サルヒツの酒飲みライフ♪【第242回】
磯自慢 特別本醸造
製造年月:2023年3月
生産者:磯自慢酒造㈱
所在地:静岡県焼津市
タイプ:特別本醸造(アル添) 火入
使用米:東条産山田錦100%
使用酵母:New-5
精米歩合:(麹)55%(掛)60%
アルコール:15~16度
杜氏:多田信男氏
販売価格:1,780円(税別)
※特約店販売品
※味覚の表現は飽くまで個人的なものです
ひつぞうです。今回は磯自慢。アル添本醸造なのに純米吟醸、いやそれ以上の芳醇な味わいで名高い静岡の酒です。決して求めにくい銘柄ではないのですが、この特別本醸造は文字通り“特別”。以下、テイスティングメモです。(1月18日賞味)
★ ★ ★
磯自慢を最初に知ったのは静岡赴任時代。仕事に関しては随分面白くない思いをしたが、私生活においては様々な出逢いがあり、贔屓の店もできて良い時代だった。特に寿司屋。駿河湾に面した静岡は魚が旨い。水もいい。となれば当然酒も旨い。志田泉、初亀、正雪。多くの酒を覚えた。とりわけ高級とされた磯自慢も。葵区にヴィノスやまざきの本店があり、店頭には化粧箱入りが並んでいた。
「試飲会愉しかったにゃあ」 やっぱワインが好き
不見識な僕は、どこでも入手できるだろうと軽く考えていた。ヴィノスは元老舗酒屋。その縁で特約店としての地位を築いたのだろう。挙句の果てに、登山の帰りに焼津の酒蔵で買おうとしたくらいで「特約店銘柄は蔵で販売しない」と知ったのは随分後のことだった。
化粧箱も美しい。収集癖があるので惜しくなる前にサッサと廃品回収に出してしまったが、コバルト釉のようなデザインが秀逸。これで本醸造なのだから驚きだ。新政酒造の佐藤祐輔氏がこれを飲んで日本酒に開眼したという逸話もある。だからいつかは自宅で好きなだけ飲みたかった。
「サルもサルも」 好きなだけ好きなだけ
創業天保元(1830)年。二百年近い歴史を誇る。元は庄屋の家柄。家業の傍ら、酒造りを営んだ。維新後も家格は変わらず。そして灘五郷と同じく、磯自慢の酒造りも大型化していった。しかし、バブル崩壊後の日本酒低迷の予兆をいち早く悟った蔵元は大きく舵を切り、高品質路線に特化した。
特に米。駿府の米も悪くない。だが、酒造好適米の王、山田錦に惚れ込み、その特A地区に拘った。設備も最新式を導入。早い段階から高品質な通年醸造を可能にした。しかも水は南アルプス・間ノ岳から太平洋に流れくだる伏流水。旨いはずだ。
「ありがたく頂戴しますゆ」
大吟醸は冷やし過ぎるとただ綺麗なだけになるが、このスペックであれば花冷えでちょうど好いかも。ということで飲んでみた。(やはり冷やしすぎたか)上立ち香はないみたい。だが、口に含むとゼリービーンズのような、甘酸っぱくフルーツを思わせる香りが。すっきりとした淡麗中辛口。抜群のキレ。そしてミネラル感がある。ドライなワインにも似ている。
「めっちゃスッキリしてゆね」♪
米の甘味や旨味で計る酒ではないね。抜群に綺麗。アル添っぽくない。
この日はいい野菜が手に入ったそうだ。
「腕によりをかけて作った」
夕方ずっとキッチンを占拠してたものね。
カブを四等分にして中火でグリル。サラダ菠薐草をつけあわせに。
帆立は大振りだった。やや厚めに包丁で引いてバージンオリーブオイルを振った。カルパッチョ風に。
「やっぱ磯自慢やね」 魚介類には!
紫色のカリフラワーをミキサーで砕いてポタージュに。やはりオイルと垂らすと色素が反応してオレンジに変色。見た目も面白くなった。最後に黒胡椒を粗目に砕いてできあがり。熱熱のところを頂戴しよう。
火入れなので一晩二晩おいて味の変化を見るのも面白いらしい。だが、我が家の場合それは無理。あっという間に空き瓶になった。その瓶を棄てられず、いまだ部屋の片隅にトーテムのように並んでいる。
「この間不燃ごみに出しておいた」 綺麗さっぱりと
まじか…。
(おわり)
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