アールデコ調の強酸泉 雲仙温泉「雲仙観光ホテル」(長崎県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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サルヒツの温泉めぐり♪【第170回】

雲仙温泉 雲仙観光ホテル

℡)0957-73-3263

 

往訪日:2024年4月30日~5月1日

所在地:長崎県雲仙市小浜町雲仙320

源泉名:小糸地獄

泉質:酸性・含鉄・よう素ー水素ー硫酸塩泉

泉温:(浴槽)約42℃(源泉)93.5℃

匂味:仄かな硫化水素臭・収斂性ある酸味

色調:無色透明(浮遊物でやや茶褐色)

pH:1.95

湧出量:35L/min

その他:自然湧出(引湯)、加水、かけ流し

 

■営業時間:(IN)14時(OUT)11時

■料金:プレミアムツイン58,000円/人(税別)

■客室:37室(各種あり)

■アクセス:長崎道・諫早ICから1時間

■駐車場:無料(30台)

■国指定有形文化財

 

《悪趣味紙一重の意匠がたまらない》

 

今夜は温泉&食事篇。早速温泉の紹介から。

 

 

=雲仙観光ホテルはこんな御宿=

 

■温泉

・加水&源泉かけ流し(約500㍍引き湯)

・pH=1.95の強酸泉

 

■施設

・シャレー様式の名建築

・内装ウィリアム・モリス調

・浴室シェルタイプのアールデコ調

 

■部屋

・特別室、スタンダードと各種あり

 

■料理

・地産食材で作る本格フレンチ

・銘醸ワイン揃い(つまり高価)

 

■ホスピタリティ

・王道のクラシックホテルのサービス

 

=温泉利用法=

 

■構造

・男女別内風呂+小露天風呂付(入替なし)

■利用時間

・14時~24時/翌朝6時~9時

■貸切利用…なし

■日帰利用…なし

 

利用法は至ってシンプル。家族風呂も日帰り利用もないので、バージン湯を目指すならば早めのチェックイン直後、もしくは翌朝一番ということになる。自然湧出&かけ流しの極上泉ながらラグジュアリーホテルなので温泉に血眼の客は皆無だろう。

 

「血眼になゆ」サル ←幾つになっても湯爛れを辞さない

 

(雲仙地獄見取り図)

 

雲仙温泉は「地獄」と呼ばれる源泉から引かれている。ここ雲仙観光ホテル小糸地獄が源泉。幼い頃に迷子になって酷い目にあった記憶がある。そんな僕を遠くから指をさして笑っていた親父が今だに憎々しい。

 

 

浴室入り口前には無料マッサージチェアもある。

 

 

入り口もまたウィリアム・モリス調。

 

 

カーネーションとアマリリスかな。

 

 

男性と女性の浴室はシンメトリックにできている。

 

 

2003年の有形文化財登録を機に全面リニューアルを施し(客室・ダイニング・浴室・撞球室などほぼ全て)創業当初の内装を復活させたそうだ。

 

「若い頃に来た時と印象が違う理由が判った」サル

 

腰の部分の溶岩の玉石やシェル構造は新しい意匠らしいね。

 

 

脱衣場は鍵付き。

 

 

洗面台も清潔。そしていよいよ浴室。

 

 

曲線を強調したシェル構造の天井。

 

 

ハーフティンバーとアールデコのモザイクが違和感なく同居。

 

 

人によっては悪趣味と映るかもしれない。

 

 

そういう幾分キッチュな処も嫌いじゃない。

 

 

ローマ風呂風。

 

 

ロマネスクとセセッション。なんでもありよ。

 

 

ただね。この湯だけはホンモノ。約94℃あるので400㍍引き湯しても加水が必要。無色透明だが空気に触れると浮遊物でやや色変わりする。硫化水素臭は意外に控え目。だからレモン並みの収斂性にはちょっと吃驚する。

 

「また飲んでる…」サル

 

味見だけよ。

 

 

露天風呂といっても三人入れば一杯。内風呂で十分。

 

 

長い泉質名だが圧倒的に硫酸イオンが勝る強酸性だった。

 

 

このあとビリヤードに打ち興じていると間もなく夕食の時間になった。遊び飽きると急にお腹が減るのがいつも不思議。

 

 

=夕 食=

 

夕食まで待ちかねたのか数名の客が鑼の合図を待つ。僕もだけど。

 

 

衆人環視で「なんだか鳴らしづらいですね」とスタッフが苦笑い。

 

 

ジャーンと大きく鑼がなり、いそいそとサルとヒツジが後に続く。

 

 

フレンチはやっぱりオーセンティックがいい。

 

「オサレだのー」サル ほぇー

 

 

本日のメニュー。

 

 

カトラリーはノリタケ製。

 

 

グラスワインはリーズナブル。

 

 

とりあえずシャンパン(domaine Tessien 2021)で乾杯。やや肌寒い季節だったが。

 

「キンキンに冷えて最高!」サル

 

バニラを思わせるしっかりした樽香。若く溌剌とした酸が躍動的。

 

 

アミューズ

 

(左)雲仙太陽卵と海老のジェノア アスパラガスのムース キャビア添え

(中)長崎県産牛ロースの山菜巻き 味噌ベルデソース

(右)諫早鰻の白焼き 菜の花 モッツァレッラのスップリ

 

「白焼んまい!」サル ←魚卵も好きだが鰻も好き

 

その下にあるのはスップリ(蕗と挽肉のライスコロッケ)。フレンチも伊仏混淆のメニューが当たり前になったな。

 

 

断面を見ると判る。上層にはたっぷりと平田農園アスパラのムース。基層が卵と海老のジェノア(ケーキ)。そこにイタリアンパセリとキャビアが贅沢に乗る。

 

 

オードブル

 

天草大王とフォアグラ 雲仙野菜のテリーヌ

燻製菊芋のフォームとビーツのソース

 

天草大王とはその名のとおり120日間育成される体高70㌢にもなる巨大な熊本産の赤羽地鶏とのこと。クリームチーズのソースと擂り下ろした菊芋のソースで頂戴した。ゴボウ、蓮根、人参、里芋が抽象画のようだ。ビーツソースも篠田桃紅を思わせる。見てて楽しい。

 

 

ドゥーズィエーム(第二の皿)

 

諫早産猪のベーコンと筍のコンソメ煮 シチュー仕立て

 

厚みのある猪肉のベーコン蕪玉菜(コールラビ)のフリットを添える。素材の特徴は違うのに味と食感が調和するあたりはプロの仕事。デミグラスソースとコンソメで猪肉特有の臭いを飛ばす。

 

「ほんとソースが美味しい」サル

 

そういう時のためにパンがあるのよ。

 

 

パンは普通かな。

 

 

でもバターは無塩でフワフワ。

 

「そろそろワインを」サル

 

 

ブルゴーニュブラン シャンペリエール 2021

 

生産者:ドメーヌ・テシエ

ヴィンテージ:2021年

タイプ:白

品種:シャルドネ100%

地域:ブルゴーニュ地方(フランス)

アルコール:12.5%

輸入:㈱フィラディス(横浜)

市販価格:7,700円

 

ムルソーの比較的若い造り手アルノー・テシエ(40歳)によるブルゴーニュのシャルドネ。若いリンゴやレモンを思わせる酸。肌理の細かい舌触り。一定のトーンで舌に乗るミネラル感。時間とともに増してゆく果実味。料金13,800円は良心的。

 

 

ポワソン(魚料理)

 

有明海産ヒオウギ貝と長崎産真鯛、海老、雲仙野菜のグラタン仕立て

 

野菜は空豆スナップエンドウ。チーズとホワイトソースが濃厚。あしらいはなんだろうと思ったら人参の葉のソテー。食べられるのかな。

 

「食べるんでしょ」サル

 

ん。旨いよ。ここで口直し。

 

 

ライムのグラニテ(砂糖菓子)とソルベ

 

シャリシャリした砂糖の食感もいい。

 

 

ヴィアンド(肉料理)

 

国産牛ロースと新玉葱のグリエ

島原半島の野菜とキノコのフリカッセ添え

赤ワインソース

 

大皿の呉須の吹きつけに良く映える。フリカッセ南瓜のムースを付け合わせに。赤身主体の弾力あるロース。ソースの酸味と甘みのバランスが最高だった。フルコースだけど一品の量は控え目だし食べきれそうだね。

 

「ごちそうさまでした」サル

 

ここでデザートワゴン登場。好きなだけどうぞと言われたので。

 

(ゴルゴンゾーラケーキ、ガトーショコラ、ブランデーバターケーキ、苺のタルト)

 

どう考えても取り過ぎ…。

 

「もっとお取りよ」サル ←この人は食べないのだが

 

え?そう?

 

(パッションフルーツのパンナコッタ)

 

明日こそは走らんとなあ。

 

「ほらほら遠慮せんと」サル

 

じゃジェラートも。

 

 

もっと種類があったけど二色(ストロベリー、バニラ)で遠慮した。

 

「隣の女性なんか全種類食べてるよ」サル ヒソヒソ

 

いや。僕も殆ど一緒だけど。

 

 

結局全点制覇。

 

「サルは酒飲む」サル

 

 

ということでバーへ。20時~22時までの営業。

 

 

意外に誰もこない。10年ほど前に金谷ホテルに泊まった時は満員御礼だったが。

 

「世知辛い世の中になったにゃ」サル ←バブル世代なので死ぬほどバーが好き

 

若い世代は酒飲まないし。みんな部屋で安く済ませるのかな。

 

 

でもいい雰囲気だ。

 

 

一番奥に陣取ることにした。

 

 

恐らく床は京都の泰山タイルだろう。

 

 

メニューはこんな感じ。

 

「マティーニを限りなくドライで」サル

 

ベルモットは殆どいれないのがおサル流。

 

 

僕はカルバドス

 

 

二杯目はホテルオリジナルのフラッシュバック。レシピはイエガー+ミント+ジンジャエール。1935年創業時のメニューの再現らしい。甘いね。女性を誑かすための飲み物かも。

 

「サルは黙ってジントニックよ」サル

 

男らしいね💦

 

部屋に戻ると霧は一層増していて夢幻の世界。外に出てみると…

 

 

三階左の部屋からおサルが手を振っていた。ホラー映画「悪魔の棲む家」を思い出した。

 

「失礼な!」サル

 

 

=翌 朝=

 

旅の間もせっせとジョグを続けてきたが、翌朝は小雨模様。それに折角のラグジュアリーステイ。フカフカのベッドで微睡む倖せを満喫することに。

 

 

朝食は同じ場所で。

 

 

洋食と和食から選べる。洋食はどこも似たようなコンチネンタルスタイルなので和食を選んだ。だが(考えてみれば当たり前だが)和食は準備に時間を要するようで。しばらくの辛坊。

 

「お腹減ったにゃー」サル

 

 

ようやくでてきた。

 

 

お膳つきだ。島原そうめんは鉄板だね。

 

 

雲仙産じゃが芋と牛筋の煮物

 

 

自家製温豆腐

 

 

橘湾産マダイと棚田米の丼

 

そのまま食べてもいいし…

 

 

ダシをかけてお茶漬け風に食べてもいい。

 

「サルはお茶漬け派」サル

 

朝食も裏切らない味だった。満腹になって調度類を眺めていると、昨晩は酔眼で気づかなかった焼物が気になってきた。

 

 

大英博物館出展作とある。気になったのでフロントで確認したところ、澤田痴陶人(1902-1977)の作と判った。京都府生まれの澤田は岐阜県で作陶を開始。その後、嬉野に活動の舞台をかえて後進育成にあたった。国内ではほぼ無名だが、大英博物館ローレンス・スミス学芸員に見出されて、1997年に大英博物館で初めて個展を開いた日本人陶芸家になったそうだ。

 

「外国人が好きそうなデザインだもん」サル

 

青海波に鯉ね。

 

 

こちらは崩し卍の意匠だね。なかなか良かったよ。

(雲仙観光ホテルの調度品は全て来歴がマニュアル化されているので質問すればほぼ判ります。)

 

 

11時までゆっくり。と思っていたが、次の予定もあるし散々味わったのでお暇することに。建物よし。温泉よし。食事よし。サービスよし。いずこのホテルもスタッフ確保が課題だが、ここ雲仙観光ホテルに限ってはそんな悩みは無縁のようだった。いつまでも続いて欲しい。

 

(旅はつづく)

 

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