サルヒツの温泉めぐり♪【第168回】
鹿教湯温泉 三水館
℡)0268-44-2731
往訪日:2024年2月17日~2月18日
所在地:長野県上田市西内1866-2
源泉名:鹿教湯温泉混合泉(2号~6号)
泉質:単純温泉
泉温:(浴槽)約42℃(源泉)46℃
匂味:微量の苦味・微量の硫化水素臭
色調:無色透明
pH:7.9
湧出量:2,100㍑/min
その他:動力揚湯、配湯かけ流し
■営業時間:(IN)14時(OUT)10時30分
■料金:(山入)20,000円(税別)
■客室:7室(各種あり)
■アクセス:長野自動車道・松本ICから約40分
■駐車場:8台
※食事処、談話室の飲料持込(1500円/本)
《アンティークな小部屋で静かな一夜を》
ひつぞうです。二月中旬に鹿教湯(かけゆ)温泉の三水館に投宿しました。予約困難な人気宿。ようやく訪れることができました。以下、滞在記です。
★ ★ ★
古くから杖要らずの湯として聞こえた鹿教湯温泉。その名が示すように、放たれた鏃傷を癒す鹿(実は文珠菩薩の化身)を見た信仰心篤い猟師が発見したという伝説があるだけに江戸時代より湯治場として賑わってきた。
そんな温泉街から少し離れた一軒宿。それが三水館だ。料理が旨く小商い。加えてアンティークミュージアムのような佇まい。日頃の憂さを晴らすのにこれ以上のものはない。しかし、それだけに予約確保は至難のワザだった(リピーターが早めに押さえてしまうため)。
今シーズンも暖冬だったが、たまたま前週に寒冷前線が通過。信州にも降雪が期待された。だが着いてみると(温暖な日が続いたため)無情にも雪は消えていた。滑り止めの菰がその唯一の証し。
木曽福島と松本の古民家二軒を移築。宿泊棟と湯小屋のみというシンプルな造り。
小春日和のような天気だった。
「ごめんくださいにゃ」
早速案内を乞う。フロントの先が三和土になっていて…
ご覧の様に吹き抜けが続く。一階が食堂と談話室。二階は客室が囲む。
因みに和室(細尾、三十坂、長沢、渋田見)、和洋室(休石)、洋室(山入)、そして離れ(蔵)の都合七つの部屋が用意されている。全室リピートしたくなる近頃流行りの造りだが、事実、写真を見ると泊まりたくなる。とりわけアンティーク調の「山入」が人気。この部屋の空き状況を夜毎追う日々だった。
階段をあがって廊下を回り込む。
この日お邪魔する山入。待望のツインの洋室。
調度や花飾りも美しい。
前室に冷蔵庫とキッチンがついている。
その隣りが寝室。箪笥と化粧机もアンティーク調。
「いいにゃ~」
ヨーロッパの山村の民家を模した造り。漆喰も落ち着いたベージュ色。
奥にもう一部屋。
炬燵と椅子が設えられたリビング。
デザイン、調度品、そして室内を飾る絵画や彫刻はすべて愛知県の木工作家・井崎正治氏(1948-)の監修。
ウェルカムスイーツを頂戴して早速汗を流すことにした。
それでは温泉探検へ!
=三水館とは=
■温泉
・優しい単純泉
・内風呂+露天風呂
・男女別(入替え制)
■部屋
・和室洋室など7室
・全てが異なる室内装飾
■料理
・地産食材を用いたおいしい自然派料理
・信州の地酒とワイン(特約店系あり)
■ホスピタリティ
・付かず離れず系
■その他
・猫数匹つき
・作家作品の陶芸販売あり
=温泉利用法=
■利用時間
・14:30~23:00/23:20~翌朝10:30
・夕食時に男女入替
■日帰り利用…なし
内風呂と露天風呂がひと繋がり。なので特段戦略は不要。しかも日帰りNG。となれば夕食までにひと風呂浴びて暖簾替え後に入るだけ。湯量も多いのでバージンに拘る必要もない。慌ただしくしないことが三水館の愉しみ方。
「ムリやろ君は」 落ち着き足らんし
談話室は井崎氏デザインの家具で統一。昭和の民家を利用したリフォームもされているとか。
東京銀座の教文館で定期的に個展も開催。癒しを誘う木彫がどこか懐かしい。
陶芸家やクラフト作家の個展が時折開催される。そういう宿。
地元・丸子出身の陶芸家、芦田俊之氏の作品。ターコイズブルーの釉薬がひときわ眼を惹く。…と館内を物色しながら湯小屋に向かっていると、パトロールから戻った猫のタマが「入れてくれ」と無言の合図。
人懐こい。どういう訳か(自分が飼っていた子もそうだったが)三毛猫は人馴れしやすいようだ。※10日ほど前(2024年5月13日)から行方不明になっているそうです。心当たりのある方は三水館にご一報ください(拡散希望)。
入れ替わるように僕らは湯小屋へ。
夕食の際に暖簾が替わるからね。それまでに。
御免ください。誰ですか。僕です。お入りください。ありがとう。
清掃も完璧。
キチンと体を洗ってから内風呂へ。
「単純泉だの」
疲労回復にいいみたいよ。
自家源泉ではないが湯量豊富。泉質の良さが輝きで判る。
硫化水素臭は控え目。殆ど無味。単純泉だが、硫酸、カルシウム、ナトリウム、炭酸水素の各イオン含有量が比較的多い。
温まった処で露天風呂に。男女で意匠が違う。男湯は石風呂。女湯は檜風呂。
眼を凝らす。床にガラス玉細工。演出が細かい。
吹き出る湯が水晶玉のよう。
(成分表)
穏やかな泉質。だからこそ長湯もしやすい。疲労回復に相応しい湯だった。
夕食まで酒を飲んで過ごした。何処にいってもやることに大差ない。僕らの場合。
時刻は午後六時。夕食も時間だ。
=夕 食=
一階の食堂で。パーソナルスペースも絶妙に確保。
「お酒はどんな風?」
小布施のワインもあるね。ワインの価格は良心的。
飲んだことがないものがいいね。銘柄は特約店系と地消系が半々。
長野の特約店銘柄、鼎・純米吟醸を頂戴した。初めて賞味したが、香り控え目でマイルドな味わい。
=前菜=
(12時から時計回りに)
菜花と榎茸のお浸し
鞍掛豆
菜花だし巻き
味噌ピーナツ巻き寿司
山芋の磯部揚げ
キンカン白和え
巻き寿司は味噌が濃厚。寒い地方の特有の味。
「キンカンは酸味が効いてて旨い」
=揚げ物=
揚げ玄米餅と豆餅のあんかけ 銀杏 三つ葉
=椀物=
胡麻豆腐
=鍋物=
北信のブランド肉・みゆき豚の葱鍋。葱は松本特産の一本葱。程よく甘味があり、シャキシャキした食感。
「葱も豆腐もたっぷり♪」
やはり豚肉は良いダシとよく馴染む。
二本目。上田の酒蔵、信州銘醸の滝澤・純米吟醸を。信州らしい食中酒。香りも強すぎずキレが良い。酒器は手捻りの信楽焼か。
=サラダ=
菊芋と季節の野菜
=強肴=
イワナの甘酢餡かけ
ひと手間加えて揚げたものを餡かけに。
「香ばしい!」
おサルは大の川魚好きなのだ。
白菜と林檎の霙和え
総じて飽くまで素材本位。手間は控え目。丁寧な料理と感じた。
=御飯 香の物=
最後は赤飯でしめる。艶を見れば質の高さが判る。
=氷菓=
林檎ゼリー 南瓜のアイス
と再びタマがやってきた。もとより甘味に興味のないおサル。タマを猫ジャラシで構い始めるが、なにぶん犬しか飼ったことがないから全然駄目。チラリズムが肝心なのに。猫をジャラシて早●年の僕がお手本を示すがやはり反応薄。
「全然駄目じゃん」
おかしいなあ。
なんてことをやっていると女将さん登場。そしておサルに必殺アイテムを伝授。
「素直に食べてる」 食いつきいい!
猫によっては反応が分かれるけど。タマは好きみたいね。
どっちがじゃらされるのか判らない(笑)。おサル、そのまま寝ないように。
ということで夜は更けていった。
=翌 朝=
当然走らなければならない。あれだけ飲み食いしたのだ。
鹿教湯温泉から内村川に沿って国道254号が通じていた。車の多いその通りはさすがに危険。川向うの小高い旧道を走ることにした。この地方特有のグリーンタフを積んだ石垣が目立つ。蔵つきの民家も数軒あることから古い集落と想像された。
(こんな感じで左岸側は一段高い)
案内板によれば一帯は江戸時代の氾濫で全滅。そのため左岸の高台に新たに集落を築いたという。西内小学校で折り返した。廃校だったが前庭になにやら立派な彫刻。北村西望の作だった。こんな場所にもあるとは…。地方のジョグは愉しい。思わぬ発見があって。
「おサルにとっては痩せるため」
戻って汗を流すことにした。暖簾が変わり、男女入れ替わっていた。
二日目は悪天の予報だったが、いい意味で裏切られた。
檜風呂も悪くない。誰も来ないので貸し切りだった。
ほんと湯量豊富。
合図を交わしておサルと部屋に戻る。するとまたまたタマと遭遇。なつかれているのか?
部屋まで来てしまった。
「自分のうちかよ」 めちゃリラックスして
決して間違いではない。
=朝 食=
朝食は前夜と同じ場所で。
朝食も美しい。
鰯と鯖の一夜干しに温泉卵。ひじき、白菜の炊き物、きんぴら、自家製浅漬け。
幾ら猫好きでもちょっと悪趣味では(笑)。
「俎板の上のネコ」
信州のフルーツは美味しいね。
玄米は五分搗き。嫌いな人も多いが食べ慣れるとこんなに旨いものはない。食感がたまらない。
食後は談話室でコーヒーを頂戴した。
暫く音楽を聴いて部屋に戻った。
コンセプト的に女性のお二人様が多かった。ロングステイも魅力。10時30分ギリギリにチェックアウト。女将さんにお礼を述べて門口を出る。すると雉猫のキジオがスタッフの腕からすり抜けて、遅めのパトロールに出かけていった。
「もともと地域猫みたいね」
まだお客に慣れていないらしい。僕が呼んでも無反応。
はやくタマが見つかりますように。
現在看板猫は五匹。道路に出るとお手製の飛び出し注意の看板が眼に入った。
「愛がつたわゆ」
充実した週末だった。折角晴れたのだ。そのまま帰る予定を返上して安曇野に戻ることにした。
(つづく)
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