『雲の墓標』⑫ | 樋浦明夫のブログ

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日々の出来事(家族や私的なことに触れるのは苦手なので、主としてグローバルな事)、歴史的な過去の出来事、浮世のことについて思ったこと、感じたことを思いつくままに写真や文で紹介したい。

 4月11日の日記から。先生や友人から計4通の葉書が届いたこと、そのどれにも桜のことが書

 

いてあった。期せずして各地の花信に接したとある。学園(京大)もあげて決戦の態勢を整え、

 

各学部とも各地に勤労奉仕に出かけていると書かれている。学内の3800坪の休閑地はすべて掘

 

り返されて、テニスコートも藷畑(いもばたけ)にする由だと。
 

 

 敗戦間際の日本は税金も物価も上がり、ひどい物資不足になっていた。食物の配給は遅配がち

 

となり、米の代わりに芋といった代替え食がふえてきた。副食にいたっては、東京の例では5日

 

に1回、一人当たり魚一切れ、ネギが3日に1度、一人当たり3本、牛乳は二人に1合割り当てにな

 

ったという。「週刊朝日」は「食べられるものいろいろ」を特集して、ゲンゴロウの幼虫やサナ

 

ギなどがうまいからと勧めていた。(以上は、『B面昭和史』(半藤一利著)による。)
 

 

 ところがである、現在の米作の時間当たりの所得は2010年が592円、2020年が181円、

 

2021, 22年はわずか10円というから驚きを通り越して呆れてしまう。農家は米を作れば作るほ

 

ど赤字になる。これが今の自公政権の農業政策だ。農業では生活できないからどんどん若者が離

 

農している。日本農業の従事者の24万人が59歳以下(20%)、75才以上が42万人となってい

 

る。1965年に73%の食糧自給率は現在38%に落ち込んでいる。酷いことに今国会で議論されて

 

いる「農業基本法改定案」では、”自給率向上”を副次的な課題に格下げ、食糧危機の事態には農

 

民に芋への作物転換を促し、国民に食料の配給を押し付けるというとんでもない内容となってい

 

る。1980年に農林水産予算は3.58兆円だったのが2024年には2.27兆円に減っている。対し

 

て、軍事費は2.23兆円から7.94兆円と3.5倍に増えている。戦時中じゃあるまいに食う物がなく

 

なったら芋を作って飢えをしのげと国民に奨励しているのだ。笑うに笑えない芋話ではないか。
 

 

 殺傷兵器の武器輸出といい、専守防衛から敵基地攻撃への転換、沖縄島嶼部へのミサイルの配

 

備等々、今や日本は戦前どころか準戦時体制と言っても過言ではない。自分らは裏金でヤバイこ

 

とを平気でしていながら、国民にはいざとなったら芋を食えとはあまりにも国民を蔑視してい

 

る。今の政府は過去の戦争から何も学ばないであわよくばまた歴史を戻して国民に塗炭の苦しみ

 

を味あわせようとしている。安倍元首相をはじめ自らの頭で考えることをしないお頭のよろしく

 

ないのがトップになると犠牲を強いられるのは国民である。卑屈にアメリカの要求に従っている

 

今の岸田自公政権をなんとしても下野させなくてはならない。『雲の墓標』の若者のように死を

 

強要されるような世の中にしてはならないではないか。