東京の郊外に佇むある大学の研究室、相田博士と同僚の吉本博士が、宇宙における生命の可能性について話し合っている
吉本博士が問いかける
太陽系での生命の可能性はどうなんだろう
そうだね、今の所木星の周りを回る小惑星エウロパが有望視されているようだよ
エウロパ? ギリシャ神話で雄牛座の中にでてくる、あのエウロパの事かい
そう、浮気者のゼウスが珍しく生涯愛した女性だね。星の名前にはギリシャ神話から付けられたものが多いようだよ
そのエウロパに、生命の可能性があると言うんだね
木星のすぐ側を回るエウロパは、木星の強力な引力に影響され、内部で激しい摩擦熱を起こし凍土の下にある氷を溶かして、地球の十倍にも及ぶ広大な海の存在が予測されている
吉本博士は続けて
もし生命が誕生しているとしてもだよ、その海に生きる生命体は我々のような知的生命体ではなく、アメーバ―やせいぜいくらげのような、原始生物ではないだろうか
それはどうかな、海中で進化がすすみ魚のレベルいや、それ以上の生命の可能性も否定は出来ないね。だからそれを確かめる必要があるんだ 今ナサでは無人の地下探査機をエウロパに飛ばすことを計画中らしいよ
そう、それで他に命の星は見つかったのかい、相田博士は地球の奇跡について考えていた
生命が誕生し進化し、人類のような知的生命体を生んだのはどうしてなのか、そして第二の地球の可能性は?
地球誕生から46億年、この間絶え間なく襲ってくる巨大隕石を防いだのは、地球の千倍以上もあるガスの惑星木星であった。冥王星の彼方、オールドの海から猛スピードで太陽を目指す隕石は木星の近くを通過する際、その強い引力に飲み込まれガスの渦の中に姿を消していった
もし木星が存在しなければ、地球に降り注ぐ隕石の量は今の千倍に達すると、シュミレーションされている。それだけ大量の隕石が襲ってくれば、生命の存続は危うくなる。一回の巨大隕石衝突によって、あの恐竜が一瞬にして地上から姿を消したように破壊的な力を持つ
地球をガードする木星、それに太陽からの絶妙な位置、博士は幸運が重なり合う地球にある感慨を抱いていた。創生の源である海が多少の変動はあったにせよ、長期に渡り平穏に存在したのが大きかった、火星にも海があったのは間違いない
しかし太陽との距離が遠すぎ次第に乾燥し、表面から姿を消してしまった、総ては海からの創生、それに危険な宇宙線から地球を守る太陽圏の存在も不可欠であった。様々な要因が重なり、地球は生命の進化を促してきた宇宙にこのような奇跡の星が存在するのだろうか
二人は静まり返った構内の研究室で話を続けていた。実は最近、太陽系に似た惑星グループが発見されたようだよ。太陽系に似た惑星グループ? それはどの辺りだろう、そう、北斗七星のすぐ側、大熊座47番星と呼ばれる恒星に、土星や木星に似たガス惑星が同じ周期で回っているそうだ。
それもほとんど太陽系と同じ位置でね、それでは他の惑星、例えば地球や火星にあたるような星は見つかったのかい。
いや残念ながら今は見つかっていない しかしもし将来地球と同じ位の星を発見できたら、第二の地球の可能性は大いに高まるだろうね。
相田博士はある確信を抱いていた。地球は確かに奇跡的な存在だが似たような星があるに違いない、いや必ずある、広大な宇宙には限りない、可能性が秘められている。
未知との遭遇もそう遠くない時期にやってくる