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 1122日は北杜市総合計画審議会があり、市役所にいってきました。新市政になったのを機に始まった審議会も6回目です。今回は新しい第3次北杜市総合計画の素案の審議が主な議題でした。

前回出された素々案ではリーディングプロジェクトの2に「市民総活躍のまちづくり」という名前が付けられていましたが、その時わたしが述べた意見が受け入れられて「ともに、よりよく生きるまちづくり」に変更されました。

 

○総合計画と新・行政改革大綱との関係

 今回の新しい総合計画の特徴の一つは、第3部として、北杜市行政改革推進委員会が策定した新・行政改革大綱を加えたことです。これは第2次総合計画には入っていなかったものであり、「第3次総合計画に掲げる5つのありたい姿とそれらを踏まえたLP、部門別計画の取組を下支えするため、市役所全体、市民でその目的と方向性について共通認識を持ち、着実に行政改革の取組を進めていく考え方を示したもの」とされています。

 第6回審議会ではこの素案に対する意見・質問を求められました。そこでわたしからは新・行政改革大綱と第3次総合計画について、次の質問・意見をさせていただきました。

 一つ目は、「第3次総合計画は新・行革大綱に拘束されるのか?」という質問です。この質問をさせていただいた理由は、新・行革大綱は「『財政健全性の維持』と『効果的・効率的な行政運営』を更に推し進めていく」ことを、明確な二つの基本目標としているからです。

 したがって、もし総合計画が新・行革大綱に縛られるならば、この審議会の議論も相当異なってくることになります。しかし総合計画は市の最上位計画であり、行革大綱はあくまでもこの計画を実現するためのものなのであって、その関係が転倒するようではおかしなことになります。しかるに、行政改革推進委員長も務める審議委員から「新・行革大綱は総合計画をチェックするもの」「行革に聖域なし」という発言もあり、質問しました。

 それに対して担当課長は、新・行革大綱は総合計画を「進行・管理していく」という回答でした。この回答と行革推進委員長を務める先の委員の発言を勘案すると、「総合計画を下支えする指針」という計画中の文言とは裏腹に、最上位計画であるはずの総合計画が行革大綱に仕える恐れがあるように感じました。

同じく行政改革推進委員でもある審議会会長からは「総合計画も固定したものではなく、柔軟に変えていく余地がある」という旨の発言もありました。総合計画が行政改革の「アクセサリー」にならないよう、注意していく必要があると思います。

 

北杜市立小中学校適正規模等審議会と新・行政改革大綱との関係

そのことがありましたので、二つ目は新・行革大綱の「公共施設保有量の最適化」にある市立中学校の「基本方針」について、意見を述べさせていただきました。

新・行革大綱中の市立中学校の「基本方針」には「国が定める適正な学校規模の学級数は、概ね1218学級となっています。」と書かれています。これは文部科学省が2015年に出した「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引き」に則っています。しかしここで注意が必要なのは、「教育的観点から望ましい学校規模」について、中教審で結論を得られておらず、書かれている「適正な学校規模」というのは、国が補助金を出す際の基準だということです。また標準規模とされる1218学級についても今日的状況に照らして中教審で疑問が出されています。

要するに、子どもたちの学習や成長にとって、相応しいとされる学校の規模(教育的観点から適正な学校規模)がどれくらいかというものについて、国は定めていないのです。それは、「学校の適正規模」というのは、地域の実情によって異なり、全国一律に決められるものではないというのが、現在の到達点だからです。

それにもかかわらず、新・行革大綱では「生徒数が減少している中で、施設の老朽化などによる将来的な財政負担の軽減と魅力ある学校づくりを推進するため、国の指針や県内他市の公立中学校における1校あたりの生徒数267人と同水準となる24校での統合・再編を進めます。」と書かれています。

ちなみに、WHO(世界保健機関)は1校あたり生徒100人以下という基準を示しています。そのことから考えると、教育効果を高めるためにWHOの基準の先を行くのではなく、行政効率性を優先して、望ましくない教育環境に導く「基本方針」と言わざるを得ません。現在設置されている北杜市立小中学校適正規模等審議会の議論とも、世界の先進的な教育事例ともかけ離れた方針であり、何をもって「魅力ある学校づくり」の根拠としているのか、分かりませんでした。

加えて、現在設置されている北杜市立小中学校適正規模等審議会の議論とだいぶ異なる方針であるにもかかわらず、24校での統合・再編を進めます。」と言い切られていることに驚きました。

そのため、「現在開かれている北杜市立小中学校適正規模等審議会の議論との関係はどうなっているのか?北杜市立小中学校適正規模等審議会の議論を真剣に受け止めて慎重に審議してほしい。」と意見しました。

 

○合併によるスケールメリットとデメリット

最後の三つ目は、第1部 基本構想の財政の「今後の方策」に対する意見です。「今後の方策」として、「合併から17年が経過した中で、これまでの旧町村単位を基本とした行政運営から脱却し、合併団体としての原点に立ち返り、合併によるスケールメリットを生かした行政運営の効率化と新たな機能の付加・充実による市民サービスの利便性に向けた、未来につなぐ行政経営基盤を構築する必要があり、将来世代に負担を残さないことを最優先に抜本的な行政改革に正面から取り組みます。」と書かれています。

これについて、合併によるスケールメリットを述べる一方で、合併によるスケールデメリットについては考慮・対策しないでいいのか、という意見を述べさせていただきました。

なぜなら「平成の大合併」が一区切りついた現在、合併による問題点も数多く報告されているからです。そうしたことにも目配りしないようでは、最上位計画として無責任であると考えて意見しました。

1999年から2010年までの「平成の大合併」で合併した人口が概ね4000人未満の旧町村の地域は、合併に加わらず存続を選択した近隣の小規模町村に比べて、人口減が加速傾向にあるとの調査結果を、201911月に日弁連が公表しました。日弁連は、非合併町村では役場機能が保たれ、公務員数が大きく減っていないことが背景にあると指摘して、「非合併自治体は地域住民と役場職員の顔が見える関係が築かれ、地域の個性が発揮しやすい」と分析しています。

各地域にはそれぞれの文化や歴史、農業などの産業といった個性があります。「統合しなければ立ち行かない」といった危機感をあおる手法は、地域の活力の源である誇りを奪いかねません。

わたしも歩いていると、北杜市の各所で合併に対する不信の声を耳にします。不信の背景には、合併特例債という「アメ」と「地方交付税削減」という「ムチ」によって進められた合併が、主に財政上の理由により選択され、自分たちの地域のあるべき姿から選択されたものではないという事情を見て取ることができます。

しかし、国が合併奨励のために行った「手厚い」財政支援によって、合併特例債の返済や建設した施設の維持費、交付税算定替期間の終了による交付税の減少が、現在になって財政を圧迫しています。

反対に、合併自治体に比べ非合併自治体のほうが財政の効率化が進んでいるという研究もあります(五石敬路「平成の市町村合併における『規模の経済』の検証」大阪市立大学大学院創造都市研究科紀要 8(1), 31-45, 2012-06

スケールメリットの方が強調されがちですが、規模を大きくすればするほど、効率化が進むということでは必ずしもないのです。

事実、2017年に「移住・定住政策の好事例集」で政府が紹介した18自治体のうち、12カ所は合併していません。これは、行政の努力、住民の知恵や工夫の重要性を物語っています。

 

○必要なのは、地方自治・民主主義の視点

 平成の大合併により、北巨摩でも八つの町村が無くなって一つの市が誕生しました。しかし、人口規模が小さいことが、住民の合意形成と参加に意味を持つこともあります。たとえば自治体の面積が広がれば、居住地から議会や役所や公共施設までの距離が遠くなり、住民が政治に参加するハードルが上がります。また行政組織が大きくなることによって、蓄積されてきた自治体固有の問題点が抽象化され、薄まって、住民生活と行政とが離れていく傾向があります。合併は単なる行政区域の変更ではありません。自治の単位の変更でもあるのです。

 平成の大合併が進んだ1998年から2008年の10年間で市町村議会の議員数は20,803人減少し、旧町村に置かれた役場の支所では、付与された権限の少なさ等も問題になっています。市町村合併に伴って生じたこれらの変化により、旧町村の住民の政治参加の機会は減少し、暮らしと行政との距離が離れる傾向にあったことが指摘されています。しかし北杜市総合計画審議会に出された新・行革大綱も、財政の効率性を理由に総合支所の機能を縮小し、「行政センター」的機能への移行を進めるとしています。

 行政範囲の拡大と権限の集中の動きは、末端切り捨てを認める構えと表裏一体です。北杜市のように町村の合併と編入によってできた大規模な自治体こそ、各町への配慮が必要です。

 22日の審議会では、新・行革大綱の報告を受けた後1人の委員から「市長の公約である『10年間で子どもの数2倍にする』政策と逆行している。市長は公約の実現を諦めたのか?」という質問も出ました。わたしも同感で、行政改革を推進していく先に「子どもの数を2倍にする」未来の姿は見えません。はっきり言って、新・行政改革大綱の基本方針は、少子化傾向を受け入れた内容になっています。しかし重要なことは、子どもの数の減少を止めることです。そのための行政改革でなければならないと考えます。

 数字合わせの議論ではなく、どのようなまちづくりを行ったら子どもの数が増えるのかといったことを明らかにし、そのためにどのような行政運営を行ったらいいのか、議論することが重要です。

 北杜市も当面しているように、人口減少が進む中で、地方自治の今後のあり方を描いていかなければならない時代になっています。

新・行革大綱が総合計画に書き加えられたこの段階で、新総合計画の策定は重大な局面に入りました。わたしたちは今、その行き着く先が、「周辺地域の公共サービスは縮小するしかない、切り捨てて効率化するべきだ」というものでいいのかどうか判断すべき分岐点に立たされています。多くの市民に注目していただきたいと思います。