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 昨日、山梨県立文学館で映画「荒野に希望の灯をともす」(谷津賢二監督)の上映がありました。この映画はアフガニスタンとパキスタンで病や貧困に苦しむ人々に寄り添い続けた医師・中村哲の生き様を追ったドキュメンタリーです。中村医師の業績と生を伝える機会が山梨で持たれるのが尊くて主催の末席に加わってお手伝いをさせていただきました。



 会場はほぼ満席で中村医師に魅かれる人の多さを窺い知ることができました。



 今回の上映会では、映画の前に撮影・監督した谷津賢二さんからお話もありました。中村医師の人間味あるエピソードなどが紹介され和んだ雰囲気で映画を迎えられました。



 映画は、なぜ医者である彼が井戸を掘り、用水路を建設したのか?という問いをめぐって展開されます。

 日本で精神科医として勤務していた中村医師が、パキスタン・アフガニスタンで診療活動に従事し、やがて襲い掛かった干ばつと戦って、食糧配給、井戸掘り、用水路建設へと活動を進めていく様を見ていると、「平和とはいのちを大切にすることに尽きる。」「私たちにとって平和は理念ではなく現実の力なのだ。」という彼の言葉が腑に落ちました。

 中村医師は本当に平和主義者なのです。彼にとって、診療活動に従事することも、井戸を掘り、用水路を建設することも、「いのちを守る」ということで共通していて一貫していたのだと思いました。平和を「現実の力」として捉えていたからこそ、診療活動から用水路建設まで彼は至ったのでしょう。

 そのとき、真正の平和主義者であった中村医師が水にこだわった訳が分かりました。水さえあれば、人間は生きていくことができるからです。だからいのちを大切にするなら、水を大切にせざるを得ません。「いのちの水」なのです。

 また、中村医師は、「水が善人、悪人を区別しないように」、地域や宗教や文化を「優劣」や「善悪」で裁かないことをくり返し語っていました。

 

  「私たちは、地域の宗教や文化を『優劣』や『善悪』で裁かないのが鉄則です。私たちは現地に、社会改革のために行っているのではありません。人々にいのちの尊さを知らせ、いのちを守ることに腐心してきました。」

 

 中村医師にとって、水は、「優劣」や「善悪」といった人間の勝手な物差しを超えたいのちのイメージであったのでしょう。

 対テロ戦争の名の下に、米軍が空爆をしていたとき中村医師が発した「彼らにはわからぬ喜びが地上にはある」という言葉は、「いのちを守る」喜びから生まれた確信だったと思います。

 翻って現在、ガザではハマスの攻撃に対するイスラエルの報復爆撃が行われています。犠牲になっているのは主に女性、子供、老人、弱い人たちで、アフガン報復爆撃の時と同じ構図です。

 中村医師が急逝してから4年が経とうとしていますが、彼の訴えに私たちは愈々耳を澄まさなければならないと感じます。

 

  「憲法は我々の理想です。理想は守るものじゃない。実行すべきものです。この国は憲法を常にないがしろにしてきた。インド洋やイラクへの自衛隊派遣……。国益のためなら武力行使もやむなし、それが正常な国家だなどと政治家は言う。私はこの国に言いたい。憲法を実行せよ、と。」

 

 「憲法は守るのではない、実行すべきものだ」。かつてこの中村医師の言葉を目にして以来、それは脳裏に焼き付いて離れませんでした。

 そして、映画を今回観て思いました。

 「憲法を実行する目的は、平和を創り、守っていくためなのだ」と。