去る 11 月 15 日には北杜市長選挙が執行され、わたしの支援したかみむら英司候補が当選しました。たいへんな選挙でしたが、結果はわたしの予想通りの展開となって上村市政を誕生させることができました。御支持いただきました皆様には厚くお礼申し上げます。

 その一方で、今回の選挙におけるわたしの判断については説明が行き届かず、御理解いただくには不充分でしたので再度この場を使ってわたしの真意をお伝えします。

 先の選挙で市内を歩いているとき、「投票したい候補者がいない。」「誰に投票したらいいか分からない。」といった声を少なからず聞きました。その時わたしは、「実現しそうな結果の中、『そういう結果になったら嫌だなあ』とあなたが思う結果を避けることのできるような投票行動をしてください。」と答えて参りました。

 そしてその場合の「最も避けたい結果」とは、故・白倉前市長のもとで北杜市が誕生して以来、連綿と続く利益誘導型の利権政治の継続でした。この「白倉政治」を終わらせ、北杜市政に新しい市政の流れを誕生させない限り、北杜市の未来はない、とわたしは考えていました。

 そのようにして市長候補者を見たとき、渡辺候補は白倉前市長の後継として市長になった人であり、大柴候補は故・白倉前市長の後援会や白倉一族が支援する白倉直系の人です。彼は「国・県との連携」をうたい文句にしながら、利権政治をさらに行おうとしていました。

 他方、かみむら候補に自民党籍はありませんが、保守であるという批判がありました。しかし、彼は日本国憲法の平和主義の堅持と第 9 条改正反対を明言していました。また、自分が単純な保守の政治家ではないということを示すために、わたしとの間で具体的に政策協定を結び、それを記者会見で公にすることによって、その覚悟を示しました。以下に二人の間で結んだ政策協定を再掲させていただきます。

 

 ①医療・介護・教育現場で働く人びとから始まって、受けたい人が受けられるようなPCR検査体制を行政として整備すること。

 ②学校と地域との協働により、子どもの多様性を認め、少人数であることを活かした教育を行うこと。

 ③従来の保育・教育に係わる公的支援が受けられない認可外保育・教育施設に対し、従事者の処遇向上を目的として助成を行うこと。

 ④北杜市は自衛官募集協力のため、若者の名簿を作成し、自衛隊山梨地方協力本部に提出することを中止すること。

 

 少子高齢化、人口減少、財政難、新型コロナウイルス感染拡大など、北杜市は大きな課題を抱えています。それらを乗り越えるために「地域主権」の時代にふさわしい新しい政治をつくらなければなりません。そのために必要なのは、「国・県との連携」よりも、「市民との連携」です。北杜市の市長は県知事が決めるのではありません。決めるのは市民です。

 かみむら候補は保守に見えますが、話し合ううちに実は柔軟で一緒にいろいろ協働できる余地が大きいことが分かりました。「保守からリベラルまで新しい北杜市を考えるイメージは、かみむら候補だ。」と確信しました。

 現実というものを固定したでき上ったものとして見ないで、その中にあるいろいろな可能性のうち、どの可能性を伸ばしていくか、あるいはどの可能性を矯めていくか、そういうことを政治の理想なり、目標なりに、関係づけていけば、そこに方向判断が生まれます。

 いろいろな可能性の方向性を認識してそれを選択する。そしてどの方向を今後伸ばしていくのが正しい、どの方向はより望ましくないからそれが伸びないようにチェックする、ということが政治的な選択です。

 その際往々にして忘れられがちなことは、政治的な選択というものは必ずしも一番良いもの、いわゆるベストの選択ではないこと、せいぜいベターなものの選択であり、あるいは悪さの程度がすこしでも少ないものを選択するということです。

 中部横断自動車道建設問題を始め、かみむら候補とわたしの間ではいくつか違いがありました。また「非自民系であるひやざき雅也が自民系であるかみむら候補と協同することは理解しがたい。」という声もありました。

 しかし北杜市に大切なのは、自民・非自民、保守・革新、左・右、新(住民)・旧(住民)という軸ではなく、新しい北杜市の進路を根拠あるやり方で実現することです。中部横断自動車道建設問題も大切だけれども、それに勝るとも劣らない大切なものがあって、わたしは彼と合同しました。それは北杜市のありたい姿、北杜市のアイデンティティーについて、相異なる意見を持つ者どうしが立場を越えて意見を交わし、対話し、考えることを始めるということです。

 不幸なことに、これまでの北杜市においては、異なる意見を持つ者どうしが交わり、対話するということがあまりありませんでした。そこに、北杜市で生まれ育ってわたしと異なる意見を持つかみむら候補から、移住してきたわたしに対して協力のお願いがきたことは、一つの新しい可能性でした。それを、「かみむら候補は自民系だから。」とか、「かみむら候補は地元のかただから。」という理由で無視することは、貴重な可能性の芽を摘むことであると考えました。それ故に、この芽を北杜市にとってより良い方向に伸ばしていくことをわたしは選びました。

 選挙は最終盤にさしかかり、事実上かみむら候補と大柴候補の一騎打ちの情勢でした。大柴候補を勝利させて利益誘導型の旧来の政治の継続を許すのか、それともかみむら候補(・ひやざき雅也)を勝利させて自立した地方自治体を目指すのか、北杜市の命運は 11 月 15 日の投票にかかっていました。

 それに際して必要なことは、「白倉政治」とは別れた新しい政治の流れを北杜市政に誕生させるために協力することであり、そのために、わたしたちは自分の投票行動がどのような結果に結びつくだろうか、ということまで考えて投票することでした。自分の心情とは別に、大柴市政を結果としてしまう投票行為は棄権・白票を含めて、この場合全て間違った選択でした。

 みずからの投票行為がもたらす結果まで考えてする行為が政治的に責任ある行為です。そのことを考えて、わたしは現状において投票する先はかみむら候補しかいない、と判断しました。そして皆様の一票をかみむら候補に投じていただきますことをお願いしました。

 選挙は終わりましたが、政治は終わりません。政治は既に用意された棚から好きな品物を選ぶ購買行動とは違います。政治とは、わたしたちが主権者としてみずからの選択肢をつくる〈活動〉です。そこに、政治家を育て、監視し、支援していく後援会活動の意味もあります。他人事(観客)として政治を語って、評論しているだけでは、現実の政治は決して変わりません。そうして自分事として政治に関与しないでいると、結局のところ政治は一部の利害関係者と職業政治家の好き勝手にされてしまい、望んでもいない政策を実行されてしまいかねないのです。地域をよくするために政治活動において自分に何ができるかを市民一人ひとりが考えて実行していくことが大切です。

 これから皆様と力を合わせて、わたしたちの地域のありたい姿を追求していきたいと思います。

 

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