「空白の4世紀」のように資料が極めて少なく、その動向が気になっていたところだったが、ついにここで表舞台に。ただ、妹のようにかわいがる吉田のメジャー制覇をお祝いしようと、雨の中18番ホールで待つ優しいお姉さん役としての登場だが。
優しいお姉さん役の絵理香選手
第11戦「RKB×三井松島レディス」では、山下、岩井姉妹による3人プレーオフが実現。千怜が今季初優勝を決めた。台本があるかのようなこの展開に現地はたいへん盛り上がった。この試合で岩井明愛がやった「直ドラ」が、今後岩井姉妹の代名詞となっていく。プレーオフが行われた18番はパー5だったが、岩井姉妹と山下ではかなりの飛距離差があった。
第12戦「ブリジストンレディス」では先週敗れた山下が千怜へのリベンジを果たし今季2勝目。その完璧な4日間は見るものを魅了した。
開幕から調子の上がらない菊地絵理香選手だったが、今大会15位フィニッシュで今季初めてリーダーボードの1ページ目に登場。ショットとパットが噛み合ってきたとコメント。この時点でランキングはなんと65位。だが逆襲の準備は整った。
5月最後の大会「リゾートトラストレディス」。山下美夢有が2週連続今季3勝目。スタートが良くなくても確実にアジャストしてくるこの修正力、山下にとって4日間とは十分すぎる時間なのだ。
さて、絵理香選手である。初日首位で出て今季初のトップ10フィニッシュ、ランキングも46位とようやくシード圏内に入ってきた。昨年大東建託で優勝したときの良い流れが出来つつある。6月のニチレイかアースあたりでチャンスがきそうだ。
(いつか)優勝するモードに入った
2023.12.5.16:35 了