サルヒツのグルメ探訪♪【第231回】
山中酒の店 エキマルシェ大阪店
℡)06‐6348‐3955
カテゴリ:日本酒専門店(日本酒バー)
往訪日:2024年3月9日
所在地:大阪市北区梅田3-1-1(エキマルシェ大阪内)
営業時間:11時~23時(不定休)
アクセス:JR大阪駅から約5分
■ダイニング20席(カウンター+テーブル)
■予算:5,000円(税込)飲み方次第です
■予約:不可
■カード:可
■オープン:2022年7月
《角打ちの概念はすでに超えた》
ひつぞうです。今回紹介するのは山中酒の店です。本店は地下鉄御堂筋線・大黒町駅近く。その二号店がエキマルシェ大阪の一角にあります。本来は酒販店なのですが、テイスティングの他、ちょっとした食事もでき、そのクオリティの高さに感動して通うこと三度。以下、往訪記です。
★ ★ ★
スタイルとしては角打ちなのだが、そう呼ぶにはあまりに食事が立派。大阪赴任以降、幾度も立ち寄っているが(冷蔵庫が小さすぎるため)酒そのものは買ったことがない。むしろ居酒屋代わり。ハズレがないので片っ端から飲んできた。そのうえ居心地もいい。だからクセになる。
また来てしまった。NHK大阪の高瀬耕造アナ似の店長の腰の低いトークに今夜もゴキゲン、のはずが遅番のようだった。元気のいい若いスタッフがメニューを差し出す。コイン式の酒サーバーか90mlのショットグラスでの試飲。ただし、ここに座る客のそれはもはや試飲とは言わないけど。
以前は秋田や福島、そして北関東の甘酸系や薫酒系を好んで飲んでいたが、大阪赴任で西日本の酒が身近になった。それを境に「吟醸よりも純米」という思いが強くなった。手造りの酒は粗い要素を含んだほうがパワフルかつ複雑になる。で、まずは七本槍。
七本槍 純米 山田錦 うすにごり生原酒
生産者:冨田酒造㈲
製造年月:2024年3月
所在地:滋賀県長浜市
タイプ:純米うすにごり生原酒 R5BY
使用米:滋賀県産山田錦100%
精米歩合:65%
アルコール:15度
定価:1,700円(税抜)
幾度も居酒屋で飲んだ銘柄だ。その度に「本当にこれ?」と戸惑うこと屡々。一升瓶からではなくグラスサーブなので奥でどんな酒を注いでいるのか判らない。昔トルコ(共和国です。もちろん)で詐欺師に紛い物の高級絨毯を摑まされて以来、病的に疑い深くなった僕は七本槍を頼むたびに「別の二流の酒」だと決めつけた。
「そんなことする訳ないやろ」
ということで山中で検証。
「どーよ」
然程アルコール度数が高くないからなのか辛くない。まろやかだね。濃厚な生酛っぽさをイメージしているんだけど。やっぱりこういう味なのか。
「勝手なイメージ作ってない?」
一度買って再検証する。
「どこまで疑い深いんや!」
いやいや。旨い酒だよ。なにか肴を頼もう。メニューは毎回少しずつ変わる。
基本的に調理済み。ここでは盛りつけだけ。
「温かいものが食べたくない?」
え。いきなり鍋物でいく…?
「いく」 サムゲタンがよい♪
山中特製 参鶏湯
松の実を惜しげもなく投入。かなり本格的。
紀州加太産コチ奈良漬け わさび漬造り
かなり濃厚。好き嫌いは分かれる。最強のイートインと言いたくなるのは盛りつけと器への凝りようを感じるから。普通は割れても構わない量産品。なのに料理に合わせて器を変える。
「お酒は?」 ショットなんて訳ないにゃ
もちろん純米酒。もう少しガッツリしたヤツで。
磐城壽 純米酒 夢の香
生産者:㈱鈴木酒造店 長井蔵
製造年月:2024年2月
所在地:山形県長井市
タイプ:純米酒 R5BY
使用米:福島県産夢の香100%
精米歩合:65%
アルコール:15度
定価:1,300円(税抜)
いつもながらシミジミ旨いねえ。ぬる燗でしょ。磐城壽は。
「好きやね」 キミもほんと
確かに純米だけど精米65%でこの価格帯。普段飲みに使いたいね。
牛筋と玉葱の自家製デミグラスソース煮込み
盛りつけも美しい。
イカゲソのイカ墨炒め
三本目も純米酒。一番気になるヤツを。
関東では珍しいヤマサンを。銘柄は知っていたけれど眼にするのは初めて。しかも未開栓。ラベルの意匠もレトロモダン。
ヤマサン正宗 純米生原酒
生産者:㈱酒持田本店
製造年月:2024年2月
所在地:島根県出雲市
タイプ:純米生原酒
使用米:島根県産五百万石100%
精米歩合:90%
アルコール:17度
定価:1,430円(税抜)
何といっても精米90%(しかもコイン精米!)が生み出すコクと旨味がたまらない。加えて香り高い。五百万石でこんな酒ができるのかという素朴な感動すら覚える。価格と味が比例するというのは飽くまで(特にワイン向けの)一般論。島根の酒、やっぱり奥深い!
「結構ガッツリだけどおサルも飲める」
山中の凄さは未開栓の一升瓶を多数準備しているところ。早い時間から陣取るのも手。
ホタルイカの燻製風味クリームチーズ和え
豚の角煮 八角醤油仕立て
奈良 豆風花厚揚げ 生姜醤油添え
かなりお腹いっぱいに。
「最後は握り飯でしめゆ」
喰うんかい。
ホカホカおにぎり(鯛の生姜醤油)と自家製和風出汁で。
結局この晩も名物のデザート《甘酒ソフトクリーム》に辿り着けなかった(笑)。
★ ★ ★
またこんなこともあった。
昨年の12月10日。この晩は四人掛けのテーブルに通された。触ろうと思えば触れる距離にマグナムボトルの古酒二本が並んでいる。
秋鹿と花巴。濃厚な生酛造りで知られる関西の蔵元だ。気にならない方がおかしい。店長に訊いてみた。
頂けるんですか。これ。
ええどうぞ。飲みますか?
「頂きゅ」 チャレンジすゆ ←実は古酒苦手
早速取り出して王冠を外す。これを飲もうという酔狂な客は過去いなかったと見える。
「ホコリ被ってゆね」
慣れた手つきでしっかり支えて…
熟成されたそれは殆ど蜜の色。零さないようにそっと口をつけて飲んでみた。
「ズッシリコンだのー」 あぅ!
重い。そして深い。商売繁盛よりも二人の健康に乾杯した。いったい幾らだったのか。もう判らない。
★ ★ ★
試飲できる酒は常時54種。日本酒を売りにした居酒屋でも「充実しているのは酒だけで肴はありきたり」という残念なケースもゼロではない。その意味で山中は酒も肴もハズレがない。古参の飲み手はもちろん、日本酒ビギナーにも是非薦めたい。
「家でワインを飲みなおす」
と言いつつ御堂筋線で爆寝するおサルだった。
(おわり)
ご訪問ありがとうございます。